抗えぬ悲運に従う
平知盛は、平氏の総帥・平清盛の四男です。
清盛が病没してのち、平氏の大将として必死になって源氏と戦ったのですが、時の勢いはどうすることもできず、遂に源氏に敗れて都落ちすることになりました。
その都落ちする時のお話です。
平知盛は、多くの部下とともに都をあとにして西に向かったのですが、その途中で偶々大番役(宮廷の警固を務める地方武士)と出会いました。
都落ちの途中とは言っても、平氏の兵にしてみれば、大番役は一応敵です。
そしてこちらは集団です。
兵たちは「斬り捨てましょう」と、息を荒らげて大将の平知盛に進言しました。
この時、知盛は何と言ったでしょうか。
「御運だにつきさせ給ひなば、これら百人千人が首を斬らせ給ひたりとも、世を取らせ給はん事難かるべし。古郷には妻子所従等いかに嘆き悲しみ候らはん。もし不思議に運命ひらけて、又都に立ち帰らせ給はん時は、ありがたき御情でこそ候はんずれ」
意訳をすると・・・・・・
「我々の運が尽きてきたとなれば、このような人たちの首を百人千人取ったところで、もう大勢は変わらないだろう。この人たちの郷里には、妻も子もいるだろう。今ここでこの人たちを斬ったら、妻子たちはどんなに悲しむだろう。もし運が開けて我々がまた都に上るようなことがあれば、またこの人たちと会うことができるかもしれない」
平知盛は、そう家臣を諭して静かに西へ落ちて行きました。
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