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渓流ミノーでアマゴのバラシを減らすにはラインスラックを味方につける
昨年久しぶりに再開した渓流ルアーフィッシングで、アマゴやヤマメがヒットした直後にバレるということで悩んでいたが、その内容を分析し、克服したことを以前ブログ(https://gyottosai.com/2024/06/02/2406hooking/)に書いているが、noteでもまとめておこうと思う。
結論を先に述べると、魚が出るタイミングで適度なラインスラック※を出しておき、魚のアタックの運動エネルギーがフックにできるだけ効率よく伝わるようにすることだ。もうちょっと簡単に表現すると、ルアーにかかるラインテンションをその瞬間抜き気味にして魚のアタックを素直に受け止める、ということだ。まるで逆のことを言っているように感じるかもしれないが、まあ成長過程の一アングラーによる気付きのメモとして読み進めてほしい。
(※ちなみに「ラインスラッ"グ"」は正しくない。英”slack”=緩み)
悩み:フッキング直後に頭を振られたり回転されたりしてバレる
昨年の春頃までこのような悩みがあることを忘れていた。8年ほど渓流から遠ざかっていたからである。
かくして久しぶりにルアーロッドを振ってみると、ゆうに半分以上は何らかの原因でバラしが発生した。まず、PEと硬すぎるロッドの相性の悪さだと考え、ロッドをやや柔らかめのものに変えた。それで多少の改善を見たが、やはりまだ納得できない。
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そこで先輩アングラーに質問してみたら、色々話は広がったが結局「ある程度は許容する他ない」という結論だった。ベテランでもそうなのか、と少し諦めも入ったが、それにしてもあまりに効率が悪い。
なんとかいい方法はないものか、と考える。
調べてみると、「アワセが弱くて針が刺さっていない」とか、「PEだと弾くのは仕方ない」という意見がネット上に散見される。ちなみにこれらは全て自分の中で否定的な結論に至ったので後述する。
まあともかく、川に通って試行錯誤をしたのである。
参考にした現象:他ジャンルの釣りにおける食わせる瞬間
私はへらぶな釣り、かかり釣りをやる。どちらも、目でシグナルを読んで釣るジャンルの釣りだ。しかし、実はこれを突き詰めていくと、ただウキに出るアタリを読むとか、穂先を見るとか、それだけでよく釣れるような受動的な釣りではない。
やらない人はピンとこないかもしれないし、やっている人でもそうかも知れない。
幸いにして私は釣り関連事業マーケターとして微妙に業界で暗躍(笑)しており、エキスパートから直接学ぶ機会に恵まれてきた。
で、いずれの釣りも
「気配を察知し」
「食いやすい状況を作り」
「あたる瞬間を意図的に呼び込み、満を持してアワセる」
という、非常にアグレッシブな駆け引きがじつは存在する。
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へらぶな釣りにおいては、今まさに当たってくるというウキへのサワリを察知したら、気持ちウキにかかる道糸のテンションを抜いてやると素直なあたりが出たりする。針にかかるラインテンションが抜け、吸い込まれやすくなるからと考えられる。
かかり釣りにおいても、チヌが餌の近くにいたらなんとなく穂先にモゾモゾと反応が出てくる。そのまま待っていて穂先が締め込まれるのを見てからでもいいが、餌だけ取られたり、反応が悪いときは、穂先に掛かる荷重を微妙に調整して吸い込み”しろ”を意図的に作ってより明快なタイミングを作ったりする。こういうときはもう非常に微細な穂先の動きであっても食うタイミングを予期できるので確信的にアワセを入れられる。
両者に共通するのは「吸い込みしろ」である。餌を吸い込まれやすくするのだ。ハリスが突っ張ると、吸い込まれにくく、掛け損ねる(多分ルアーでも同様の現象が起きていて、それを人はショートバイトと呼ぶ)。
PEで「ハジく」原理
一方ルアーはフックがルアーに追従するように動いていく。ここがポイントで、ルアーがガンガン引っ張られていると、フックもジョイントの柔軟性を損ない、魚がアタックしてもフックが魚体によく刺さってくれない(滑る)。
例えばボールペンを手の甲に直角に突き立てたら普通に痛い。これを寝かせていくと、痛くなくなるどころか最終的には滑るはずである。これと同じことがフックと魚の接点で起こっている、と考えた。
