移動日記
おチビと一緒に実家にお泊まりに行く。この春髪をボブにしたら、古着がいきなり似合うようになってしまい夢いっぱい。着替えもいっぱい。バス停まで山を超えて歩くというのに、メッセンジャーバックをパンパンに2個持ちする。チビコは白と黒の合わせでオシャレしたと言いつつ虹色のくま耳付きキャップをかぶっていて猛烈に可愛い。
春の電車で、いいことがあった。重い荷物を網棚に上げてたらその網棚の下に座ってた10代のスケーターっぽいお兄さんがさっと立ってくれたのだ。何も言わずに、ただチビにニコッとしてくれて。
『(小声で)ええ〜〜っ!あ、ありがとうございますっ!じゃ、じゃあ、チビちゃん座らせていただいたら?』ってアタフタ感動していたら、その隣の席の10代のお兄さん(友達同士だと思ってたけど違ったんだ)も、さっと立ってくれて、ちっちゃくチビに手をふってくれ、パッと行ってしまった。ひいー。ありがたいね〜、優しい〜とチビと小声で大感激。お兄さんたちが降りる時深々とお辞儀する。全然こっち見てないような、見てるような感じで行ってしまった。嬉しかったなあ。なんて素敵な子達、なんていい街だろう〜。
その後私達の前にマダムが立ったのでチビが私の膝に乗りひとつ席を空けてニコニコ、席をどうぞの目配せをする。(その席はですね、さっき凄くかっこいい男の子達が譲ってくれたんですよ!最高のお席ですよお)と言いたい気持ちをこらえる。座ったらマダムの匂いが超いい匂い、しかも叔母の家と同じ香りなのだ。なんか夢のホテルみたいな感じの…。春の雲が動いてぽかぽかと車内に陽が射す。
「チビちゃん、悪いんだけどママ眠くなっちゃった。たぶん網棚の荷物のこと忘れちゃうから、後で言ってくれる?」と膝の上のチビ子に頼むと
「うん。チビちゃんずっと上を見てるから大丈夫だよ。」とチビコが網棚を見上げて言い、マダムが「かわいい〜っっ!」といきなり大声で悶絶してくれたのでびっくりしたが和んだ。
和んだのはいいんだけど、その5秒後くらいにマダムが突然思いっきり体重をかけてきたのでまたびっくり!なんとマダムいきなり深く寝ちゃったのだ。こっくりこっくり、ぐっらーん!と、より掛かるを超えのしかかるマダムにチビコ唖然。そりゃそうだ。「…寝てるね。」と言っておく。前に立っていた女の人が堪えきれずプッと吹き出した。
匂いだけじゃなくあの突拍子もない失敗の感じまでマジで叔母に似た人だったと感動を覚えつつ電車を降りる。お兄さん達のグッドバイブス効果はすごかった!
駅の裏山には桜がいっぱい咲いてた。もう母が迎えに来てくれているだろうなと改札の方に思いを馳せてふわふわホームを歩いていたら、チビコがベンチに向かって強く手を引いて来る。なになに?どうした?と聞いたら、おもむろにうさぎリュックをベンチに置き、虹色くま帽子を出して被り「マリーに会うからさ。ファッションの一つだから、これも。」と帽子をちょいちょいっと整え大真面目に言ってきた。すっごく可笑しかったけど、彼女の“いっぱしの女友達モード”を汲んで「だね。まちがいないよ。それにすごく似合ってるよ。」と言う。「ありがとう。ママもすごくかわいい!」ハグし合って春の改札へ。