〔米国〕雇用統計 事前考察&ドル見通し
雇用統計です。FXトレードをするとき、個人投資家が最も注目する経済指標と言って差し支えありません。大きな変動の可能性もあるため、よく確認して臨みましょう。
❏ 今夜の予想
今回、雇用統計は「年内利下げのペースを決める参考資料」として機能するでしょう。
9/18FOMCで特徴的だったのは、FRBが「雇用鈍化に注目する文言が、異常に多かった」ことです。パウエルFRB議長は、利下げについて雇用を配慮したと複数回述べていました。
つまり、FRBの論点はインフレから雇用へシフトしたことになります。
ドル相場はFOMCによる金融政策を主要因に値動きます。その金融政策を決める主要因が雇用に変わりつつあるわけです。雇用統計の重要性が増したことが伝わったでしょうか?ファンダメンタル分析で、データ序列が変わりました。
❏ ファンダメンタル分析
時系列データをお見せしつつ、見解を述べます。
▶ 失業率&非農業部門雇用者数
失業率は、いまだ絶対値として良好なものの、急速に上昇(=悪化)をはじめトレンドが出来つつあります。非農業部門雇用者数(NFP)は、トレンド悪化していて、+20.0万人を移動平均で維持できなくなりました。
この+20.0万人を下回る水準は、アメリカ経済が巡航速度(とくに加速していない)に落ち着いたことを示唆します。
一般に、アメリカ経済が基調的な成長に収まる場合、NFPは15-20万人に収まるとされます。
この意味から、成長期から安定期になったことが分かるでしょう。
今後、雇用がさらに下抜けるリスクがあるのか?または、再上昇する可能性はあるのか?が分析対象となっていきます。
▶ 平均時給
インフレ率が下がらなければ、FRBの利下げはありません。そして賃金が下がらなければ、インフレ率は下がりません。つまり、とても重要なデータという事です。
上記グラフを見ると、現在のアメリカでは賃金の伸びがインフレの伸びを上回っています(実質賃金がプラスの状況という)。家計は改善されていますが、消費は粘り強さを保っています。グラフの状況を見ると、FRBが利下げを躊躇する要因になるでしょう。賃金動向も、ドル相場の重要なウオッチ項目です。
Fundaliaでも、Xに何度かポストしていますが、2024/10/1より米東海岸の主要港湾のほぼ全てで、大規模ストライキがはじまっています。目的は賃上げで、こうした主張が通るようだと、アメリカの賃金は下がりにくいままとなるでしょう。行方に注目です。
なお、ストライキが長期化するようだと、アメリカ景気がダウンする可能性があり、物流が行き詰まると供給不足からインフレ再燃のリスクが浮上するでしょう。
❏ ドル見通し
雇用統計は、発表後に大きな値動きをすることが多くあります。ここ数年より雇用統計の注目度は上がってきますから、発表後に2円を超える乱高下がいずれまた見られるようになるでしょう。
▶ 予想より強かったケース(タカ派)
弱含みと考えられる米雇用が、予想より強いデータだった場合は、FRBの利下げ見通しはやや後退し、ドルが買われる展開になるでしょう。平均賃金、非農業部門雇用者数、失業率が注目されます。
ただし、直近の経済指標に強いデータが多く、ADP雇用者数も強かったことでドル買いはあるていど織り込まれているため、明瞭に強いデータでない場合は利益確定の売りに押されて、強い結果にも関わらずドル売りになるケースがあるでしょう。微妙に強いケースでは、いったん急騰した後に値崩れしていくパターンになりそうです。
▶ 予想より弱かったケース(ハト派)
雇用統計が明瞭に弱かった場合、ドルは急落します。
2円程度急落し、144円あたりまで円高が進むシナリオも想定できます。今夜、久しぶりに破壊力がある雇用統計が見られるかも知れません。
FOMCの利下げを後押しできるデータである場合、やはりドルは売られるでしょう。直近のドル買いポジションに手仕舞いが入るため、売りにバフ効果(増強)がかかるためです。
つまり、今回の雇用統計は中立的なデータであるケースではドル安になりやすいと言えるでしょう。
マーケット(主にプロ投資家&機関投資家)が雇用統計をどう判断したかは、長期金利(とくに2年債、10年債)の動きを見れば分かります。参考にどうぞ。
記事は以上です
次の記事でまた次の記事でお会いしましょう
Fundalia financial philosophy(FFP)