2024.03.12(火)安堵
太客のもとに退職の挨拶に行ってきた。俺が抜けたあとスタッフの体制も変わるので、その説明も兼ねて上司も一緒である。突然の退職に、先方が納得してくださるかーーこの一事に気を取られ、社内の退職交渉を終えてもどこか落ち着かない日が続いていた。
思いのほか、挨拶は終始和やかな雰囲気だった。なんせ先方は、弊社に何人のクリエイターがいて、それぞれ何が得意でどんな欠点があるか熟知している。「会社の経営、相当やばいんじゃないの?」「上司さんからパワハラでも受けたんじゃないの?」ーー上司の前でそんな質問をされたらどう返そうかと悩んでいたのだが、俺の退職報告はすんなりと受け入れられた。
ひとつには、上司が先方と積み上げてきた関係性にだいぶ助けられたと思う。本人が新しい世界に行きたいと言ってるなら仕方ない。我々には止める権利はないーーそんな受け止め方をされた。
ただ、転職先とその業界名を伝えると、やや懐疑的な反応ではあった。社会にどのくらい必要とされている業界か、将来性があるのかという面で疑問符を浮かべた模様。俺はちょっと悔しかったし、自分の説明不足も感じたが、食い下がっての反論はしなかった。俺自身が納得して転職するのだから、何ら問題ない。
太客への挨拶を終え、俺は穏やかな心持ちで帰路に就いた。転職理由のいくつかを吐き出してぶつけたい衝動もこれまであったが、結果として円満退職になったと思う。時に大人気ない感情が先走る俺に冷静なアドバイスをくれた元同僚のKや家族に感謝。
帰宅して、ほっとした。胸の支えが取れたような、肩の荷が降りたような心地がした。平日の夜も、ゆっくり本を読んで過ごしたいと思った。止まっていた創作活動を再開したいと思った。有給消化中にやることの計画を立てようと思った。転職先の入社準備を丁寧に進めたいと思った。
あともうひと取材して原稿書いたら、現職ではお役御免である。
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