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離島の生活を守る、フェリー船員の魅力を教えてください!

海に囲まれた島国である日本には欠かせない「船」。今回は、人と物を一緒に運び人々の暮らしを支える「フェリー」について、鹿児島~沖縄の島々を結ぶマルエーフェリー株式会社の新村嘉和さんにお話を伺いました!


マルエーフェリー株式会社 海務部係長 新村氏

離島を結ぶフェリーの役割

フナグニ(以下 F):フェリーとはどのような乗り物で、どんなものを運んでいるんですか?

新村さん(以下 新):フェリーの大きな特徴は、物だけでなくお客様も乗せることです。定期航路として国交省に届け出た時間に運航しなければならない「公共交通機関」でもありますので、離島の方々の足としても役割を担っています。フェリーは人と物が一緒に移動できますし、一度にたくさんの物を運ぶことができるので、近年では環境に優しい乗り物として注目されているんですよ。

F:環境に配慮した物流方法の一つとして、船が推奨されているんですよね!国内にはいろいろなフェリー会社がある中で、マルエーフェリーさんの特徴はどんなところですか?

新:他に輸送手段がない場所へ運ぶというのは、他の地域と違うところだと言えます。食料・インフラ関係、とにかく何でも運びます。創業者は奄美諸島の出身者で「島民の暮らしを便利にしたい」という思いでこの会社を立ち上げました。一度の航海で800トン以上の貨物を運んで、離島のライフラインを守っています。

F:台風などで船が欠航したときの離島の様子をニュースで目にすることもあります。いかに船が生活に直結しているかがわかりますね。

新:そうなんです。悪天候で物資が届かず、品薄になった状態のスーパーの様子などが報道されたりしますが、船が動かなければあのような事態になります。陸上・海上問わず、当社で働く社員たちの中にはいち早く物資を届けたいという思いが常にあります。

F:携わる皆様の熱い想いが伝わってきます!船を動かす船員さんは何名くらい乗っていらっしゃるのでしょうか?

新:1隻に26名乗っています。船の操縦に携わる甲板部に12名、船の心臓部であるエンジンに携わっているのが5名。あと当社はお客様も乗せる船ですので、そちらのサービスに携わる事務部が9名です。鹿児島県の出身者が多いですが、他県からも志望して入社してくれる乗組員も増えてきています。

F:どんな思いで貴社の船員を志望する方が多いですか?

新:これは乗組員に限ったことではないですが、「人の役に立ちたい」という思いは入社する社員に共通していると思います。数ある船会社の中で当社を選んでくれているので、会社としても個人の希望の働き方になるべく寄り添いたいという思いはありますね。

F:創業者様の思いが今も受け継がれているのですね!

旅客と貨物を乗せて出港準備をする「フェリー波之上」

「お金」も「休暇」も大切にする働き方

F:いろいろな船がある中で、フェリーの乗組員を志望する理由にはどんなことが挙げられるでしょうか?

新:乗船周期の短さは選ばれやすい理由だと思います。他の船種だと何か月も家に帰れないという話もありますが、当社は約40日間の乗船です。それでも他のフェリーより長いんですが、乗船期間中に4日に1回は家で一晩過ごすことができるのも当社の特徴です。給料より休みが欲しい、という船員さんには好評ですよ。

F:乗船期間中に家に帰れる日があるっていいですね!どのような仕組みなのでしょうか?

新:当社の航路は4日間で1航海。鹿児島を出航し、奄美諸島や沖縄を巡って帰ってきます。4日後の朝に鹿児島に着岸してから翌日の昼頃までは停泊なので、下船して一晩帰宅することができるんです。また、40日の後は14日~20日程の休暇が与えられるので、船員ならではの「長期休暇」の魅力ももちろんあります。

F:とても働きやすそうな印象です!船員さんのお仕事の魅力としてよく「高年収」というのを聞きますが、そのあたりはいかがなのでしょうか?

新:地元の一般的な陸上のお仕事より高水準だと思いますよ。当社においては船員さんの基本給は会社独自で決めているのではなく、労使間で協議して決められたものです。その他に手当などがたくさんありますので全体を見ても高水準と言えるのではないでしょうか。

船員のメリット・デメリット(参照:日本海洋資格センターHP)

F:やはりお給料の面も船員さんのお仕事には魅力があるんですね!たくさんの船員さんの乗船日数とお休みのバランスを考えるのは、とても難しいように思いますがいかがですか?

新:当社の場合は、たくさん乗ってたくさん稼ぎたい人もいれば、高い給料より長い休みが欲しいという人もいますが、皆さん同じ労働条件で乗船している事からやはり平等性を保つのは大切な事と思っています。

F:船員さんのことをとても大切に思っていらっしゃるんですね!最近ではコロナ禍もありご苦労される場面も多かったと思います。どんな思いで苦しい時期を乗り越えましたか?

