【日記】2023.09.07
凄い本を読んだ。
すごく良かったし、共感できる部分が多かったんだけど、
その分いろいろ考えてしまって、吐きそうになった。
本のタイトルは「犬のかたちをしているもの」高瀬隼子さん著。
今更、高瀬さんデビューである。
いまの私にとって「良い本」とは、
癒されるとか優しいとかじゃなくて
「裸でぶん殴ってくる本」だ。
何もしてない人間に対し、ぶん殴ってはいけない。
が、しかしぶん殴ってでも向き合ってくれるという意味で
無視して黙っている人よりも、こちらに対する誠意を感じてしまう。
しかも、裸。
防具や武器で周りを固めることもできるだろうけど、
それをせず、素のままで振りかぶってくる感じだ。潔い。
(もちろん、揶揄です。暴力、だめ、絶対。)
ストーリーとしてはこんな感じ。
女性である自分は、彼氏とも誰ともセックスしたくない。
それでも彼氏は一緒に居たいと言ってくれている状態。
ところがどっこい、その彼はほかの同級生女性との性行為を
お金で買っており、その末ミスって子どもが出来たから
子どもを引き取ってほしい、と打診される。
主人公はどんな未来を選んでいくのか…?みたいな。
ぶっ飛んだ構成で、緊張感もある。
しかし、ところどころに出てくるドトールコーヒーがうまい具合に
クッションのような役割を果たしていて、読みにくいわけでもない。
不当な扱いを受けた時に、断れなかった自分を悔んだり
「これって自分が女性だからの扱いか?」と思ったり、
子どもを産む、という行為に対しての考察シーンだったり。
ストーリーの流れには全然共感できないし、
あらま、この人たち罪悪感とか誠実さとか、どうなってるのかしら?
と彼氏や浮気相手に対して思うところもあったけれど、
主人公が考えていく色々な事柄については共感できる部分が多くて、
自分も思考に引きずられながらヘトヘトで読了。
ところで、精神的にも成熟しているはずの大人が
親密な関係性を築いていくうえで、そんなにセックスって不可欠だろうか?
子どもを持つという人生は、そんなに完全なものであり、目指すべき?
最近、年齢のせいか 個人的にはそんなことないんじゃないかな?と思う。
どちらも、分かりやすい・シンプルだという理由で、
なにも考えずにその道を行く人が大多数だから
同調圧力や偏った当たり前が生まれるんじゃないかな。
考えたくないもん、面倒だし。
新しい関係性の築き方なんか模索せずとも、
今までうまく遺伝子を残してきたのはセックスして
子どもを作ってきた人たちだから、
生物的に遺伝子を残すという意味で優れた方法が既にある。
うだうだ考えずに、それを踏襲すればいいだけだ。
もちろん、考えた上で選択している人たちもいる。
その人たちは、その人たちの選択を尊重して暮らしていけばいい。
いずれにせよ自分にとって正解だからといって、
その考えや生き方がほかの人にとっても正解だとは限らないので
他人の幸せを決めず、価値観を押し付けないように
注意を払う必要があるのだろうけれど。
ほぼほぼ「犬のかたちをしているもの」の話で日記が終わってしまったけれど、それほどに “ぶん殴られた” と解釈していただければ良い。
具合が悪くなりそうなほどに、脳みそをかき回される良い読書だった。