091 白い日にはお茶と音楽を
雲がたくさん出て空が白い日。
せっかくのお休みなのに、なんとなく外に出たくない日。
そんな日は家カフェしましょう。
どのお茶をいれるか、どの食器を使うかは気分次第。ひとつずつ選んでいくうちに、沈んでいた心がわくわくしはじめます。ケトルにお水を入れて、さぁお湯をわかしましょう。
お菓子があれば、もっとうれしい。(こういう日のためにお菓子のストックはいつも気にかけています。)音楽も選びます。しばらく新しいCDを購入していないのですが、今持っているCDたちでも、まだまだ飽きません。
ふだん、クラシックや古い洋楽を好んで聴きますが、今日は日本語の歌詞を聴きたい気分。私は日本のバンドだとSpitzが大好き。人生ではじめて購入したCDもSpitzです。
学生のころ、親友(と言っていいのかわかりませんが、生きてきた中でもっとも話を聴きたいと感じる相手なので私はそう思っています)と片耳ずつイヤホンをつけて、Spitzの曲を聴いていました。
私は「冷たい頬」という歌がすきで、特に「近づいても遠くても知っていた」という歌詞が素敵でお気に入りです。
友人は「君が思い出になる前に」がすきで、特に「君の耳と鼻の形が愛しい」という歌詞が気に入っていたようです。「こんなこと言われたら、すきになっちゃうよね」と言っていました。
あの日々。
友人とは保育園で出会いましたが、彼女が引っ越しをして会えなくなりました。(記憶にはないのですが、母曰く双子みたいに同じ動きをしていたそうです)しばらく文通をしていて、大学で再会しました。それまでは一回しか会ったことはありませんでしたが、手紙でたくさんおしゃべりをしていました。
再会してからは、二人で肩を並べて歩いたり芝生でおにぎりを食べたり。漢詩を作る課題があったとき、作ったものをお互いに評価しあうこともありました。(私は水が鏡になる瞬間をテーマにした詩、彼女はかもめの視点をテーマにした詩でした)音楽を聴くときだけ黙っていましたが、それ以外はずっとおしゃべりしていました。
その子とは、今のところもう会えないのですが、とても大切なひとです。
今でもふとしたときに、彼女と帰り道で目にした草むらや、その子の家に敷いてあったカーペットの色を思い出すことがあります。大切な、大切な記憶のかけらたちです。
さて、お湯がわきました。カップとポットをあたためましょう。
それぞれお湯をいれて、両手でポットを包めば手もぽかぽかします。
お湯をほかのカップにいれて(冷めたら植物にあげます)、茶葉を入れ、ふたたびお湯をいれます。ひらひらと細い湯気が注ぎ口から上がってきます。お茶の香りとともに、あたたかく湿りながら。
なんてやさしい時間でしょう。
ポットとカップとお菓子(今日はチョコレート)、それから砂時計をトレーに乗せてリビングに行きます。その間もさらさらと砂は落ちてゆきます。
さ、と最後のひと砂が落ちて、今度はお茶をカップに注ぎます。
ほとほとほと、という音と一緒に香り高く紅いお茶が入ります。
熱いからすこし冷まして。ふと窓を見ると、雲たちは解散して陽が出ていました。
あの子は今ごろどうしているかしら。
はなればなれでも、やっぱり気になります。
穏やかなあの子は、きっと笑顔でいるだろうな。
「近づいても遠くても知っていた」
恋の歌だし、すこしせつない歌ですが、このお気に入りのフレーズはさまざまな場面で頭に浮かびます。
たとえば、そう。こんなつめたくて気持ちのいい午後に流れてくる思い出に対して。
実際の歌詞に含まれた意味とは変わるかもしれないけれど、素晴らしい言葉はどんなときにも寄り添ってくれると思います。
花やバニラの香りがするお茶を飲みながら、言葉の力を感じた、白い空の日でした。
今回も最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
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