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未経験から船員になれるって、ホントですか??
島国日本の課題である「船員不足」。この課題に、船舶管理会社の社長でありながら、海洋共育センターの理事長も務め、船員育成と海事人材育成開発事業に取り組む、畝河内 毅 (うねごうち つよし)氏にお話しを伺ってきました。
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なぜ今、船員不足が課題となっているのか
フナグニ(以下 F):まずは、船員不足の課題を理解するために、船員の働き方改革についてお話を伺えますでしょうか。
畝河内さん(以下 畝):基本的には陸上の働き方改革と同じように、労働環境を変えて、生産性を上げていこうという取り組みです。
F:働き方改革でルールが変わった後、船員さんの働き方には具体的にどのような変化がありましたか?
畝:陸上に比べ、船上の仕事は労働時間を管理するのが難しいと言われていましたが、そこをしっかり管理するようになり、無茶な運航が減って、休みが増えたと感じています。
F:そんな中、船員さんがどんどん減っていっているという危機感があると思うのですが、船員という職業の認知度が低いのは、どうしてなんでしょうか?
畝:これは、船員さんが大事だぞ!と考えた国の政策の中で、船員さんを養成する学校を特別に設けた際に、普通に進学していく学生たちに情報が入らなくなってしまった。同時に海の重要性も知られなくなってしまったのが原因ですかね。進学や就職のとき、船の話なんて全く出なかったでしょう?
F:そうですね。私自身の学生時代を振り返ってみても、船の仕事に触れる機会はなかったですね。特別にして切り取ったばかりに、中々一般の方に届かなくなってしまったんですね。
畝:ですので、私たちは業界自体をもう少し知ってもらいたいという想いで、海の魅力や船員の仕事をアピールする活動をしています。
船員という職業の魅力とは
F:未経験から船員になれる事や、船員の仕事について、まだまだ知られていない事が多いと思います。仕事内容や、魅力など教えてください!
畝:土日休みではないのですが、代わりに15~20日間などの長期間休暇を定期的に取れることは魅力の一つだと思います。
あとは、海運業界の仕事は、積み荷の積み込みから運搬、荷降ろしまでを仲間と共に完結し、目に見える成果があるため達成感を得やすいです。日本の海運は、無限の可能性を秘めた重要な分野で、輸入ベースでは物資の99.6%を船で運んでいるため、みんなの生活に密接に関係しています。生活を支えているという使命感も感じられるのが魅力ですね。
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F:一番気になる「お給料」は、陸上の仕事と比較していかがでしょうか?
畝:周りが海という特別な環境で働くことになるので、陸上での仕事と比較すると、初任給はかなり高い水準だと思いますよ。
F:やはり、噂通り給与は高いんですね。知れば知るほどいろんな魅力が見えてきました!逆に、船員さんのお仕事で、大変な部分もお伺いしたいのですが…。
畝: そうですね。船員の生活と仕事は一体化しています。船内での生活と仕事が同じ場所で行われるため、その環境に慣れることがはじめは大変かもしれません。陸上のように朝出勤して夕方帰るわけではなく、日中に荷役作業を行い、夜は航海をするという時間帯に体を慣らす必要がありますね。
F: 陸上で働く一般の方々は、船員の仕事は非常に過酷な肉体労働だというイメージを持っているかもしれませんが、実際のところはどうなんでしょうか?
畝:確かにそのようなイメージはあるかもしれません。しかし、最近では新しい機器や設備が導入されており、力を使う仕事は限られてきました。時間的なものに慣れることさえできれば、それほど過酷ではありませんよ。
F:なるほど!そういった環境整備もあってなのか、最近では女性の船員さんも増えてきていると聞きましたが実際はいかがでしょうか?
畝:はい、徐々に女性船員も増えてきています。大きな船では設備的にも余裕があり、女性が乗りやすい環境が整っています。一般的な船でも設備を改善して、女性が働きやすい環境を整える動きが増えていて、今では女性でも問題なく船員として働ける環境が整いつつあります。
F: 男性でも女性でも、どんな人が船員に向いていると思いますか?
畝:海が好きな人はもちろんですが、みんなで一緒に何かを作り上げることが好きな人が向いています。協力し合いながら何かを達成することにやりがいを感じる人、あとは、デスクワークに違和感を持っている方に挑戦してもらいたいですね!
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未経験から船員になる方法
F: では、ここからは、どうやったら船員になる事ができるのかをお伺いできればと思いますが、未経験から船員になるための方法について教えていただけますか?ファーストステップとして何をすればよいのでしょうか。
畝:大きく分けて二つのケースがあります。年齢にもよりますが、中学生から高校に進学し、普通の勉強をしながら船員の資格を取るケースや、短期大学で2年間学んで資格を取るケースがあります。船の高校から、短大、船の大学。商船高専もあります。だから、そういう船専門の学校で長い時間をかけてというのが、まず一つめのケースです。
もう一つが、ある日突然「船の仕事も出来るんだ!」と考えた人たちが船員を目指す事の出来るケースです。実は最短10ヶ月程の期間で資格をとって船員になる方法があります。そしてこの資格取得には年齢制限もありません。年齢と働きたいスタイルによってさまざまな資格があるので、どんどんチャレンジして欲しいですね。
F:長い時間をかけて資格を取って船員になるのと、短期間で資格を取って船員になるのとでは、勤務条件などが変わるものでしょうか。
畝: 船員の資格は職能に近いものなので、上位職に就くには上位の資格が必要です。ですので、長い時間をかけたほうが上位の資格が取れるのは確かなんですが、短期間で取れる資格からスタートし、自分の適性に合わせてキャリアアップしていくことも可能です。私としてもそのようなキャリアアップを支援しています。
F:先ほど、年齢制限が無いって仰いましたが、本当ですか?
