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キヤリア棚卸(5社目:EXOTEC)

4社目の転職時「これが最後の転職のはず」と思って過ごしてきました
しかしここでまた大きな変化が起こります


転職はピボット

再び

この時点で社会人になってちょうど30年、ふたたび基本から学ぼうと中央大学大学院戦略経営専攻科へ入学した2022年4月
コロナ末期であり、B&R社での仕事もようやく陽の目を見るフェーズに入っていた時期、突然その連絡が入ります
B&R入社前に相当数の転職エージェントと話をしたこともあり、結構な頻度で新しい募集の話をいただいていました
とはいえ、職責が上がる(できればジャンプアップで、カントリーマネジャーレベル)でなければどこにいっても大差はなく気にも留めていなかったのですが、ある日今までに見たことのない待遇(給与)のオファーをもらいます
最初は冗談かと思ったその数字も本当であり、面談でも双方に好印象でもあったため、大変お世話になったB&R社を退社することとなりました
その後実はなだれを打ったように同僚もB&R社を退職することになりますが、やはり親会社の影響もあったように思います

軸足

自分の20年の足跡は「エンジニアマインド、プロジェクトマネジメントおよびグローバルネットワークを通じて、パートナーを活用し顧客の成功に寄与する」ことでした
うまくいかないことも多々ありましたが、B2Bビジネスの実行者としての実績と、戦略的思考を用いて、効率的に目標を達成することでもありました
この軸足は、意外に汎用性が高く、市場評価が高いことは一時期の転職エージェント面接祭りで理解していました
蛇足ですが、外資系はたいてい人事担当は従業員ではなく会社側を見ているので、自分のキャリアやトレーニングなどは自分で責任もって計画実行しないとなりません
いまやJTCでもそうなのかもしれませんが、私は転職エージェントを自分専用のキャリア相談相手(まさにキャリアコンサルタント)として大切に活用していました

この壁打ちを通じて、汎用性の高いB2Bビジネス、特に営業・マーケティング・パートナーマネジメントを実践してきたことは貴重なスキルだと実感します
さらにはビジネススクールの授業などもあってその自覚が高まります
特にシーメンスでは、CRMやアカウントマネジメントの最先端の取り組みをしていたのだなと理解することになりました

フリーフット

バスケなどでいうピボットで軸足(ピボットフット)と反対の足は利き足(フリーフット)というそうです
利き足とフリーフット、同じ意味なのに印象が正反対ですが、どちらの印象でも転職にピッタリな気がします
軸足がB2Bビジネススキルであれば、20年の利き足は「生産設備」でした
自動車や電気電子半導体、飲料食品医薬品などの製造現場を限りなく見てきて、グローバルな技術トレンドも理解していること、これがずっと自分の利き足でした

それが今回のEXOTECへの転職では、未知だった「物流」という世界になります
もちろん運んでいるものはそのような生産設備で作られた製品がほとんど
しかし使われている用語、ビジネスの習慣や文化などがずいぶん違うことを後から知ります
また、4社目までは機械や生産ラインに使われる「部品」を販売していましたが、EXOTECに来て初めて「設備」を売る側に回ることになります
一人で売れる単価が違います
給与は業界によって決まるといいますがまさにその1つだったと思います

EXOTECとは

物流業界

物流とはとても範囲が広く、製造メーカー内の構内物流、工場から出てから倉庫に大量に移動させるトラックや船舶、航空機などでの物流、倉庫から店舗もしくは各家庭への小分け物流などがあります
この中でも人海戦術がいまだ主流であるのが、小分け物流です

仕分け工程では日本でも世界でも8割程度はいまだ人手に頼った作業のままと言われており、2024年問題が叫ばれるようになってもなかなか改革が進んでいません
人手不足や物価上昇が直撃し、現在のサービスレベルが保てない危険な状況です
一番手間もコストもかからないのは、段ボール箱やそれを載せるパレットで搬送することです
それをそのまま置いているのがコストコ
でも実際は、小分けして消費者に届ける必要があり、Amazonはそこで大きく既存の小売業界に差をつけている、まさに競争力の源泉でもあります
コロナ禍で生協が大きく売り上げを伸ばしましたが、コロナ後にはまた戻ってしまっています

仕分け工程(ピッキング)

仕分けとは、顧客からの注文に応じて、様々な商品を必要な個数仕立てて箱詰めすることをいいます
たとえばAmazonで、本2冊、Tシャツ3枚、お菓子5箱を注文したとします
マニュアルでの作業なら、人間が歩いて持ってきて、各オーダー、つまりお宅に配送される箱に入れる必要があります
一般的に一人でピッキングできるスピードは80~120品目程度と言われていますが、それでも一人が1日10キロ歩くというようなとても大変な重労働となります
このため作業者を集めるのがとても大変で、それこそ高給を出せるAmazonやコストコが近所にやってきた際には一気にコストが増えたり人が足りなくなったりします
駅から大型バスで「Amazon行き」とか「ヤマト運輸行き」とかに大量の人が乗っているのをみることがあると思いますがまさにその作業者の輸送をしているバスですね
最近ではタイミーなどパートタイムの仕事をサイト経由で大量に集めたりしていますが少子高齢化、物価高が直撃しています

EXOTECの設備

そのようなマニュアル作業のピッキングを自動化するアイデアは古くからありますが、最近では大型のお掃除ロボットのようなものが数十台から数百台走り回って棚から荷物を自動で取ってきて、作業ステーションにいるピッカーに渡す設備が流行っています
古くはのちに転職するノルウェーのAutoStoreや、中国系の棚搬送ロボットなどが採用されていますが、EXOTECはその中でもマーケットでのイノベーションを起こしました
その設備の名前はSkypod(スカイポッド)と言います