新:貨物の数はあまり変わらなかったのですが、お客様は激減しました。でも会社としては、減ったときより増えたときの乗組員のモチベーションを危惧していました。お客様が少ない時期を長く経験してしまうと、通常に戻るだけで普段より大変に感じてしまうものですから。

F:確かにそうですね…実際にはどのような工夫で船員さんたちのモチベーションを保たれたのでしょうか?

新:乗船期間の配慮が一番でした。当社の航路は現地に清掃会社さんがない島もありますので、基本的に船内の清掃は乗組員自身で行っているんです。コロナ禍は普段以上に気をつかって実施していたため、乗組員の負担は大きかったと思います。通常より乗船期間を短くするなどして心身の負担を減らせるよう工夫しました。でもやはり乗り越えられた一番の理由は、乗組員たちが個々で高いモチベーションをもって取り組んでくれた事だと思います。

F:状況に合わせて柔軟に対応されていたのが、乗組員さんへの思いやりを感じますね!

清潔に保たれた「フェリーあけぼの」エントランス

働く満足度を上げる職場づくり

F:船員さんの勤務体制について教えてください!

新:4日間で1航海のうち2~3日目は特に頻繁に入出港がある日です。複数の離島へ寄港するため、どの部署も早朝のスタンバイから短時間に濃い作業内容が詰まっています。でもその後、沖縄につけば息抜きのタイミングがあるのが乗組員にとってはうれしい時間ですね。

F:船員さんのご苦労として「長期間家に帰れないのがストレス」という声を聞くこともありますが、程よくリフレッシュのタイミングもあっていいですね。

新:はい、料理を作る司厨員からは、陸上のレストランよりもこまめに休憩が取れるから、船の方が働きやすいという声もあります。船員には個室を用意しリラックスできるようになっています。釣りが趣味の乗組員は、休憩時間に自室にこもって休暇中に使う釣り道具を制作していたりしますよ。それでも大変なお仕事には変わりないので、なるべく負担を減らせるような工夫は今後も必要だと思っています。

F:乗船中=職場に縛られてプライベートがない、というイメージでしたが、プライベートな時間を作れるのはいいですね!働きやすい環境づくりに注力されているように感じますが、福利厚生なども充実しているのでしょうか?

新:はい。例えばお子さんがいる社員たち向けに地域の保育園との提携も行っています。この制度はある乗組員が保育園への入園を希望したことをきっかけに、今後の福利厚生として体制を整えたという経緯があり、社員たちからも好評です。自社船で使える優待なども用意していますよ。

F:さすが地域密着型の企業さんです!自社船を使って家族旅行、なんていうのもフェリー会社さんならではの福利厚生ですね。

新:休暇中に家族で乗りに来てくれる船員も増えました。愛着を持って勤めてくれるのは会社としても嬉しいですよ。お子さんにとっても、お父さんお母さんの職場を見られる貴重な機会ですし、家族のいい思い出の一部になってくれたらいいなと思っています。

F:働いている方々が職場を好きでいてくれている証でもありますし、ご家族も職場を理解することでますます応援したくなりますね!

新:船員として働いていただくうえでご家族の応援やご理解は欠かせないと思っています。これからも愛着を持って働いてもらえるような職場づくりに努めていきたいです。

鹿児島港に停泊中の「フェリー波之上」。清掃等の業務を終えた船員は一時下船も可能。

船員として広がる様々なキャリア

F:社員同士の交流もあるということですが、船員さんと陸上社員さんの交流もあるのでしょうか?

新:はい。例えば船員が一定期間陸上社員として働くこともよくあります。会社としては船の知識を持った人が陸上にいてくれて助かる場面が多々ありますし、逆に陸上の仕事の流れを知って船に持ち帰ってもらうことも大切です。

F:陸上社員として働くこともあるんですね!船員の勤務体系に慣れていると大変なこともありそうですが、そのあたりは大丈夫なのでしょうか?

新:その間は陸上社員と同様の働き方となりますが、基本的に陸上勤務期間は2年までという制限が設けられています。いつまでも船に帰れないということはないので船員も安心です。

F:そんな決まりもあるんですね。船員さんにとっても新しい環境にチャレンジできることは長いキャリアの中でいい経験になりそうです。

新:そうですね。退職せずにまったく新しい業種に挑戦できる機会って陸上ではなかなかないですから、向上心やチャレンジ精神がある人にとってはとてもいい環境だと思います。当社は船員だけでなく、全社的に「努力する人に応える」を大切にしているように感じますね。

F:努力がきちんと評価されると、働く皆さんの士気が上がりますね!一言で「船員」と言っても、色々な経験やキャリアの積み方があるのだと知ることができました!

船員の知識は陸上業務でも重宝されている。

海陸一丸となって取り組んだ、船員の働き方改革

F:近年では船員法の改正などで船の世界にも働き方改革の波が起こっていますが、貴社で変化を実感されることはありますか?

新:法律が変わって労働時間を見直したことをきっかけに、乗組員の意識も変わりました。乗組員たちが自ら業務の無駄を見直し、効率化に努めるようになってくれたのは大きいです。

F:貴社では早速効果が出たんですね!会社としてはどんな取り組みをしましたか?

