お笑いと性欲の桶狭間⑤
もうしばらくやりとりは続いた。
段々と彼がヒートアップしてくるのがわかった。
ベッドの上でさっきまでどこか浮かれてさえ見えた彼は、今は少し顔を赤くして苛立ちを隠せなくなっていた。
身体の向きをコチラに変えてあぐらをかいた彼は半ば叫ぶように言い放った。
「琥珀はなんで空気が読めないんだよ……!!
俺は、付き合う前に身体の相性を見たいんだよ!!!」
言った。ついに言いやがった。
こんなに煩悩を、思いの丈を、己の欲望を、勢いよく吐き出した人を見たことがあるだろうか。
……わたしはない。これは初めての経験だ……!!
確信に迫ってしまった以上、もはや目の前にいる彼は好きな人ではなくなってしまった。
ヤリモクのチャラ男。
今まで仲良くしてきたのに。ガッカリなんて言葉では言い尽くせない。
逆に清々しくもあり、笑いさえ出そうだった。
「え、最低。」
驚きとショックで思考が大忙しだったわたしがやっと絞り出した一言はそれだった。
そのあとのことはよく覚えていない。
険悪なムードになり、言いたいことは伝えてホテルを後にしたような気がする。
一応軍配は織田軍(わたし)という事で締めくくろう。
長文、駄文、失礼致しました。
この話は男女で感じ方が違う。
男性の友人に話すと
「うわ!可哀想その人!だって2年もご馳走してくれてたんでしょ、1度くらいヤラせてやれよ。」
一理あるが、そういう問題ではない。
女性の友人に話すと
「ヤリモクとか最低〜。きもちわるーい」
こんな具合である。まぁそうか。そうなるな。
彼の真意はわからずじまいだけれど、後味の悪いサヨナラになった。
このあとお互い連絡することなく疎遠になってしまったのは言うまでもない。
この件以外は楽しく仲良くしてもらえていたけれど結果あっけなく仲違いしてしまい、男女の友情は成り立たないんだなぁなんて思ったりもした。
大人になった今ならまた感じ方が違うかもしれない。
第三者目線で見れば、もったいぶってナンボのもんだよと、お叱りを受けるかもしれない。
でも傷つきたくない。
やっぱり自分を守るのは自分しかいないんだ。
年齢を重ねた今でも、何が正しいかなんてわからないし男心もわからない。
この話は「エン〇の神様事件」と言うセンスのないネーミングで、友人と楽しく過ごす時間の酒の肴として語り継いでいる。