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届かぬ光を望むことは #ナイトソングスミューズ

言葉が無い時代のことを言葉で表すのは難しい。


わたしは果てしない無の中を彷徨っていた。

道標は遠く彼方の小さな白い点。

宛はなく、ただ運命に引き寄せられるままに、瞬く白光を目指した。

時に、わたしよりずっと大きな、ガスに包まれた星や、鉱物だけでできた星とすれ違った。

まっすぐ進むわたしと違って、弧を描いて進んでいたようだ。

それらの星を横目にわたしは徐々に大きく近づく光を目指した。


だが、やがて気づいてしまった。

わたしは目指した場所には辿り着けない。

あと少しで、あの白く燃える星にたどり着くと思ったのに。自分の思いに反して、光は再び小さく離れていった。

まっすぐ進んだつもりでいたのに、長い時間をかけて、すれ違った星星よりもっと大きな円状の道をぐるぐると回っていたのだ。

わたしはわたし以外の誰とも出会うことの無いまま、何回も何万回も同じ旅路を繰り返した。

変わらない星の並びには、随分と飽き飽きしていた。

でも、ほんの一つだけ、楽しみがあるとしたら…


あの青い星は、出会うたびに何かが変わっていた。

青くない部分が、緑色や赤色になったり、最近は白い星が照らさない暗い部分にも光が輝くようになった。

わたしが言葉を覚えたのは何回前の訪問だったろう。

いつからか、恐れや慄き、祈りや願いといった感情が、青い星から飛び出して、わたしの中を走り抜けた。

心地よいばかりではなかったが、青い星を訪れることで、わたしはわたしを認識し、新しいわたしに出会った。


そして不思議なことに、いつから尾っぽの辺りに誰かの気配を感じるようになった。

一人だけではなく、二人、あるいは三人…

誰かが、わたしに掴まって、長い旅路を共にしてくれるようだった。

嬉しい、という感情を、わたしは初めて理解した。

わたしは今まで寂しかったのだ。


気づけば、彼らはこう歌っていた。


わたしは何か柔らかな気持ちを抱いた。

この旋律があれば、わたしはこれからも進み続けることができる。


いつ燃え尽きるかわからないけれど、その時はわたしも一緒に漂っていたい。

どんなに望んでも届かない、あの美しい恒星をずっと見つめていたい。

この感情を、わたしの尾っぽに掴まった彼らなら何と名付けるだろう。

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こちらの企画に参加しました。

嶋津さん、広沢さん、素敵な企画をありがとうございます🌠

#ナイトソングスミューズ #muse杯 #小説 #短編小説