懲役ダイアリー 2017年9月4日月曜日 『母からの手紙』
受刑者にとって社会からの手紙は心から嬉しい。手紙は作業中に担当のオヤジに呼ばれ交付される。呼ばれた時のなんとも言えない優越感。胸を張り、指先を伸ばし担当台前まで歩く通路は、受刑者にとってのランウェイかもしれない。
今日は母から手紙が届いた。私は以前から父へと手紙を送っているのだが、一向に返事はない。読んでいるのか読まれていないのかもわからない。
母から事実を告げられる。
父は私の手紙を読まずに母に返したとのことだった。
以前の俺なら、何でだよオヤジって思ってたと思う。そしてふてくされていたのではないかと思う。でも今はそう思わなかった。
読まずに母へ返したということは、今は読む気にならないのでは。本当に読まないのならば燃やすか、捨てるか、破くかをするはずだ。いつか読む日が来るかもしれないから母へ返したのではないか。
そう考えた。
まだ俺のことを気にかけてくれているのではないか・・・。期待はしないけれどそう思うとなんだか心が安らいだ。
父は本当はそのように思っていないかもしれない。だけれども、そう思い込むとなんだか力が湧いてくる。父のためにも更生したい。そう思えてくる。人は誰かのためにこうすると決意を固めたほうが、ちゃんと決めた道を突き進もうとするのかもしれない。
母からの手紙でそんなことを考えた。
全ては順調に進んでいる。人生の成功に向けて。