思い切り、くしゃみの出来る喜びよ! 1/21
脳梗塞になった時に、出た病状は『右半身麻痺』だった。
手足の不自由ぐらい、乗り越えてやろうじゃないの!
意気込みは明るいが、実際はたいへんであることよ!
手足の連動が機能していない、ということは、転んだ時に手が出る「無意識の防御」が機能していない、ということなのだ。
「けっして、転んではいけない」
医者の言葉を守って注意してきたが、発病から一年半たった、ある夏の日、屋外パーキングで、車止めに躓いて転んだら『無意識の防御』が機能している左腕だけが前に出たので、転んだ体全体を、左の腕と肩だけで支えることになり、アスファルトに右顔面から叩きつけるように落ちてしまった。
メガネは壊れた。
歯と目が無事だったことだけが、僥倖である。
この時に痛めた左腕というか、左腕の付け根、肩とその周り全体が、年末まで、ずっと痛かった。
年末に、たまたま見た、テレビの健康番組で、肩凝りを特集しており、その運動をしてみたところ、左肩の周辺がとても痛い。
それでも頑張ってやっていたら、左側の鎖骨部分が、
「バキッ!」
と鳴り、肩がだいぶ楽になった。
左肩は、まだ痛いのだが、気長に付き合おうと思う。
さて『くしゃみ』である。
脳梗塞に関する麻痺は、右の体幹筋肉の部分らしい。
私の麻痺の、一番の障害は『右足が上がらない』である。
右足自体を持ち上げる能力が乏しいので、膝を上に持ち上げることができない。
かかとは上げられるが、爪先は、まったく上げられない。
日々の個人的リハビリの効果で、膝は、頑張れば少しは上がるようになった。
ここで『くしゃみ』である。
脳梗塞になってから、どんなに小さなくしゃみであっても、その瞬間、右脇腹に衝撃が走り、軽度のぎっくり腰が発生する。
なので、くしゃみだと思った瞬間に、何かに掴まり、中腰になって、体がくしゃみの衝撃を受けるのを避ける努力をしなければならなかった。
ある日、右脇腹の奥で、小さく、
「パキ」
と、音がした。
指を鳴らす、あの音である。
それが、時々(二週間に一度~二か月に一度の割合)なるのだ。
何回か、そういう事が有ったある日、私は、くしゃみを受け止めることが出来る体になっていたのだ!
体幹の麻痺は、相変わらず、爪先が上がらない。
しかし、くしゃみは、思う存分出来るのだ!
この幸せを僥倖と寿いでいるしだいである。
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