見出し画像

チームはまず「3人」でつくれ

 今日は「最強のチームのつくり方」を明かします。

 1回目の記事では、ぼくらのお店の「チームプレー文化」についてお伝えしました。今回は具体的に「じゃあ、どうやっていいチームをつくるのか?」というお話です。

 おかげさまでぼくらのお店はうまく回っていますが、それは「チームがうまくいっているから」に他なりません。

 しかもチーム内に「カルチャー」があるから、新しいメンバーが入ってきてもスッと馴染んでくれる。教育に手間がかからないのです。

 チームをつくり、カルチャーを生み出すまでにはちょっとした「やり方」があります。記事の後半でその具体的なやり方をご紹介したいと思います。

ホストクラブは「空気を売る」商売

 ぼくはホストクラブを経営しています。

 先日食事に行ったとき、この業界のことをまったく知らない方が同席していて、その方にぼくが何をやっているのかを説明する場面がありました。ぼくはこう説明しました。

「いま、ここで4人で話してますよね? この隣の席がひとつ空いてるとする。ぼくらは『その席に座れる』『この空間に入ることができる』、そこに価値をつけて売っているような商売なんですよ」と。

 つまり、ぼくらは「個人を売る」のではなく、チームによって生まれた「お店の空気を売っている」のです。

 スターのホストをつくって「スタンドプレー」で勝負するお店には、そういうことはできません。有名なホストがお店の広告塔になっているお店だと「空気」を売ることはできない。

 ぼくらは「広告塔がいない店」でどうやって商売として成り立たせるかをずっと考えてきたのです。

 その答えが「空気をつくる」ということでした。

入りたくなる「空気」をつくる

「いい空気の組織」は、お客さまにとっても、そこで働くスタッフにとっても、プラスに働きます。

 たとえば、野球が強い部活のチームがあるとします。そのチームは、個々人の能力が高いということもあるかもしれませんが、かならず「強くなるための空気」があるはずです。

 その空気とは「部活が楽しい」「夢中になれる」「練習に行きたくなる」といった空気です。その場所に行くことを強制されるのではなく、依存させるのでもなく、「そこにいたくなる」ような空気をつくる。

 その空気を作ることによって、「その中に入りたい」という人が増えていって、部活であれば強くなるし、お店であれば繁盛するのです。

 お客さんもいい空気感を感じるので「あの場所にいたい」と思ってくれます。すると、席の価値が上がっていくというわけです。

うまく回るチームには「カルチャー」がある

「空気」は組織の「カルチャー」を生み出します。

 ぼくらのお店にはすでに「カルチャー」ができています。新しく入ってきた人も、このカルチャーを瞬時に察知して、馴染んでいきます。

 カルチャーができていると、細かく教育したり指摘をしたりしなくても、勝手に正しい行動をとってくれるようになります。「この行動は、このお店らしくないな」「ああいう行動が、この組織らしいな」と自然に矯正されていくのです。

「カルチャーがあるかないか」というのは、チームが大きくなっていくうえでものすごく重要な鍵になります。

まず「最初の3人」が重要

 チームをつくりカルチャーを形成する上で、お店の立ち上げ時、つまり「ゼロイチ」の部分がものすごく重要です。チームの「核」がきちっとしていないとチームはうまくできていきません。

 チームはまず「3人」でつくります。自分を含めて3人です。この3人というのが大きなポイントなのです。リーダーである自分と、あともう2人。

 なぜ「リーダー+2人」なのか?

 2人であれば、比較的かんたんにリーダーが影響を与えられます。その2人に同じ方向を向かせて、同じやり方でやっていく。それさえキッチリできれば、チームの「核」ができあがります。

 その2人はコロコロ変えたり、曖昧にせず、明確に決めます。

 何があっても、まずその2人に言います。考えたこと、思ったことは、その2人にすべて伝えます。毎日3人でミーティングもします。そうやって、まずはその2人だけを見て、きちっと方針に従ってもらうのです。すると、結果的にそれ以外の人も「この店はそういう店なんだ」と思うようになるのです。

