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闇堕ちへの誘い(いざない)⑤
それから少しして。
わたしはたまたまご縁があり、自宅から60キロほど離れた街で夜のお仕事、キャバ嬢を経験してみることとなった。
地元より断然華やいでいて、飲食店やショッピングビルに商店街、はたまた交通機関なども充実していて、駅前も賑やか。もちろん人口も地元の非ではない。
それでもどこか垢抜けきれないこの街は、のんびりした人間性が地元とさほど変わらず、未だにとても好きな場所のひとつだ。
そんな感じなので初心者の夜の蝶にも優しく、お客様も気さくでのんびりした人が多かったように思う。
お仕事を始めて少し経ったある日。
お店にて話の流れで、件の、地元でいかがわしいキャッチに会った話をとあるお客様に話してみた。
すると、
「それ知ってる!この街にもそのセダンのギャル男たちが来てたよ!何年か前でしょ?」
意外な返答だった。
聞いてみると、わたしが遭遇した時期とお客様がその出来事を把握していた時期、見事に合致するではないか。
「そうなんですか!?こっちまで来てたんだ……。東京からもっと離れてるのに!」
「俺の知り合いの女の子が出くわしたって言ってたもん。ちょうどマ○イの近く」
彼らはだいぶ遠征していたらしい。
「最近見ないでしょ?噂だけど、この街の怖い人の娘に声かけちゃって、車をひっくり返されたって話だよ。」
事実かどうかは定かではないが、なにやら揉め事があってこちらには来なくなったのかもしれない。
確かに、2回目以降パッタリと彼らに遭遇することはなくなった。
まさか数年経って、彼らのその後を知ることになろうとは!
世の中には面白いこともあるもんだ、と、その時ひとりニヤリとしたのだった。
そして。後日談の後日談。
さらに時は経ち、キャバ嬢時代から10数年経った今年。
実家の断捨離をしていた際、なんと当時のギャル男に渡された名刺が出てきた。
まだ後生大事にしまってあったなんて、わたしはよほどネタにしたかったらしい。見つけた瞬間吹き出してしまった。
そして、なんとなくこの名刺に記載されている会社がまだ存在しているのか気になった。
Google先生の力を借りて調べてみたところ、現在も存命のようだ。
このご時世になかなか商売上手なんだなと、なんとはなしに事業内容や所属タレントまでチラリと覗いて見た。
なんと、蓋を開けてびっくり。
AV業界大手の会社でした……!!
そこには有名AV女優さんの名前もあり、あれから20年の時を超えて、わたしはさらにびっくりすることとなった。
そういうことだったのか……
アダルトなお仕事、AV女優さんのお誘いだったのだ。やっと答えを見つけた。
タイトルの闇堕ち、と言う部分に関して、けっしてAV女優さんを差別しての文言ではない。世の中に必要のない仕事は存在しないし、需要があるから供給がある。
昨今のAV女優さんはアイドルと見紛うほどの美貌の持ち主が多いし、同性として憧れる部分もたくさんある。
ただ、わたしだったらと考えると、豆腐メンタルなのでおそらく病んでしまって務めることができないだろう。そう言った意味で、闇堕ち、と付けさせていただいたことをおことわりしておく。
そして最後に。
この会社の所属女優さんの中に、地元出身の人気女優さんの名前があった。彼女はわたしより2歳ほど歳下だったと思うが、ほぼ同世代。
もしかして、わたしがキャッチに遭遇した同時期に、同じ場所でスカウトされていたとしても不思議ではない。
それを思うと、リアリティが出てきてなんとも言えない気持ちになるのだった。
[完]