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億劫なこと

やらないと…。やった方がいいことはわかっている。いつまでもToDoリストに残っていて、それを目にすること自体が小さなストレスになっている。

私にとってそれは、「胃カメラと大腸カメラ」だった。もう何が見つかってもおかしくない年齢だけど、まだまだ子供たちは小さいからまだ数十年は元気でいたい。仮に癌が私の胃や大腸にあったとしても、早期で見つかれば元気に歳を重ねられる可能性は高くなる。なによりもこの先、進行癌が見つかった場合、後悔したくないという気持ちが強い。「わかっていたのに」が1番嫌だ。検査を受けた方がいいと、私の中の私は言ってくれている。それを無視し続けること(正確には、ちょっと待ってと言い続けること)にもうんざりしてきたのだ。

それならば、やるべきことはただ1つ。
「やってしまうこと」だ。
と思えるまでに1年以上はかかった。

私はついに予約を入れた。予約を入れただけですっきりした。なーんだ。こんなに簡単なことだったか。既に検査を受け終わったかのような爽快感を感じた。ウジウジしていた期間が長すぎたからか、1歩踏み出したという事実がとても気持ち良かった。この勢いに乗って、子宮頸癌や乳癌の検診、脳ドックの予約まで取った。血液検査や腹部エコーなども。自分の体を丁寧に見つめてみようと思った。一通りの検査を受けて自分の状況を把握しよう。結果がどうであっても、自分を受け入れてあげて手術を受けるなり、薬を飲むなり、やるべきことをやってあげようと決めた。

私が受診したクリニックでは、お金は多少かかるが胃と大腸を両方同時にやってくれるとのこと。麻酔もしてもらえる(麻酔といっても正確には全身麻酔ではなく鎮静だが)。
そして当日。大量の下剤を目の前にして、私は検査結果がどうとかよりも、これをいかにして飲み干すか、いや飲み干せるのかということの方に思考が完全にシフトしたため検査を受けること自体の緊張感はほぼ消えていた。
冷やすと飲みやすいと聞いていた下剤はみんなが言うほど不味くはなかったが、けして美味しいとは言えなかった。温かいほうじ茶を急遽用意して下剤と交互に飲む。1人でこの試練を乗り越えるのも退屈と感じ、散財小説ドリキンという方の下剤を飲むYOUTUBEを見ながら飲み干した。ドリキンさん、お世話になりました。

もう後はまな板の上の鯉。麻酔をしてもらい検査はあっという間に終わった。意識は完全になくなったわけではなくてぼんやりとはあったが、全く苦痛ではなかった。検査結果も異常なし。私は異常がなかったことも、もちろん嬉しかったが、自分がなかなか向き合えなかったことに向き合った満足感が得られたことの方が嬉しかった。

子宮頸癌や乳癌など、勢いにのって予約を入れた検査も全て終えた。既知のものはさておき、今の私にはとりあえず治療すべきものはないことがわかった。ToDoリストにはすべてチェックが入った。こんな爽快感はない。

億劫と思っていることをずっと手付かずにしておくと、億劫が増殖する。「やれば終わる」ってなんてシンプルなことなんだろう。すぐに終わらないこともあるかもしれない。でも「やればいつかは終わる」んだからやってしまえばいい。とりあえず取りかかってしまえばいい。「やれば終わる。やれば終わる。」と催眠術のように自分に言い聞かせて、億劫なことにこれからも向き合っていこうと思う。

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