【仕事】いつも燃えている山と超有名なあの扇
こんにちは、イラストレーターのfuneno(フネノ)です。
株式会社愛言社様の語学雑誌『聴く中国語』連載中・『西遊記』の挿絵(11月号)を担当いたしました。
今回のテーマは「扇子を借りて火焰山の火を消す」なんですけれども、その扇ってあれです、みんな大好きな芭蕉扇。
そもそもなぜ芭蕉扇が必要なのかっていうと、今回の三蔵一行は、季節感がおかしいくらい熱い地域に、たどり着いてしまったからですね。
そこには燃える山・火焔山がある。
火焔山は実際に存在する山で、こんな感じ↓
写真の撮り方によっては赤い砂岩の地層がいい感じに火焔っぽいようなんですが(燃えてるような色の写真を見たい人は『聴く中国語』2024-2号に載ってますんで見てね)、もちろん実際は燃えているわけではないです↓
でも西遊記はファンタジーなので火焔山は365日燃えている。周辺は高温で、草木も育たないし何もかもが熱い。でも人は住んでいる不思議。
その人たちは何を食べているんだろうと思うじゃないですか。実は火焔山の火を消す方法がある。
それが芭蕉扇。羅刹女が持っている。
芭蕉扇は1回あおぐと火が消えて、2回あおぐと風が起こり、3回あおぐと雨が降るらしい。
穀物を作りたいときは、羅刹女にご進物などを差し上げて、お招きして、あおいでもらうのがこの地域のルール。
こんなめんどくさい山、迂回すればいいじゃんと思うかもしれないのですが、なんでも、この山をまっすぐ突っ切るのが修行だという(三蔵的には)。
じゃあ、さっそく羅刹女に借りに行こうってなる。
羅刹女は牛魔王と夫婦なんですが、子供がいて、それが紅孩児。紅孩児は悟空を退けるくらい超つよなのですが、観音のチートがかった力でコテンパンにされて、現在仏弟子となっております。
・そのいきさつはこちら↓
観音に拾い上げされるということは、天地と齢を同じくすることになるらしいので、非常にありがたいことらしいんですけれども、羅刹女と牛魔王にしてみれば、突然、異教徒に息子を取り上げられた形です。
夫婦はめちゃ怒っている。
しかもそれだけでなく、牛魔王の弟の如意真仙を、女人国の回で悟空がボコした話も、この夫婦には伝わっているらしい。三蔵一行の印象は最悪です。
・(参考)女人国の回↓(ボコした話は書いてないですが、男でも妊娠する川の水を飲んだ事件を解決する糸口が、如意真仙が所有する水です)
そういう事情があってからの、悟空が何食わぬ顔で羅刹女を訪ねて行って、羅刹女の宝物である芭蕉扇を貸してくれって頼む。
あなたが羅刹女だったら貸します?
貸しませんよね。
すぐさま戦闘ですよそんなの。
でも羅刹女は悟空に勝てないので、芭蕉扇を貸してやるふりをして偽物を貸しました。すぐに悟空は気づいて今度は牛魔王のところへ行く。
あなたが牛魔王だったら貸します?
貸しませんよね。
すぐさま戦闘ですよそんなの。
そういうわけで今回は力技で芭蕉扇を手に入れた一行でした。
ちなみに芭蕉扇を49回連続であおぐと、火焔山の火が消えてもう火は起こらなくなるので、悟空が49回あおいで、めでたしめでたし。
という絵を描いたものがこちらです↓
羅刹女夫婦はどうなったかというと、牛魔王は仏に帰依することで一命をとりとめる。羅刹女は修行の旅に出る。
三蔵一行に関わり合ったがために、この妖怪夫婦と親類はロクな目に合わないのでちょっと不憫。
ところで牛魔王は羅刹女と結婚しているんですけど、最近は、玉面公主という可憐系の女子とも結婚していた。ちなみに羅刹女はお堅い系らしい(と岩波版で牛魔王が言っている)。
でも羅刹女は牛魔王があんまり訪ねて来なくなっていても好きらしくて、最後に天界とタッグを組んだ悟空に、牛魔王がやられそうになるところをとりなして、助けてあげるので、とても人間ができている(妖怪だけど)。
そんな話も載っている中国語が学べる雑誌『聴く中国語』の今月号はこちら↓
べつに語学ができなくても、テキストは全訳つきなので、読み物としても楽しめます。フレッシュな中国文化に触れたい方向けの本。
知らなかったんですが、芭蕉扇って、2本あるんですよ。1本は羅刹女が持っていて、もう1本は別の人が持っていて、その2本は、対になっているらしい。という内容も、今月号で読めます。
※11月号も買える、愛言社の公式サイトはこちら。公式のyoutubeも、Xのつぶやきを眺めていると、中国語学習者界隈から高評価の様子。