早期退職の50オヤジ、旅行業界について考える(その1)
こんにちは、赤鬼です。コロナ禍に50歳で早期退職しました。
28年間勤めたサラリーマン生活を辞めて、全く未経験の旅行業界で起業しました。
現在それから3年。
国内旅行業務取扱管理者の資格を取得し、第3種旅行業として登録してますが、この部分の投資が現在の売上に貢献しているかというとそれほどでもなく、ほぼサイクリングツアーというコンテンツ販売がメインとなっております。ちなみにサイクリングツアーを売ること自体には特に何らかの資格を必要としません。
ま、それでも自社で直接受注する企画旅行もポツポツあるので、そんな時には堂々と旅行会社としてサイクリングツアーを販売できている、くらいですかね。
ところでウチのツアーは自転車が12台しかありませんので、定員もマックス12名です。いわゆる団体旅行に縁のない旅行会社となります。
本来旅行会社のビジネスモデルとしては、大人数の団体をオペレーションすることで稼ぎます。
ツアープランの企画、輸送や宿泊や観光施設の手配、集客と送客が中心の業務であり、その際の手数料が旅行会社の利益源泉になります。
基本的に商品やサービスの中身は外注や仕入れであり、手数料率も10〜20%などという感じで固定し明示する必要があります。
利益率がどうしても低くなるため、薄利多売になることが避けられません。
この体制のまま少人数ツアーを受けようとすると、生産性が大変悪くなるでしょう。
しかし世の中は旅行会社にとっては都合が悪い流れへと向かっています。
国内人口は徐々に減り、団体旅行なども敬遠されつつあります。さらには個々の興味も分散、個人旅行が増え、デジタル環境の発展で、旅行会社を通さずとも宿もチケットも手に入りどこでも行けるようになりました。
団体旅行の中心はバスを使ったバスツアーとなりますが、そのバスも運転手不足だったりして確保が難しくなりつつあったりもします。
そんな中で残された団体旅行の案件を巡り、地方の小さな旅行会社が守ってきた市場へ都市部の大手旅行会社が参入したりという事も。修学旅行等の案件は地元の旅行会社と大手が競合することが増えたと聞きます。
そんな状況に対して小さな旅行商品にチャレンジする動きもあります。大手で言うとクラブツーリズムの一部の企画はかなり前から10名前後での催行もやっていたりします。
地方の旅行会社でも着地型やテーマ特化型の小規模ツアーで頑張っている会社もチラホラ。
ただいずれの会社もそれだけでガッチリ稼いでいるというより、軸となる従来の商品があったり、旅行業とは全然違う事業で稼いでいたりするようです。どちらかと言うと既存のお客様への少人数要望へ応えたり付加価値を高める意味、ある種の顧客とのコミュニケーションサービスとして販売する形で、あまり積極的に利益を追い求めていないような感じも受けます。
従来の旅行業のビジネスモデルで小規模旅行を展開すると多品種小ロットとなって、販促費と造成の手間から人件費もかかりすぎて、ただでさえ薄利の商品なのにさらに利益が出にくくなります。かといってその分を価格に転嫁するとお客様には見向きもされなくなってしまい…。
となると、少人数のツアーなんてビジネスとして成り立たないよね。せいぜい補助金で自治体や観光協会が地域のPRのためにやるツアーか、別事業の顧客サービスの一環として年に数回やるものとか、それで食っていく気なんてサラサラないものになっている感じがします。
世の中にある◯◯ツーリズムなんてのも、だいたい儲けてるのは自治体向けの観光系コンサルさんくらい。
自治体なんて担当者素人だから何もわからないし、だからこそ専門家に丸投げするしかないしね。数年で担当者も変わるから単年度の観光予算を使った実績だけで十分だし。
その後に何が残るのか…。庶民の知らないところでただただ税金が意味もなく使われているだけ。
おっと、ちょっと愚痴っぽくなってしまった。
地域を盛り上げるための着地型観光を造成したいというニーズは自治体中心に高いです。
着地型観光とは、発地型観光の対義語で、発地型とは東京発の沖縄旅行とか、大阪発の北海道旅行とか言ういわゆる従来からある都市部で集客し現地に連れて行くツアー。
一方着地型は地域に何らかの観光コンテンツがあり、それを目指して現地に来て頂き、地域内で観光してもらう商品のこと。ネットが発達し地域を検索しやすくなったことで、インバウンドや個人旅行が増えた現在は彼らをターゲットとして、この着地型観光コンテンツをいかに増やすかが地域の観光行政にとっての一大テーマです。
まぁそんな感じで国から予算が地方に降りてるので、着地型観光コンテンツ造成の事業があちこちでされているのです。で、どうすればよいのか分からないからコンサルに丸投げ…という流れ。
気がつけば民間の旅行会社は全然着地型に手を伸ばしてないまま今に至っていると言っても過言ではないです。
だって少人数ツアーってそんな手間暇かけてチマチマやってられんよって。人手もないし…。
でもどの分野でもそうなのですが、ネットの発展はマスというものを壊してしまいました。新聞やテレビといったマスメディアもそうだし、学校や人生までも昭和型の皆同じ的な価値観が変わりつつあります。
だって仕方ないんだもん。皆スマホという片手に収まるデバイスで個人個人が全世界と繋がることができ、本来人間が持っている個々の嗜好によって、細分化したサービスにアクセスできてしまうのですから。
命や生活に関わる食や経済、健康というある程度普遍的なテーマは別として、趣味の世界なんてなおさら細分化すると思います。
そういう意味では何が観光商品になってもおかしくないくらい、反面、少人数で成り立たせる工夫が求められてるのだと思います。
バスツアー等の団体を前提とした旅行業法もすでに陳腐化しているように思います。少人数ツアーのビジネスモデルをいかに作るか…。
次回そのあたりを考えてみたいと思います。
(その2へつづく)