畝: 基本的に年齢制限はありません。体力に自信があれば、40代や50代でも船員になってキャリアアップすることは可能です。
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海洋共育センターとは
F:ありがとうございます。次に、理事を務められている「海洋共育センター」について、詳しくお聞かせいただけないでしょうか。
畝:海洋共育センターは、2013年9月に設立しました。内航の船の事業者が集まって、この業界をもっと知ってもらい、多くの人に入ってもらいたい、仲間に加わってもらいたいという思いで設立されたものです。1社、2社ではなく、みんなが集まって人の雇用や広報、キャリアアップの支援をしようということで始まりました。
F:具体的にはどのような活動をしているのでしょうか?
畝:最初は事業者が船の仕事というものを自身でアピールすることから始まりましたが、現在は船の事業者や船舶管理会社以外にも、メーカーや金融機関、保険会社など多くの関連企業も共感し参加してくれています。また、行政や公的団体とも連絡協議会を作り、活動を共有しています。今では300社が参加するほどの組織です
F:それはすごいですね…!
海洋共育センターで6級海技士資格を取得する方法
畝:共育センター自体は学校ではなく、たくさんの人に集まってもらう活動の一環として、6級海技士という資格を短期間で取得できるように協力をしています。この資格は船員になるための入口となるもので、学科試験と乗船訓練を組み合わせた制度です。我々の民間の船を使って訓練を行い、資格を取得することができます。この資格に関しては年齢を問わず、誰でも取得することができます。
F:それが先ほど仰っていた短期間で取得できる資格ですね。そのような充実した制度があるのを、恥ずかしながら全く知りませんでした。6級海技士の資格を取る機関は日本にどれくらいあるのですか?
畝:現在は広島尾道の尾道海技学院と熊本にある九州海技学院(熊本県宇城市)が主体ですが、徳島の阿南や神戸でも取得できます。
F: 船員になりたいという方は、どこから来ることが多いのでしょうか?
畝: 前職は様々です。年間に100名ほどが6級を取得して卒業しています。全体では年間約800名の新しい船員が誕生し、そのうち約300名が海上技術学校、約300名が水産系大学を卒業して船員になります。商船系高専からは約100名、そして海洋共育センターのような民間機関にて6級を取得する人が約100名です。前職は営業職の人が多い印象ですが、公務員、弁護士やプロ野球選手も居ましたし、様々な職種からの転職者がいます。
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F:入学の年齢制限はありますか?
畝:基本的には16歳以上であれば、年齢は問われません。入っていただく前に、面接等がありますが、入学された中の最高齢では50代中ばの方もいらっしゃいますよ。
F:面接は何回行われるのでしょうか?
畝:基本は1回です。社会人の常識程度の試験や面接、船の上で最低限の生活ができるっていうのを確認する為の体力検査、小論文があります。これらを通じて、船のことが好きで本当に船員になりたいかを確認します。
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転職する際利用できる制度
F: 現実的に想像してみたんですが、前職があり、船員になろうとする方は、資格取得する間は一時的に無収入になってしまうのが不安なのかな、と思うのですが…。
畝:失業保険を受けられる方は、失業保険を受けながら資格を取得できます。事業者とマッチングができれば、内定を出して先に就職先を内定させ、資格取得後に船に乗ることもあります。その間も給与は支給されます。また、奨学金制度もあり、試験に通って資格を取得する際の負担を減らすことができます。極力無収入の状態が無いよう、ここら辺のスキームは業界全体で整えているところです。
F: なるほど!それだと安心ですね!ところで、資格を持っていないと船に乗ることはできないのでしょうか?
畝:資格がなくても部員として乗れる船もあります。資格は必要ないのですが、まずは船で慣れてもらい、その後、資格を取得するためのサポートをする事業者も増えています。共育センターに問い合わせていただければ、個々のケースに応じたキャリア相談ができます。
F: 事前に船に乗れる機会があると、イメージがついてお互い多分ミスマッチがなくていいかもしれないですね。
船員の仕事に興味を持った方へのメッセージ
F: 最後に、これから船員を目指す方へのメッセージをお願いします。
畝:海には今後もこの国の物流を支えていくという意味で無限の可能性があります。DXや新しい技術の導入、自動化など、魅力的な環境つくりもどんどん進んでいます。海や船が好きな方、まだ自分の道を見つけられていない方は、ぜひ船の世界にチャレンジしてください。
この記事を読んでいただき、少しでも船員の仕事に魅力を感じたら、共育センターがすぐに相談に乗りますので、いつでもお問い合わせいただければと思います!
F:これをきっかけに、船員の魅力が広まり、船員を目指す人が一人でもいてくれたら嬉しい限りです。畝河内さん、本日は貴重なお話ありがとうございました。
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