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〖事後考察〗失速を始めたのか?米住宅市場

新規住宅販売件数(米国)は、低迷しています。
アメリカの住宅市場を、この指標だけで語るのは危険ですが、一端を知る助けになるでしょう。



❏ 新築住宅販売件数の結果

新築住宅販売件数は冴えない結果でした。確かに前回値が大幅に上方修正された部分はあります。しかし、61.9万件は近年でも弱いデータでした。2024年に入り総じて弱いデータが羅列しています。
住宅市場は、米GDPの20%弱を占める大きな存在。考察を進めることは無意味ではないでしょう。

▶長引くターミナルレート

住宅は多くの人々にとってローンを組んで買うものです。そのローン金利が現在7%と高利貸なみの高金利になっています。日本はせいぜい0.5%ですから、14倍以上の利息支払いが待ち受けます。元利均等払いにすると、月々の支払額は高額になり、住宅価格は非常に高額となります。
多くのアメリカ国民は中古住宅を含めて、家を買えません。

そのうえで、国民は利下げを待っています。住宅を建てるのを躊躇しているのも建築数が伸びない理由でしょう。

▶リーマンショックから続く住宅在庫不足

2008年のリーマンショックで、現在も受け続けている影響は住宅在庫が不足する現象でしょう。そののち、住宅ローン審査は厳しくなり家を建てることが難しくなりました。そこに2020年のパンデミックが加わります。いわゆる「在宅ワーク」により住宅需要が激増しました。ゆえに、今も住宅価格は急騰(米CPIの2倍のペースで上昇中)しています。
高金利で建てにくいのに、供給不足というジレンマを抱えています。

一般に、住宅建築は金利と逆相関(金利が下がると建築は増える)します。これはファンダメンタル分析の基礎知識です。


❏ データ確認

▶新規住宅販売件数

2021年以降のデータ推移(データは速報値となっている)

このように、2023年終盤から2022年のような低調な住宅販売件数となっています。しかし、一方でケース&シラー住宅価格指数は前年比「+7.2%」と消費者物価指数の2倍です。

お分かりでしょうか?住宅市場はかなり歪んでいます。

将来、住宅販売件数が増える(さらに減る)、あるいは住宅価格が下がり始めるなどトランジションが生じた場合、アメリカのファンダメンタルにどういった影響を与えるのか?興味深いところです。ドル相場にも大きな影響をあたえるでしょう。

先述した通り、住宅はGDPの20%弱もあります。住宅を建てれば家具など消費財も多く買うでしょう。アメリカ経済に大きな影響力を持ちます。


❏ 住宅市場を観察する方法

住宅系の経済指標は、為替相場に直接的な影響を与えることは少ないです。しかし、FRBの金融政策には地味に影響します。また大統領選挙など、政治にも影響するでしょう。衣食住の安定は、支持率に響くからです。

住宅市場を観察できる経済指標を紹介します。

▶住宅着工件数、建設許可件数

住宅を建て始めた件数を集計したものです。販売⇒建設許可⇒着工の流れですから、それぞれのシーンでどういったデータがでてくるのか?主に販売数について住宅市場を観察できます。

▶ケース&シラー住宅価格指数

ケース&シラー住宅価格指数は、住宅価格を集計した経済指標です。アメリカには他にも価格指数がありますが、最重要はこれです。需要<供給となれば、住宅価格は下がるでしょうが、2024年夏の段階ではバブルと言って良いほど、猛烈な価格上昇が続いています。



❏ まとめ

アメリカの住宅市場はジレンマに陥っています。

  • 住宅価格が高くインフレ高騰しているため、FRBは利下げできない

  • FRBが利下げしたいため住宅販売・建築数が伸びない

  • 住宅在庫が少ないため、住宅価格は高騰している

この流れが断ち切れれば、アメリカの住宅市場にも変化が生じるでしょう。アメリカの住宅市場に変化がくれば、アメリカ経済が変わり、株式や為替相場も値動きするでしょう。
皆さん忘れがちですが、2008年に起こった大暴落は「不動産」が主役でした。日本のバブル崩壊も同じ主役でした。おそらくこれからやってくる中国の金融危機も同じ主役になるでしょう。

住宅市場から目を離すのは、
投資家として一人前でないことを意味します。


記事は以上です
また次の記事でお会いしましょう
Fundalia financial philosophy(FFP)

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