エレキベースを初めて買う参考のはなし③

前回はボディ材の話をしたので今回はネックです。塗装に関して触れようとも思ったのですが、初心者でラッカーは選択肢に無いと考え、そこはもう好きで良いかと。最初のはなしでジャズベースを選んだ人には朗報。ジャズベの良いところはピックガードが単純にボディにネジで留めてるだけなんで、好きな色のピックガードに取り替えて楽しめるとこですね。中華系の通販を見ると、寸法合わせてくれてる様々な色のピックガードが1,000円台から購入できるので、正規品より割安に試せます。

【ネック問題:ローズウッド】
ネックと言っても正確には指板の話。何故ならばほぼ、デタッチャブルネックの材はメイプルかメイプルを用いた複合材だから。これがギブソンのスルーネックやセットネックだとマホガニーも出てくるのですが、今回はジャズベ基準なんで、メイプル前提です。
で、ローズウッド。既に情報量がある方は、「ハカランダ」と呼ばれるブラジリアンローズウッドはワシントン条約で輸出入が禁止されていて、失われたトーンとなっていることをご存知かも。なんで、というか既に30年以上、普通にローズウッドといえばその類似種で、インディアンローズウットとかマダガスカルローズウッドとか色々と使用されていて、縞模様の見え廉価版だと最近はローレルやパーフェローが使われていて、見る人が見ればすぐに判ります。木材の導管や質感が違うからね。
何にせよこれらの「茶色OR黒っぽい指板のネック」の特徴は、後述するメープル指板よりも硬い筈なのに、何故か少し温かみがあるように聞こえる、です。音以上の利点は指板の汚れが目立たないこと。ビンテージのメイプル指板のギターやスティングレイなんかのほぼ塗装がないに等しいメイプル指板は汚れて黒ずんでくるのが私には何とも。
この「汚れない(汚れが目立たない)」為、私はローズ指板のネックばかりです。

【ネック問題:メイプル】
メイプルネックは木をそのままネックの形に整形した「ワンピース」ネックと、ローズウッド指板同様、指板だけ別のメイプル材を貼った「貼りメイプル」ネックがあります。弦の張力が4弦ベースで85㎏ほどネック材にかかる為、主に鉄の棒がネックには仕込まれており、ワンピースネックではネック裏にその金属棒を埋めるため、その蓋に濃い色の木材が使用されるため、「スカンクストライプ」とも呼ばれます。ローズ指板や貼りメイプル指板ではネックと指板の間に金属棒を埋め込むため、基本的にこの加工はありません。メイプルネックは単一素材の為か、音がクリアに聞こえます。
更に近年、市場にはなんか色の濃いメイプルネックのベースが出回ってます。これはローステッドメイプルという熱処理がされたネックです。弾いた感じはあまり違いが無く、物性としては通常のメイプルより安定しているはずですので、見た目が嫌でなければ長期的には良いかも。そもそもウッドデッキやサウナなどで高耐久性を目的に作られた建材の技術らしいですよ。

【ネックの剛性】
私の私見で言うと、ベースで最も重要なパーツはネックです。前述したようにベースのネックはかなりの力が掛かるため、程度の差はあれど、必ず反ります。そして自然の材質のため、どう動くかは予測できず、ごく数年でハイ起きを起こし弦高を下げることが出来なくなるネックや、特定箇所のビビリを解消できなくなるネックがあります。演奏に直結する部分なんで、こうなると手放すか別のネックに付け替える事になります。また、何だかわからないのですがどうしてもある音域で癖があり、好みに合わず手放すベースも少なからずありました。更に、見た目は綺麗な柾目のネックでも捻じれたり、逆に私も1本持っているのですが、ぐにゃぐにゃな板目のネックでも恐ろしく剛性が高く、鳴りの良いネックがあります。補強のためにグラファイトの棒も入れてあるよ!という謳い文句のフェンダの5弦ベースが音は素晴らしかったのに購入からわずか半年で、ネックのストレスから手放すことになった事もあります。そうかと思えば私の持っているスティングレイは買ってから20年位経つのにめちゃくちゃ頑丈です。
残念ながらベースのネックは重要な部分なのですが、こればかりは運としか言えない物なのです・・・。

【おまけ】
「スティングレイのネックは弱い」と私は20年前に言われました。これは酷い話で、楽器屋の高卒のあんちゃんとかが偉そうに言うんですよ。ただし、この風評被害は元ネタがあって、レオ・フェンダー氏はミュージシャンではないので、ネックの剛性なんて興味が無く、ミュージックマン社時代にトラスロッドを仕込まないギターを故意なのか作業ミスなのか市場に流してしまい、トラブルが頻発した、という大昔の話。楽器屋のあんちゃんたちがその事実を知るわけでなく、年上から又聞きな情報として吹聴したのでしょう。更に90年代まで、やたら杢の出たメイプルを使う傾向が高かったし、その後はオイルフィニッシュになり、気候の影響も受けやすかった、というのがこの風評被害の理由だと思われる。結局、こういうのも運で、私のスティングレイのネックはとても頑丈です。(一方で私のスティングレイはボディがラッカーでもないのにバキバキに割れ、結局15年くらい経って、別のスティングレイを買ってネックだけそちらのボディーに付けて今も現役で使ってます。どう考えても下地作業のミスで、同時期らしきスパークリングフィニッシュの個体は中古で見ると結構な割合で同様に割れてました。うーん、アメリカン)。
尚、レオ・フェンダーさんはその後、G&Lでネックを2つに割って張り合わせた「バイカット」という手法を取り入れるのですが、これも不評が多く、今は普通のネックになっているようです。彼は生涯、ギターを作りまくった癖に、ギターが弾けなかったという変人らしい逸話です。



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