「ラ ファミリア」
「やっと全員揃った」
就任2年目のシーズン、キャンプインを前にしたアルベルト・プッチ・オルトネダ監督の言葉だ。
アルビレックス新潟の2021年は、若き至宝と呼ばれるプレーヤーの去就の行方が注目を集め、スタートした。他クラブよりオファーを受けていた本間至恩が、残留を表明したことを受け、指揮官はそう表現している。この短い言葉から、限りなく期待を膨らませてしまうの、は私だけではないだろう。
昨年までの主力だった数名が移籍し、新たな外国人選手の加入も無い。ヘッドコーチに就任すると言われている人物は、今も名前も明かされないままだ。それでも、ファン、サポーターは来るべき新シーズンに、希望を見出していることは間違いない。そう思わせるのは、やはりアルベルト監督の存在が大きいことに他ならない。
「ベースとなる選手は残る」そのコメントが聞かれたのは、昨シーズン終了後だ。ダイレクトに、チームの骨格となるプレーヤーの残留を意味するものと捉えられるも、渡邊新太や鄭大世、新井直人等といったレギュラーであり、アルビレックスの「顔」だった選手がチームを去っている。それでも、本間の残留が決まったこともあり、アルベルト監督が標榜するスタイルを体現できる選手が残ったことを、自らの言葉で発信した。
特に、ゴールキーパーの顔触れが今季のストロングポイントの一つだ。昨年、主にゴールマウスを守った小島亨介、藤田和輝の二人が、今シーズンも最後尾に陣取ることが心強い。ともに、セービング能力は勿論のこと、フィールド全体をパスでつなぐアルベルトサッカーの「扇の要」の役割を担えるキープレーヤーだ。期待の選手が多い中で、切磋琢磨するであろう若き両ゴールキーパーの伸びしろこそ、今季の新潟の浮沈を左右する気がしてならない。
2017年にトップカテゴリーからの降格が決まり、J2での戦いが今年で4シーズン目となる。過去3年間、ともすればクラブの進むべき方向を、見出せていないように感じてしまうサポーターも少なくないかもしれない。他の「名門」と呼ばれるクラブでも、抜け出せないでいるJ2という過酷なリーグにおいて、今シーズンも決して楽ではない戦いをくぐり抜けることになるだろう。それでも、アルベルト監督に率いられるチームは高いポテンシャルを秘めているような予感が止まない。
今季のJリーグにおいて、ニイガタのオレンジ色こそ、もっとも華やかさを感じられるシーズンとなる。「ラ・ファミリア」。その言葉通りに選手、スタッフ、サポーターは家族であり続け、一丸となって、新しいシーズンに挑んでいく。(佐藤文孝)