 ぼくは今まさに「クラッシー」という店舗を見ていますが、そこでも「核」になるような人間が2人います。メディアの話が来たら、まずは彼らに相談したり、話を振ったりしています。

 3人が中心となり、チームのカルチャーを醸成する。あとはその空気に合う人が残り、合わない人は去っていくでしょう。すると、店としては3ヶ月後に伸びている。そういう戦略をとっているのです。

2人に自分の考えを徹底的に教え込む

 リーダーにとってその2人は、いわば「腹心の友」です。

 なんでも言える腹心を2人つくる。そして、その「2人」を決めたら、まわりから見てもわかるように、あえて宣言します。腹心2人には、どんどん仕事を与えますし、チーム全体に「この2人で文化を作っていくぞ」とハッキリと宣言するのです。

 その2人も、まわりからそう見られ、大きな役割を担うので「それなりの顔」になっていきます。「トップっぽい服」を着させると、それに似合う自分になっていく。早く変わっていくのです。そこは心がけて、わざとやっています。

 腹心を決める基準は「歴が長いから」とか「売上を多く上げているから」ではありません。3ヶ月後、半年後を想像してみたり、その人の人間性を見たりして、「こいつは上げたほうがいいな」と思う人を選ぶのです。

 よって、古参の人間を「抜く」こともあります。

 抜かれた古参の人たちは、嫉妬してうつむいて出て行くこともありますし、それなりのポジションを見つけて店に残ることもあります。実際、うちの組織でも10年選手の人間が、新参者に追い抜かれることはあります。

 売上を上げている子や歴の長い子が反発したり、すねてしまったりしても、軸はブレません。もし「なんで彼なんですか?」と突っかかってこられても、きちんと「だってこうでしょ」と説明できるように言葉も用意しています。「そこですねるようでは、お前はそこまでだよ」とちゃんと言える武器も持っているのです。

 古参の人間であっても、あとからキーマンになることはあります。そこは、タイミングの問題です。うちのメンバーはそこをきちっとわかっているのです。

 チームづくりで大切なのは、この「3人の核」をつくること。ここだけはものすごく戦略的にやります。

 正直、「カルチャーづくり」というのはそれだけです。あとは自然とできあがっていく。この延長線上で今、ぼくらはやっているだけです。立ち上げ当時と比べれば、勝手に回っていくので本当に楽です。

なぜ腹心を「2人」にするのか?

 なぜ、腹心は「2人」なのか。もう少し説明しましょう。なぜ、1人とか3人以上ではいけないのか?

「腹心は1人だけ」というリーダーは、けっこう多いでしょう。いわゆる「ナンバー2」を大切にしているような組織です。でも「唯一のナンバー2」という存在を、ぼくは絶対につくりません。「ナンバー2」は2人つくらないといけないのです。なぜか。

 それは、「ナンバー2」が1人だと、その人が裏切る場合があるからです。そして、勘違いすることもあるでしょう。その勘違いを、リーダーであるぼくも制止できなくなってしまうのです。

 勘違いというのは「自分がトップで、自分が影響力を持っている」と思い込んでしまうことです。それをされると、ぼく自身がしゃくに障るというのもあります。本人も「自分の評価」を気にし始めてしまう。その時点で関係がおかしくなっています。

 また、腹心が1人だとそもそも「カルチャー」になりません。スピードも落ちてしまうでしょう。

ピラミッドも三脚も「3」だから安定する

 では腹心が3人ではどうか?

 腹心が3人もいると、逆にちょっと手が回らなくなります。伝わり方も弱くなりますし、それぞれの意思が出てきてしまいます。計4人になるので、「2:2」に別れてしまったり、派閥ができてしまうこともあるでしょう。

 やはりチームの核はまず「3人」がベストなのです。ピラミッドや三脚も3つだから安定するように「3人」というのがちょうどいいのです。

 腹心2人を育てていき、組織のカルチャーを生み出していく。そうするうちに、その中でリーダーにふさわしい人間が出てきます。今度はさらにその新しいリーダーが2人の腹心を見つけ、チームの核をつくる。

 その繰り返しで、チームはどんどん大きくなっていくのです。



編集協力 WORDS

いいなと思ったら応援しよう!