欠けているもの

「優しく、弱々しそうで同情的なイメージは本当は嘘です。人を助けるなんてできない人です。情や愛情、神秘といったものが欠けているのです」

これを聞いたとき、絶句して目が点になった。

母から「優しくない」と言われたとき、なんで?こんなにママのために時間を割いているのに?とものすごく反発したことがあった。かつて付き合っていた人からも「優しくない」と言われたとき、自分でも訳が分からないほど取り乱したことがあった。両方、記憶に刻まれるような出来事だったのだ。

これまで、スピリチュアルなことを勉強してきた。お金と時間を結構使ってきた。あなたならもうできるわよ。と言われてその気になった。セラピストをやってみたが、お客さんはびっくりするほど寄り付かなかった。

優しくて、繊細で、神秘的な力があって。という無意識に持っていた自己イメージを、血が出そうなほど強く握りしめて生きてきたのだった。そのようにあらねばならない。そうでなくてはならない。それ以外は認められない。絶対にありえない。そうでないことは隠さなければならない。

でも、もし、そうでなくてもいいとしたら?

すごく気が楽になった。初めから、欠けているものだから諦めるしかない。ないままの自分で勝負するしかないのだ。もう隠さなくてもいいのだ。もう欠けているものを埋めようとしなくていいのだ。

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