咽頭全摘出後8か月の障がい状況2

こんばんは。市井の咽頭全適者です。
今回術後8か月を経たわたしの障がい状況について紹介します。

まとめ:発声できない以外にも、痛みによる行動制約など不自由があります

咽頭全摘出手術によって、声を失うことのほかにも健常者にはない日常の不便があります。未だ「ただの話せない人」になれない、術後8か月の日常を紹介します。前回につづいて1日を時系列でたどります。今回は朝食からです。

◆朝食
咽頭全摘出手術の主戦場はズバリのどですから、影響大なのが飲食です。手術後はもちろん飲食禁止期間があり、わたしの場合術後2週間程で飲み下しの機能検査を行い、OK確認後にリハビリを行ってきました。
退院時既に飲食物の制限はなかったのですが、それは治療面で禁止されているものがないだけで、食べるのが困難なものはあります。
よく「食べられないものあるの?」と聞かれますが、そこには健常者に聞くそのニュアンス以外に「食べてはいけないものあるのか?」が含まれており、毎度お応えするのが面倒な質問の一つになっています。「食べてはいけないものはありませんが、食べ難いものはたくさんあります。」が答えです。
構造的なことを冷静に考えれば当たり前なのですが、口と肺がつながっていないということは、外気を口に取り入れられないことを示します。つまり空気を食べられません。手術前には意識したことなど無かったのですが、普段わたしたちは思っているよりも空気を食べているんです。
具体的な例では熱いものを食べるとき。無意識に空気を口に取り込んで、火傷しない温度に調整をしているんです。これが出来なくなったので、熱いものは口に入れられず、食事には冷水の用意が欠かせません。
さらに温かいものを冷ますのも、口で「フーフー」出来ないので困ります。
味の面でも空気を食べられないため変化があり、顕著なのがワサビなどです。これもあのツーンとした刺激を空気で希釈出来なくなるので、強烈なインパクトになってしまいます。
朝食に限ったことではありませんが、食事のメニュー全般に関してこのような影響があり、食べてはいけないことはないのですが、もの凄く食べ難いものが増えてしまいました。
前置きが長くなりましたが、いよいよ実食です。
ごはん党のわたしでしたが、術後はパン食も増えました。食べ易いからです。口の動きも以前より悪く、大きく口を開けるとあごが痛いので、小さいもの、柔らかいものを出してもらっています。
そんなメニューですが、以前のように早食いはできません。
本当によく噛んでペースト状にしないと、飲み下しにくいためです。また熱いものでなくても、飲み下すために麦茶などを飲みながら食事することが多く、これまた時間がかかります。
退院直後は小一時間かかっていましたが、今ではメニューのセレクトもこなれてきたおかげもあって30分くらいで済ませられます。
また以前はよく冷凍うどんをレンチンして釜玉うどん風にして食べていましたが、麺も肺ですすれなくなったため、熱いのとあいまって食べなくなりました。またどんぶり飯のように口に掻っ込むのも、腕を高く上げると痛いので出来なくなりました。
とは言え、食事に関してはメニューに少し気は使うものの、決定的に食べられない物もないので、少々お時間とお水のお代わりをいただきますが、普通の方と同じようにできる。というのがまとめかと思います。
声も失うような大手術をしたので、食べられない物があるとよく誤解されるのですがそんなことはなく、おおよそ子どもやお年寄りのような感覚で扱ってもらえればまったく問題ありません。

◆食事につて
朝食だけで約1500字も使ってしまったので、食事に触れてお終いにします。
わたしが街中のクリニックから紹介されていわゆる総合病院へ検査に行ったのは2021年4月。検査して即日入院になり、同時に鼻から胃まで直径3㎜ほどのチューブを導入され、生まれて初めて経口外で栄養を摂るようになりました。
そこで初めて感じたのが、食べることの良さでした。
有難いとか大切さとか、食事に対して感謝するような表現は様々思い浮かびますが、あえてシンプルに「良さ」です。
何よりおいしいし、楽しいし、同時に栄養もエネルギーも摂れる。もちろんどんな生物も何かしらで生きる源を摂取するわけで、わたしたちだけの専売特許ではないのですが、それでも特別に良い作業だと実感するようになりました。わたしの場合「それ」ができなくなってからでしたが。
入院して水すら飲んではダメと言われたのが4月中旬で、それ以降手術をして最初に水を飲んだのが5月の初旬。僅かひと月未満ではありますが、鼻から栄養と水分を摂取していました。その間、砂漠をさまようような渇きに襲われている訳でもないのに、どれほど水が飲みたくなったことか。
手術後、口から再建したのどの小腸を通じて胃に栄養と水分を届けたとき、その瞬間は未だ食べることも不自由で不安でしたが、何とか早く昔みたいに楽しくおいしく飲み食いしたいと渇望したものです。
呼気が鼻を経由しないために食べ物の香りを感じ難くなり、手術で少し味覚も失われたので100%以前のようには食事を楽しめませんが、食べることの良さを知った分でそれを補って、わたしなりに食事を楽しんで過ごしていきたいと思っています。

今回は以上です。
次回は在宅勤務からの日常の異状を報告します。
総じて申しますと、「話せない不便に加えて痛みと付き合い、3割増しくらいの時間をかけて日常生活を送っている」といったところです。
精読ありがとうございました。

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