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舞台「甘美なる誘拐」9/14 マチソワ



 原作初読感想がコレ↑なんですけれど、この原作一番の(個人的)ネガティヴだった”細かすぎる”説明文が台詞で簡潔にまとめられていて、ストーリー展開のテンポの良さを阻害しなくなったことがとてもよかったです。

 例えば、冒頭の荒木田の事務所のシーンで「真二と悠人がすごい下っ端であること」「ヤクザが衰退産業であること(=弱々しい組にいること)」「荒木田がインテリヤクザであること」その他諸々を荒木田の3文くらいの台詞でまとめてて、端折り方というよりも要点のつかみ方が巧い。
 サスペンションライトが当たって突然語り手になる演出はあれど、そこで長々説明させることもなかったし、むしろ感情表現を独白で語ることで舞台慣れしていない役者の粗を目立たせなくしているのかなという気さえする。



 原作と同じように、登場人物になにかひとつ起こる毎に、舞台上の主人公が変わっても、セットの位置の違いと当たり前に役者の顔が見えるので、原作ほど混乱しなかった。
ただ、原作がそれぞれの章のなかで「起承転」まで繰り返し出して、一番最後に「結」なのに対して、舞台は転!転!転!転!・・・・・・結!みたいな(今全体ストーリーのどの辺りにいるんだ?)感が強かった。
シアター1010のマスコットキャラじゃないんだから。テンテン、マスコット感薄いあの6等身?とガニ股がゴk・・・・・・あんまり可愛くなくて可愛い。

藤井担にビビって倉庫前で撮ってる


テンテンの話は置いておいて、転!が多すぎて慣れちゃった?緩急感じにくかった。
 現在進行形ミステリーだからもうちょっと緊張感欲しかったな。


 で、この緊張感というかぞわっとする感じ?真二に害を為す(?)敵側の警察やニルヴァーナや荒木田(??)が担ってるのは、そりゃそうなんですけれど、バディであるはずの悠人がそれ(真二に危害を加える訳ではなく和やかな誘拐部屋に喝を入れる)をやるシーン(原作p.302&p.312)を結構楽しみにしてて・・・・・・・・・・・・


・・・・・・え?やらないの?荒木田がビンタして終わり?わァ・・・・・・・・・あ・・・


泣いちゃった!!!


 結局「全部悠人の手の内だった」ってのが「そうはならんやろ」「なっとるやろがい!!」なこの話のオチなんですけれど、アホキャラの悠人が①元々それができるくらい頭が冴えていたが働きたくないのであえてアホキャラをしていた、なのか②普通にアホだが高額宝くじを当てたショックで覚醒、なのかどっちともいえないじゃないですか。
①の片鱗を見せる前述のシーンとか原作冒頭の荒木田に投げつけられたライターがヒットする前に掴んで当たったフリをして痛がるとか着信音が悪趣味とかが割とカットされていたので、いうなれば作品の叙述トリックの悠人の怪しさがカットされたようなもの。

オオタカがムクドリを襲うシーンの録音を着信音にしている男(演:和田琢磨)怖すぎるだろ


 まぁ、単純に私がおっかない琢磨さんに執着してるだけなんですけどね。解散解散。


 原作の地の文の説明を台詞で要約しているのもそうだけれど、トリックを簡略化しても矛盾しないように改変されてたのすごかった。トリック周りの改変は、

①真波(菜々美)の分の身代金を請求するしないでモメるシーンがカット=最後に植草父に会う理由が薄い→宝くじを買ったのは菜々美ではなく植草父本人である。だから代わりに受け取りに行っても怪しくない。とか(原作では菜々美の代理人として植草父が真二&悠人の代わりに受け取りに行く、なので代理人が二重三重になってるところを1回にまとめた感じ)

②牛村がいない分、身代金バッグの強奪を荒木田本人が行う(原作読んだとき石村と牛村でごちゃついて、ケンさんで書けぃ!となって、ちょっと心配してた笑)

③真波=菜々美の経歴トリックが、英文学専攻→英語のディベートが得意だった、に変更。高校時代演劇部だった、を追加。
原作で真波が「誰も知らない女」だったのは、読者からすれば叙述トリックでも、登場人物からすれば悠人しか顔を認識してなかったから成り立つトリックだったが、植草部品シーンで菜々美の顔を観客が見ている舞台ではそのまま使うことはできない。だから菜々美を「変装」させ、演劇部設定を加え、「真波を演じさせた」。
役者の兼ね役が多い作品だからこそ、菜々美役の磯部さんが違う衣装で出てきてもすぐに同一人物だ!とはなりにくいのかもしれない(影アナも磯部さんだったし)

④地域通貨はニセモノを納品せず、本物をストレート強奪(ミスプリの回収で、後日納品~的な?)


くらいかな?



 原作とがっつり改変してるのはケンさんのオネェ設定くらいかな?芳恵がほぼ出れない(真二を女装させるときだけ出てくる)からなのか・・・・・・。ケンさん自身が悠人が憧れる「一本筋の通ったおとこ」ではなく、ケンさんもまたその属性に「憧れる側」の人間だった、っていうのが「生まれる時代を間違えた」もの悲しさがあって、おっ!いいな・・・・・・って思ったんだけど

穴モテ設定はいらんわ



 いや、この、ギャグに昇華できていない微妙な下ネタが虚無すぎて、構成の巧みさが霞んでしまった。自分別に潔癖じゃないし、「ヘーコキましたね」と「ハゲの歌」とか小学生みたいなくだらないやつかなりウケるんですけどね・・・・・・そんな空気じゃないタイミングで突っ込んでくるし、コメディ描写か?これ・・・・・・・・・で一回スンッとしてしまう。



 こうは言ってるけれど、自分がみた中で今年いちばん満足した気がする。下ネタ以外のストレスなかったからか、メンタルの調子が良かったからか、1時間に1本の電車乗り遅れて高速バス間に合わなくなりそうでヤケクソでいわきまで国道爆走してアドレナリン出まくってたからなのか(セルフ夜行バスならぬセルフ常磐線)。

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