母さんと手洗い
暑い日に手を洗うと、母さんを思い出す。
私は祖父母と両親と姉二人の7人家族で育った。
共働きだったので、子育ては祖父母がしてくれたようなものだった。
そんな中でも母への愛着は人並みにはあったし、むしろマザコンというくらいにはベッタリだった。
父がヤバい人だったのも影響してるけど。
母も、末っ子の男なので、手にかけてぼくを可愛がってくれた。
姉はよく
「末っ子だから、母さんもちょっと贔屓してるよね」
と指摘して
母は笑顔で
「そんなことないよー」
っていうけど、やっぱりぼくのことがかわいいみたいではある。
念のためいっておくと、母は姉に対してネグレクトはしなかったし、ぼくを贔屓してるといっても、ほんと誤差のようなレベルだ。
そんな母との共通点は、怠惰であることとソフトテニスをしていて前衛であること。
まあ、一応父親もソフトテニスをしていたけど、後衛だったしノーカウントで。
地域柄ソフトテニスが盛んで、姉もしていたし、ぼくも小学校5年からやっていた。
やるからには強くなりたい、勝ちたいと思って、たまに母と練習したりもした。
母はものすごく強いわけではないけど、現役時代に地区で上位になったり、県大会に行ってもいたのでそこそこうまい。
教えてくれることも、応援に来てくれることも多かった。
早朝に起きて、弁当を作ってくれたり、送迎も積極的にしてくれた。
本当に感謝している。
中学最後の地区予選、負けたら終わりの大会。
地区予選は6月で少し蒸し暑い日で、母も応援にきていた。
それなりに強かったぼくは通過点だと思っていたけど、勝たなきゃいけないことにプレッシャーを感じていて、プレーが全体的に固かった。
一応、地区予選を通過したけど、そのつぎの大会で組合せがよくなるには、勝ち進まなければならなかった。
対戦相手は負けたことはないけど、勝てるかどうかわからない相手で、待機中はすごくおどおどしていたと思う。
というかおどおどしてた。
そんなとき、母はリフレッシュするために、着替えたり、飲み物をすすめてくれた。
さらに、「手を洗ったら?」といってくれ、ぼくは素直に応じた。
水道水はとても冷たく、手汗のひどいぼくにとって最適なリフレッシュになった。
その効果もあって、次の試合では少し冷静さを取り戻して、勝つことができた。
その後は負けてしまったけど、勝ち進んだ大会で好成績を残して、次の大会にすすむことができた。
好成績を残したお陰で、高校の推薦も勝ち取ったし、ぼくの人生は面白い方向に向かったと思う。
あれから10年以上たったけど、今でも手汗がひどかったり、暑くてリフレッシュしたいときは手を洗う。
そのときに優しい母も思い出してしまう。
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