新:繁忙期などの多客時は乗組員数を増やすなどの対応は積極的に行いました。でも、会社からいろいろ言わなくても、乗組員たちが自分たちで改善しようと動いてくれたので有難かったです。一人ひとりの意識が変わったことで、時間外労働も大幅に減らすことができました

F:今回の法改正では、労務管理記録簿の電子化など、抵抗もありそうなものですが、反発などは無かったでしょうか?

新:これは乗組員の理解と協力があったお陰でできたと言っていいでしょう。デジタルに苦手意識がある乗組員ももちろんいましたが、新しい取り組みを受け入れるために努力してくれました。今は現状よりもっと働きやすい環境にするために、乗組員の頑張りに会社側が応える番だと思っています。

F:普段から現場の声を大切にしてきた会社だったから、というのも大きいのでしょうね。現場と会社が力を合わせて成長していこうとする、とても良い関係性だと思いました!

フェリー船員の苦労と喜び

F:働きやすい環境を作るといえ、お仕事柄大変なことやご苦労もあるのではと思うのですがいかがですか?

新:天候にも左右されますし、色々なお客様を乗せる船なのでもちろん大変なことはあります。揺れる船内で生活するだけでも最初はストレスですが、その中でも色々な状況に対応し、お客様にご満足いただけるように努めなければならない。乗組員たちには頭が下がる思いですよ。時には大変なこともありますが、喜びも大きくやりがいもある仕事なんです。

F:ぜひ、フェリー船員さんのお仕事の喜び、お聞きしたいです!

新:船が着いたとき、皆さんが感謝してくれることですね。船を歓迎してもらえること、直接感謝の言葉をいただけることはとても嬉しいです。物資が途絶えることは離島の生活に直結するので、我々としても早く届けたいという思いで運航しています。そういう苦労や努力が報われる瞬間には、やはりやりがいを感じますね。

F:「人の役に立ちたい」と入社を志望される方々も多いと伺いましたが、まさにこういう事で働きがいを感じられるでしょうね。

新:そうですね。定期便として運航しているので、離島の人々と顔なじみになりやすいのもこういう場面に関係しているかもしれません。我々が当たり前に思っていること、当たり前にしていることにも感謝を示してもらえるのは、離島の方々の温かさなのでしょうね。

F:想像するだけで心が温まります。お仕事の先で待っている人を想いながら働くことができるって素敵ですね。

船を待つ乗客が待機するフェリーターミナル

船員は特別な資格がないとなれないの?

F:早速船員のお仕事に興味を持った方も多いと思います!ズバリ、船員未経験の方がフェリーの船員として働く場合、最低限必要な資格はありますか?

新:海技免状を持っていないとできない職もありますが、実は無くても始められる職もあります。サービス要員の事務部は特に必要な免状はありませんし、少し意外に思われるかもしれませんが、甲板部にも免状がなくても挑戦できる職があります。入ってから実務経験を通して資格につなげることもできるので、実は誰でも船員としてのキャリアをスタートさせることができるんです

F:そうなんですね!学歴や今持っている資格だけで諦めてしまいそうでした。実際に、免状のない状態で入社する方もいらっしゃるのでしょうか?

新:毎年数名はいますよ。船舶料理師など、乗船履歴をつけてから取ることができる資格もあります。免状がなくても挑戦できるということを、もっと多くの人に知っていただけたらいいですね。

F:船員への道に明るい兆しが見えました!こんな人がフェリー船員に向いているなど、求められる人物像はあるのでしょうか?

新:どんな船でも共通かもしれませんが、フェリーは特にサービス精神が大切です。事務部はお客様と関わる部署なのでもちろんですが、甲板部も機関部も直接ではないにしろお客様が関わってくる仕事です。見える・見えないに関わらず、どんな業務に関してもサービス精神が大切になってくる仕事と言えます。

資格がなくても憧れの船員になれる!画像は事務部のお仕事現場。

将来の展望と船員を目指す方へのアドバイス

F:今、国内では船員不足が社会的な問題となっています。この課題に対して貴社が取り組んでいることがあれば教えてください。

新:適切な労務管理などを通して働く環境をより良くしていきたいですし、乗組員の希望を聞ける環境にしていきたいと思っています。そしてまず、身近な乗り物としてフェリーの魅力をより多くの人に知ってもらいたいという願いがあります。

F:より多くの人に船を知ってもらうために、行っていることはありますか?

新:当社では営業部が中心になって、地元のお子様を招いて交流イベントを行うなど活動をしています。船という乗り物を知ってもらう貴重な機会だと捉えているので、今後も大切にしていきたいです。いずれはそういう機会をきっかけに、船員を志す子どもたちが出てきてくれたら嬉しいですね。

F:最後に、これから船員を目指そうと思う方へメッセージをお願いします!

新:船は島国には欠かせない重要な役割を担っております。船員という職業は、やりがいのある未来へ続く職業です。私共と一緒に人々の生活を支えていきましょう!

マルエーフェリー航路図

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