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市民クラブとプロヴィンチャ
サッカークラブや他のスポーツクラブについて語る際に、市民クラブという概念がある。定義は使い手や使用シーンによってそれぞれだったりするが、用途としてはビッグクラブの対義語として使われることが多いのではないだろうか。Wikipediaにも収録がないので、ChatGPTに聞いてみよう。
市民クラブとは、一般的に市民が自主的に集まり、地域活動や社会貢献、文化・スポーツ活動などを行う団体のことを指します。ただし、具体的な意味や活動内容は地域や団体ごとに異なる場合があります。
主な特徴
1. 地域密着型:市民が主体となり、地域社会の発展や課題解決を目的とする。
2. 多様な活動:環境保護、福祉、教育、スポーツ、文化振興など、幅広い分野で活動。
3. ボランティア精神:営利を目的とせず、社会貢献を重視する。
4. 行政との連携:地方自治体と協力して地域政策に関与することもある。
具体的な例
・市民クラブ(議会会派):地方議会の中で無所属議員や特定の政党に属さない議員が集まる会派を指すこともある。
・スポーツ市民クラブ:地域住民が参加するスポーツ活動を推進するクラブ(例:サッカークラブ、バスケットボールクラブ)。
・文化・学習市民クラブ:読書会や歴史研究、語学学習などの活動を行う団体。
どの「市民クラブ」について知りたいですか?
Jクラブの場合、ChatGPTのいう具体的な例の、スポーツ市民クラブには当てはまらない。一方で主な特徴を見ると、地域密着型、社会貢献を重視、地方自治体と協力などは、どのJクラブも概ね当てはまっているのではないだろうか。辞書に説明がないし、考えすぎずに文字どおり、市民のクラブ、市民運営のクラブ、市民経営のクラブくらいで捉えてみるべきなのだろう。
スペインにはソシオというサッカークラブの運営システムがある。本を買って勉強してはみたものの、なかなか日本では成り立ちにくい制度に映る。たとえばたいへん運営効率の良い、事業規模30億円のJ1クラブがあったとして、収入の1/3をソシオ会費収入、チケットおよびグッズ売上、広告収入で賄う場合、会費収入の10億円は年会費5万円x2万人で達成できるが、残念ながら日本に実現できているクラブはない。
また、スペインでも完全ソシオ制を採用しているのは、バルセロナ、レアルマドリードの2強と、アスレティックビルバオ、オサスナの4クラブのみとなっている。ソシオ制は市民クラブの基本かつ究極の仕組みのようにみえるものの、伝統的なクラブでしか実施されておらず、実際にはなかなか実現するのは難しいだろう。
では、日本で代表的な市民クラブといえばどこだろうか。今年のJ1では、清水エスパルス、横浜FC、ファジアーノ岡山などが市民クラブと自称したり、他者から呼ばれるケースが多いのではないかと思う。また地域密着がうまくいっているとみられる川崎フロンターレを市民クラブと呼ぶ人も少なくない。
清水エスパルス
Wikipediaによると、もともとは小学生の選抜チーム、オール清水が源流のようだ。ここから発展した社会人チームの清水FCがJリーグに参加が認められた際に、テレビ静岡を中心に運営企業が設立された。この後、市民持ち株会が株式の23.6%を保有する筆頭株主になった。しかし1997年に経営危機でテレビ静岡が撤退し、鈴与の子会社に引き継がれている。現在は鈴与が筆頭株主で、清水エスパルスはグループ会社という位置付けになっているようだ。
横浜FC
Wikipediaによると、横浜フリューゲルスのサポーター有志によって設立されたとのこと。クラブ設立後すぐにJFLに参加できた影響力(通常新設クラブは県リーグや地区リーグの最下カテゴリからスタートする)は、まさに市民運動のたまものと言えるかもしれない。以前は日本初の市民クラブと標榜していたそうだが、現在は「新しい市民クラブ」と表現している。株主構成はONODERA GROUPホールディングスが55.2%を保有し、親会社となっているようだ。
ファジアーノ岡山
Wikipediaによると、川崎製鉄水島サッカー部のOBが作るリバーフリーキッカーズを中核に結成されたとのこと。2006年に新しい運営会社が設立されて、それ以降は木村正明氏が筆頭株主となっている。一時期Jリーグの専務理事を務めて全株式を手放していたが、退任に伴い再度筆頭株主となり、その後オーナーと称している。親会社をもたないという点では、J1で最も市民クラブの性格が強いと言えるかもしれない。
川崎フロンターレ
地域密着度が高いため、元が富士通サッカー部で、親会社が富士通であることを忘れられがちな川崎フロンターレ。100%子会社から、川崎市、地元企業、持株会(約9.5%)を株主に迎えて、現在の形になっている。株主どうこうではなく、市民に強く愛されているという意味で市民クラブと認識されているのだろう。ホームスタジアムの等々力陸上競技場は川崎市の所有で、球技場への再編整備も川崎市の負担で進められている。
もしかしたら市民クラブの定義は人それぞれかもしれない。ともあれ、市民に愛されて、自治体とも共有し、地元企業や市民団体などが積極的に参加している姿があって、まるで親会社が運営しているようには見えないということが、ひとつの定義になるだろう。市民クラブだけで長くなったので、プロヴィンチャについては後編で。