映画「ビフォア•サンライズ」から始まる3部作。これ以上の恋愛映画を、他に知らない
美しいウィーンの町で男女が互いにひかれあい出会い恋に落ちていく瞬間を、2人のとりとめのない会話とあてもない旅と共に描く、「ビフォア・サンライズ」(1995公開)。
2作目は9年後、パリで再会しそれぞれの人生それぞれの生きた9年間を確かめ合う「ビフォア・サンセット」(2004年公開)。
そしてさらに9年後、家族・夫婦の現実に向き合う3作目「ビフォア・ミッドナイト」(2013年公開)。この3部作以上の恋愛映画は他にはあるのだろうか。
1作目「ビフォアサンライズ 恋人までの距離」は列車で偶然出会った20代の男女(ジェシーとセリーヌ)の一日だけの恋を、2人の会話でストーリー進行する手法で、微妙な感情を表現している90年代の代表するロマンスムービー。
出会ったばかりの2人の空気感、次から次へととまらない会話。相手を知りたくて、自分を知ってほしくて・・普通の会話こそがとても愛おしい。
若くて美しい男女の光景を美しいウィーンの街の景色の中でくりひろげられる。人を好きになったり、距離が近づいていく時の瞬間の美しさや高揚感が全部詰まっている。誰もがおそらく身に覚えのる「好きな人との初デート」を思い出すんじゃないだろうか。私にとって、まるで、「宝物」のような作品だ。
9年後に30代になった2人がパリでほんの数時間を過ごす2作目「ビフォア・サンセット」は、同じように会話で進行するストーリー。9年間の時間と心の距離を埋めるかのように、だんだんと2人の会話が本質に近づいていくのが面白い。また、前作と違って随所随所に、相手に対する好意が言い含められていたり、相手の気持ちを探っていったりと、大人になり様々な経験をしてきたからこその、かけひきや、嘘、もあり1作目よりも成熟した2人が垣間見れる。「今もまだあなたが好き」この一言が、主人公の2人の口からは決して出てこないのに、こちらには、ひしひしと伝わってきてしまう。そして、ニーナ・シモンの音楽とともに、なんともいえない多幸感にあふれたラストシーン。パリの美しくロマンチックな街なみと、セリーヌのかわいらしいアパルトマンの雰囲気も最高だ。
さらに9年後の3作目「ビフォア・ミッドナイト」で1作目と2作目を経た後の、40代となった2人がこれもまた激しい(!?)会話(というより討論)からスタートする。3作目は「恋」よりも、「愛」の話と言ってもいいかもしれない。2人が向き合うべき課題も、よりリアルになっている。3作を通して観ているからこその、ラストシーンの秀逸さ。舞台となっている夏のギリシャがバカンス気分を盛り上げてくれる。
これらの3作は、20代、30代、40代と20年を描いているからこそ、きっと観る人のライフステージや年齢などによって、共感できる部分が違うところも面白い。(私は、パリの街を歩きながら、言葉の駆け引きをしている2作目が好き)
数ある恋愛映画の中でも、この3部作以上の作品にまだ私は出会っていない。20年に渡り、主演の男女を演じている2人、イーサン・ホーク(ジェシー)と、ジュリー・テルピー(セリーヌ)の変化を観るだけでも価値があるのかも。2人のキャラクターが歳を追うごとに好きになるのだ。
次は、50代になった2人が、観られる日が来るのだろうか・・。