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辰のご加護がありますように

新年の朝を迎えた。
息子たちは、年末に手に入れたおもちゃで遊ぶためにとても早起きだ。
妻は年末に酒を浴びるように飲み、全く起きる気配がない。
私が朝食を作り始めると、息子はおもちゃを持って寝室に入っていった。

 * * *

「うわあぁぁぁ!!」

寝室から妻の叫び声が聞こえた。

「コウキ!!!!!」

続けて、妻が息子を怒鳴りつける声が聞こえた。
過去に、息子は寝ている妻を起こそうとして、飛び乗ったことがある。
今日も息子が妻に飛び乗って、怒られたのかもしれない。
いつものことだ、と気にせず朝食を作っていた。

「フミーー!助けてーー!!」

突然、妻から大声で助けを求められた。
なんだ、なんだ?!
すぐに寝室に行くと、妻がベッドに横たわり、隣で息子が看病をするように正座で座っていた。
私は寝ている妻に近づいて声をかけた。

「どうした?」

すると妻は「これを取ってくれない?」と、妻の頭の横に置かれたラジコンカーを指差した。
私がラジコンカーを拾い上げると、妻は「痛い!痛い!痛い!!」と叫んだ。
よく見ると、ラジコンカーの車輪に妻の髪の毛が巻き込まれている。

「これを外して!!」

私はラジコンカーと絡みついた髪の毛をほどこうとするが、なかなか解けない。
髪を引っ張ったり、回したりしてみると、さらに絡んでしまった。

「これ、もう髪を切っていい?」

私が妻に尋ねると「それは駄目!前髪を巻き込んでるから、切ると禿げちゃう!!切らないで!!」と、髪を切ったら殺されるかもしれないと思うほどの迫力で凄まれた。
確かに新年早々、河童みたいな髪型にするのは忍びない。

「いっそのこと、絡みついている車を髪飾りとして活用してはどうだろうか?」

「なんで頭にラジコンカー乗っけて飾らないといけないのよ!」

妻がキレ始めたので、私は大人しく作業に取り掛かった。
ラジコンカーの車輪を取り外そうとしたが、固くて外れない。
仕方なく、髪の毛を一本一本丁寧に外す作業に取り掛かった。

 〜15分後〜

「取れた!!」

私は妻の頭からラジコンカーを取り外すことに成功した。
成功率数%の難しい手術を成功させた天才外科医のような気分だ。
妻は髪の毛という鎖から開放された瞬間、すぐに鏡台へと走った。

「えっ… うわぁ…。はぁ………」

遠くから、ため息のように漏れ出す妻の声が聞こえてくる。
しばらくすると、妻は手鏡を持って戻ってきた。
前髪から上部にかけての髪の毛が縮れ、パーマをかけたようにフワッと広がっている。

「これ、どうすればいいと思う?」

妻に何と言ってフォローすればいいのか、コメントに困ってしまう。

「そんなに不自然じゃないよ。ある意味、斬新で格好いいよ」

「これのどこが格好いいのよ!!」

私なりに言葉を選んだつもりが、火に油を注いでしまったようだ。
いや、もはや何を言っても結果は同じだろう。
私にはもう、見守ることしか出来なかった。

新年に生み出された斬新なヘアスタイル。
注意深く観察すると、その縮れた部分は、まるでドラゴンの吐く炎に焼かれたようだ。
その髪型は辰年にちなんで、ドラゴンの祝福を受けたようにも見える。

新しいヘアスタイルが、幸多い1年にしてくれることを願っている。

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高宮フミ
ギブミーマネー!ギブミーチョコレート!!