プロ野球独立リーグは揺らぐことなく、未来へと向かう。
新潟県民にとっては思いがけず、この冬、そのチーム名が「全国区」となった。
プロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグの新潟アルビレックスベースボールクラブ(アルビBC)だ。
先月行われた、プロ野球12球団合同トライアウトを通じてNPB復帰を目指し、注目を集めた新庄剛志氏に対し、トライアウト後にオファーを出した事が伝えられた。その後は、新庄氏のSNSでの返答ともとれる反応もあり、入団実現には至っていない。あくまでもNPB復帰を目指したと思われる「元・スタープレイヤー」に対し、それでも「勇敢な勇み足」を承知で真っ向から獲得の意思を示したのだった。
無論、勝算の無い戦いではなかったはずだ。
アルビBCは今季、橋上秀樹監督が10年ぶりに就任している。1990年代、同時代に新庄氏と現役として相見え、2000年には共に阪神タイガースに所属していた。球界屈指の名将の下、同じユニフォームを着た同志として、もう一度、チームメイトとなるべく橋上監督により出されたオファーだったと考えられる。
年が明け、新庄氏は別のステージへと移ったと思われるように多方面での露出がみられ、事実上、野球界から去った。直接のNPB復帰は叶わずとも、野球をする姿を見せられる場所を、新潟のプロ球団は提供するはずだったが、既に互いが方向性を見出している。
立ち上げから15年が経過し、球団数をはじめとする、さまざまなレギュレーションも変化しながら日本の野球界を支える「柱」としてのリーグに成長を遂げてきた。
15年前のリーグ開幕戦、同じアルビBCの試合を県内の球場で観戦した。リーグ開幕セレモニーが、著名なスポーツ選手が招かれるなどして行われるも、雨により試合開始が大幅に遅れた。数時間後に迎えることが出来たプレイボールまで水に浸された土のグラウンドを整備し続けたのは球場スタッフのみならず、球団関係者、選手、監督等、試合に関わる殆どの人々だった。当時、初代アルビBCの監督に就いていた元巨人の後藤孝志も、最後までグラウンド整備を行っていた。地域の為のプロ野球として生まれた独立リーグは、まさに「手作り」から始まったプロリーグと言える。
令和という時代を迎えても、野球界、そしてスポーツ界における存在意義は大きく変わることはないだろう。たとえ一人の元・スタープレイヤーとの縁が無かったとしても、やるべきことは変わらない。NPBを目指すためのプロリーグとして、そして、プロをあきらめる為の場所として。昨年、ドラフト指名確実と言われた右腕投手は名前が呼ばれることはなく、現役を引退した。これまで、多くの選手たちが残したであろう、足跡だ。
無論、地域のためのプロ野球を実践する姿勢も、変わることはない。この冬、とある新潟県内の市民体育館1月の月間スケジュールには、アルビBCによる野球教室が行われることが掲載されている。何れ、このチームからも、そして指導を受けた子供たちの中からも「元・スター選手」が生まれることもあるだろう。(佐藤文孝)
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