ナイロンラインで釣りをしていると、ルアーにかかるテンションがやや緩慢になるので、アタックに対して多少の冗長性が発生する一方で、PEラインだと冗長性が少なく、表面を引っ掻いてかけそこねたり、バラしてしまう。
あえてルーズにトゥイッチを入れればあら不思議
ならば、緩めてやればよいのだ。
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ルアーがアクションしなくなるほどラインが緩慢では駄目だが、トゥイッチができる程度の、”多少の”ラインスラックを意識的に、少し長めに出していればよい。よく弾いてしまう人は、多分ここでラインが突っ張りすぎている。
人間側からトゥイッチのアクションが通る程度なのだから、20センチくらいの魚がルアーに体当りしたり、吸い込んだりしたらしっかりその分だけインパクトはロッドに伝わるはずだ。
アマゴはヒットした直後頭を左右に激しくシェイクし、運が悪いとぐるぐると横回転までする。このときに刺さりが甘いからバレるのである。そのときにより深く刺さるには、魚のアタックに対してより素直に針先が立たなければならない。しかしラインテンションが強いとルアーがロッド側に引かれ、その分フックも遊びが不足し、ひっかくように針先の角度が甘くなる。ご理解いただけるだろうか?
感覚を掴むなら、小場所のアップストリームでイワナを狙ってテンション抜き気味のトゥイッチングを試してみてほしい。トゥイッチを止めてラインテンションがふっと抜けたドリフトの間で食ってくるし、ちゃんとロッドにアタリは伝わる。
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そして、そのときフックは引き抵抗が抜け気味なのでジョイントが自在に動く余地を残している。流れやそれまでの引き抵抗などいろいろな要素は絡むだろうが、少なくとも巻いているときより自由にふらふらと動く。これがよりよい角度で魚体に刺さることを可能にするのではないか。
ヤマメ、アマゴ狙いのときは連続で強いトゥイッチを入れていくことが多いと思うが、その合間合間に遊びを作って「ルアーは流れに揉まれてアクションしているけどラインテンションはある程度抜けている」瞬間を作ってやると「より深く刺さりつつロッドを曲げる」ようなアタリの出方になる。
つまりバレにくくなる。
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もちろん、アクションさせている瞬間や、流芯によってラインテンションが張ったタイミングで当たってくることも当然あるので、そんなときはゴツンと強くロッドに衝撃が伝わってくる。これはこれで普通にヒットだし、そのときによく刺さっていればラッキーである。しかし、このパターンでしかヒットさせられていない人がいるのだとしたら、ミスバイトやショートバイト、バラシもそれなりにあるだろう。ぜひスラックを利用して0.4秒ドリフトからのヒットを試してみてほしい。
良いスラックと悪いスラック
ちなみに、キャスティングするときはサミングを活用して不要なスラックを出さないようにする、という基本は変わらない。
ただし、ミノーが水を噛み、アクションしているときに適度な遊びをつけてやること。つまりコントロールされたラインスラックを出す、ということに意味がある。雑なキャスティングで出しすぎたラインはコントロールできないラインスラックだから巻き取りが必要になり、その一投は出遅れた分、難しい釣りになる。そして、トゥイッチングにおいてリールは「ルアーをアクションさせるために巻く」ではない。
ミノーのトゥイッチングにおいて、アップ~アップクロスストリームでは流れとロッドワークでアクションさせ、それによって発生するラインスラックをコントロールするためにリールを巻く。クロス~ダウンストリームではポイントを横切らせるために、あるいはダウン気味ではルアーを少しずつ前進させるために巻く。そのくらいのさじ加減で認識しておくと、より長く魚にルアーを見せられるし、ヒット率も上がる。
ちなみにダウン方向で釣っているときの食わせの間は、アクションの直後にロッドティップを少し送り込んで一瞬スラックを出してやる。するとひったくるようなアタリを弾くリスクを減らすことができる。この場合、重みをバットに乗せるようなイメージでグッとあわせていけばよい。
ここぞの瞬間にラインテンションを緩めて送り込む。
バラシが多い人は今年ぜひ試してみてほしい。