SWOT分析→クロスSWOTへの展開が難しい、と言われたのでちょっと解説してみる
このごろありがたいことに定期的に開催しているマーケティング講座。そこでSWOT分析&クロスSWOTについて解説し、早速自社の状況をモデルにやってもらったのだが、クロスSWOTの概念と取り扱いが難しい、というコメントを頂戴した。
そこで、今回はそれに対する回答と解説を述べたいと思う。
SWOT分析は何のためにやるのか
これは自社の内部要素、外部要素それぞれにプラス要素、マイナス要素を埋めていくことで自社の置かれている状況把握に役立てられる。それぞれ、内部要素は強味と弱味、外部要素は機会と脅威と4つの窓に分けられる。
強みは自社が優位性を持っている物事
弱みは自社が不得意だったり、できなかったりする物事
機会は他社や市場、政治その他社会状況において有利に作用する物事
脅威はその逆に自社に対して不利に作用する物事
ここまでは事業を俯瞰する立場で仕事していたらすぐにできるようになりたい。特に経営者は自社の説明をする際にはいつでもサラサラと書き出せるくらいにはなっておきたい。自社を取り巻く環境と自社内の状況を理解できているかどうかがそのまま示されるからだ。
なので、改めてSWOT分析をやるシチュエーションというのは、新規事業や商品開発前の検討だったり、ある事業の整理や見直し検討の段階が考えられる。
さて、SWOTが整理できたらこれをもとにクロスSWOTに展開していく。
クロスSWOTはSWOTとは何が違うのか
前提として、SWOTの4つの窓がある程度埋められている状態でなければクロスSWOTは材料の手がかりが不足し機能しない。クロスSWOTは、事前に作っておいたSWOTに書かれた項目を外部、内部をまたいでかけ合わせたときにどんな課題やチャンスが見つかるか、という分析手法である。だから「クロス」なのだ。
ちょっとネットで調べても、4つの窓がそのまま置き換えられクロスSWOTとして説明されていたりするのでかえって分かりにくいかもしれない。
なので私はかけ算の式のように表現することをおすすめしている。
強み*機会=現状で優位性と有利な環境が両立している
(より拡張するための手を打つ)
強み*脅威=競合や環境によるプレッシャーが発生している
(脅威を排除するか回避することができるか検討する)
弱み*機会=商機はあるが自社が不得手である
(自社内を改善できるか検討する)
弱み*脅威=実質見える地雷原、キルゾーン
(撤退を検討、不用意な参入をしない、やらないことリスト)
早速やってみよう
こちらでもアウトプットが4種類になるので、4つの窓で表現できるのだがこれが理解の上で混乱を招くと感じるので、まずSWOTを普通にうめて、そのまま別紙なり余白なりに上記の掛け算に各窓に書いたものを代入し、その結果どんな事が考えられるか、を書いていく。
例)
EV技術の特許を持っている(強み)*EV法制化、ニーズの高まり(機会)=増産、ラインナップ拡張の検討
EV技術の特許を持っている(強み)*欧州のEV関連法が迷走するリスク(脅威)=内燃機関からEVへの全振りはリスク要素、2つラインを残すべきか検討
衝突安全技術を自社開発できない(弱み)*EV法制化、ニーズの高まり(機会)=EV時代に参入する新参メーカーとの共同開発路線を検討
衝突安全技術を自社開発できない(弱み)*欧州のEV関連法が迷走するリスク(脅威)=不確定要素が多いので先進国向け市場から撤退し、新興国向けの従来車ニーズを拾いに行くことを検討
ということで、たとえば理論上、SWOTに書いた項目が各窓3つずつなら36項目ものクロスSWOT分析が可能になるということになる。実際は組み合わせても意味がないものだったり、優先順位が低いもの、意味を成さないため論理的に組み合わせようがないものも含まれるので全てをやる必要はない。重要だと思われる、あるいは組み合わせてみて新たな視点が得られそうなものに絞ってやればよい。
クロスSWOTがきちんとまとまってからSTP分析に移行しよう
私が専門学校の授業においても、社会人向け講座においても、実務においてもSWOTとSTPの一貫性はとにかく大切だと言い続けている。SWOTが整理できていないのにターゲットを絞りましょうと言ったところで、これがうっかり弱みと脅威が重なるゾーンだったことが後で判明しても遅い。
ターゲットを絞ろう、といってもなかなか成果が出ない、という場合はSWOTがSTPで立てられる方針の根拠になっているかを見直す必要がある。
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