お笑いと性欲の桶狭間②
「弟さんに録画頼めば?」
「今日あいつ出かけてるんだよね。どうしても観たいコンビが出るんだよな……。どうしよう。」
店を後にして駐車場まで歩きながら、彼はエン〇の神様をどうやって時間通りに視聴するかを考えあぐねていた。
「琥珀まだ時間ある?この近くにさ、ラブホあるじゃん?あそこで一緒に観ない?」
「ホテルのテレビで観るってこと??1人で行けばいいじゃん笑笑」
「1人でホテル入るの虚しいじゃん。本当にエン〇の神様を観るだけだから、ちょっと付き合ってよ。」
正直びっくりした。
2年近く食事だけの関係だったし、いきなりホテルに誘うにも誘い方ってものがあるんじゃないか。
と言うか、わたしは変なところで生真面目で、その派手な身なりとは裏腹に、お付き合いに発展していない人と致すということにとても抵抗があった。
身持ちが堅い、と言えば聞こえはいいけれど、実際傷つくのが怖かっただけ。
蔑ろにされるのはプライドが許さなかったし、なにより自分を大事にできるのは自分だけ、常にそう考えていた。
「え〜。ちょっと心外だな。そんなこと言われると思わなかった。」
「なに勘違いしてるんだよ笑、なにもしないよ。
マジで今日めちゃくちゃ観たかったのに忘れてたんだよね、せっかくだし一緒に観ようぜ。」
そう来たか……。
全く悪びれた様子もなく、いつもの調子でおどけて返してくる彼。
しばらく押し問答が続くも、彼の方が上手だったんだろう。
なにもしないという約束をして押し切られてしまった。
つづく。