2015年にフランスで創業したベンチャー企業で、当時GEヘルスケアのエンジニアだったロマンとルノーという二人のエンジニアが、当時先進のロボットだったKiva roboticsをAmazonが2012年に買収し、その後外販しないようになったことを見て、これはビジネスになると感じて創業したといわれています

2019年にファーストリテイリングにより日本のユニクロの2つの倉庫に採用され一気に国内で知名度を上げました
当時は日本のオフィスもなく、コロナ禍でもあったため、すべての打ち合わせをリモートで行い、EXOTECのエンジニアとお客様が初めて面談できたのは現場工事の直前だったと聞いています

B2Bビジネスは難しい

新しい顧客、新しい文化

フリーフットとして、物流業界(新規顧客)に機械設備(新規製品)を販売することになった私はたくさんの壁に遭遇します
まず顧客の名前がよくわかりません
いやヤマト運輸とかは知っていますが、顧客の名前と業界での地位や立ち位置などが分かりません
また、物流倉庫の中に入ったことはなかったのでここで何が行われているのかもなかなか理解できませんでした
それと競合がわかりませんでした
要するにすべてが分からないのでお客様に聞くしかありません
幸いSkypodは誰も知らない製品であり、ユニクロなどの知名度や物珍しさもあり、どの展示会も満員御礼、引き合いには困りませんでした

学ぶことと結果を出すこと

学ぶことは大切です
しかし結果を出すことはもっと大切です
入社後半年を過ぎたことにはかなり大手の顧客の経営層とも話せる程度にはレベルアップしましたが、なかなか受注には至りません
1年過ぎたころ、夏休みでブレーンであるフランスメンバーがお休みの時期に大きな商談が2つ舞い込みました
この2つとも全くと言っていいほど顧客の知識や要求に応えることができませんでした
詳しくは書けませんが、ここは1つ目のターニングポイントでした

何を解決するのか

1年目を過ぎてから、割とそもそもの問題点にたどり着きます
いわゆる投資効果というものに対して、自社側と顧客側に大きな隔たりがありました
安くはない設備なので、顧客においてはかなりの上位層まで稟議が回りますし、それこそ社運を賭けたプロジェクトになります
私はしっかり顧客の意思決定に入り込むためいくつかの顧客の経営層としっかり同じ目標を定め、文書化し、定期的にミーティングなどを通して進捗させることができるようになりました
これで自社やお客様のだれがみても、「倉庫自動化のプロジェクトを進め、判断基準も明確になる」というステージまで持ち込めました

しかしそれでもなかなか受注には至りません
物流全般の目線や、顧客の本当の課題について気づくのが遅いなど、まだまだ適応に時間のかかる感覚がありました
それに、超巨大プロジェクトについて競合に先んじて様々な提案をしていたのにも関わらず、時間経過とともにどんどん無難な技術の採用に傾いていくことに何もできない事態も経験しました

それでも複数の重要な顧客とがっちりタイアップして仕事を進めていたのですが、どうにも会社側が私の仕事の進展に満足しなかったようで少し雰囲気が変わってきました
これは同じフランスの会社だからかわかりませんが3社目と似た状況を感じていました

次なる旅へ

まさか50代になって転職オファーが来るとは想定していませんでしたが、一応1年目を過ぎたらお話しは聞こうと決めていたので、来た最初の1社目の話がまた飛んでもなかったんです
バリバリの競合からのオファー
現職でもあり、次回もほとんど有料部分になるかと思いますがご容赦願います

いずれにせよ、自分のスキルの通用するしない、評価される場所されない場所、シニアとしてやるべきことはかなりはっきりしてきました
もっと早く気づけ、と思いますが今日が今後で一番早い日
次でのさらなる成功を期して、2年の在籍でいろいろ学ばせていただいたEXOTECを去ることになります

学び

ベンチャー企業として様々な刺激的なことがありましたし効率的だと思ったことがいくつもありました

  1. 毎朝のスタンドアップ
    10分程度のチームでの情報シェア 昨日やったこと今日やることを簡潔に各自コメント
    MondayというWebツールを使ってタスク管理を「軽い感じ」でやりました

  2. コミュニケーションの場づくり
    オフィスの一角にコミュニティスペースを作り、カフェやお昼をみんなで一緒にし、そこでの会話をサポートしていました

  3. グローバルスタンドアップ
    ほぼ全社員参加のリモートミーティングが短時間週に2回開催されていました
    どこまで効果的だったのかわかりませんが会社の一体感にかける意気込みを感じるイベントでした

  4. 会議室の壁はガラス
    会議の透明性を重要視し、政治的になることを固く禁じていました

  5. Slack活用
    どんなこともSlackで共有し、今日飲みに行こう、からプロジェクトまでみんながあちこちでおしゃべりしている感覚です

このようにとにもかくにもコミュニケーション命、という感じで、すべてで有効だった気がします
しかしよくないことが発生した場合、急にバタバタします
またフランス人同士のフランス語での会話は基本禁止されているのに、ずっとあった感じでしたね

それもこれも会社の文化、というものかと思いました
軸足を大事に、利き足を広げたつもりが、結構軸足にも新たな武器が備わりました
とてもいろいろなことを学ぶことができ、感謝しています


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