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 「ラッキー」のアルゴリズム 〜星占いの結果はどうのようにバラバラなのか~

展示の様子

7つの星占いサイトで毎日更新されるラッキーカラーを、2021年11月〜2022年1月までの3ヶ月ぶん・12星座ぶんを出力し比較した。横軸が日付(92日間)× 縦軸が12星座 × 7サイトとなっている。

これは何の研究であるか

星占い(西洋占星術)とは、10個の天体の12星座(黄道十二宮)における配置を元にしている。この図をホロスコープと言う。

ホロスコープ例 2021年11月1日の配置(※実際はもっと厳密に配置を計算する)

これは天体の公転周期から、計算によって求めることができる。基点とする場所や時間などの条件が同じであれば、同じホロスコープになる。

しかし星座や天体や天体同士を結んだ角度などに、神話やイメージに基づいた記号的な意味づけがされている。
その解釈に揺らぎがあり、よって星占いはその読み取り手ごとにズレが生じる。

星占いの結果の違いや、逆に共通する部分を見出すべく、今回は一目でわかる「色」に着目した。

方法について

7つのサイト(下記リスト参照)から、PythonのWebスクレイピングでデータを取得し、CSV化したものをProcessingでビジュアル化した。

7つのサイトのうち4つ(ELLE・goo・ageUN・BIGLOBE)は同じURLで毎日ページが更新される運用になっている。スクレイピングが自動化できていなかったため、データの取得を忘れてしまった日が4日ほどあり、そこは欠損になってしまった。

何か規則性がありそう

下4つの白い帯のように見える部分はデータの欠損によるもの

サイトによっては何かしらの周期性が見受けられる。これはおそらく、各サイトの星占い記事の書き手が独自に設定したアルゴリズムの元で、ラッキカラーを判断しているからだと思われる。

そのアルゴリズムとしてわかりやすいのは、月の配置を基準にしているものだ。

星占いで使用する10個の天体は月・太陽・水星・金星・火星・木星・土星・天王星・海王星・冥王星である。そのうち月が最も地球に近く、約3日で星座間を移動する。(参考:https://moon-cycle.net/moon_calendar.html

月が位置している星座を@nifty・Woman.excite・YAHOO!JAPANで抜き出すと、下図のようになる。

最左の11月1日では乙女座に月があり、2日には天秤座に移動した

色に一定の統一性が見受けられることから、YAHOO!JAPANは月の配置を重視しているのではないかと推測できる。

星座ごとで並べてみる

横軸が日付(1/1〜1/31)、縦軸がサイト(7サイト)

星座によって「この色が多い」のような特徴が出るのではないかと考え、星座ごとにまとめて並べてみた。(データに欠損のない2022年1月分のみで抽出)

しかし規則性は無くなり、逆に見分けがつきにくくなった。
各自のアルゴリズムに「この星座はこうである」というような、共通の前提は無いのだということが読み取れる。

カラーバリエーションを見てみる

これは各サイトの頻度表だ。出現頻度が高いほど、色名の横にあるバーが長い。

色のバリエーションは30前後で固定されているサイトもあれば、たびたび色が新たに追加されるサイトもある。
しかし「1回しか出てこない」という色はないので、やはり何かしらの規則に基づいて当てはめているのだと思われる。

対象の3ヶ月間の、各サイトにおける色数は下記の通り。

  • @nifty:61色

  • Woman.excite:33色

  • YAHOO!JAPAN:32色

  • ELLE:36色

  • goo:36色

  • ageUN:113色

  • BIGLOBE:106色

多くのサイトに登場する色として、黒・白・赤・青・黄色などの原色ほかに、シルバー・ゴールド。エメラルド・ターコイズなどもある。
これらは、天体や星座に鉱石のイメージを重ねることがあるためではないかという推測もできる。

ちなみにELLEとgooは占いの提供元の会社が同じであるため、カラーバリエーションは同じだ。おそらく同じルールを元にしている思われるが、「今日のラッキーカラー」として提示する色は異なっている。

何がわかったか

今回の研究の目的は、各サイトの占いの仕組みを解き明かすことではない。
あくまで「星占いが一定のルールに基づいている」ということを可視化する試みである。

結果として「これは何かあるな」と感じるグラフィックが出力された。

下2つのageUNとBIGLOBEも規則性がパッと見ではわからないものの、他の規則性のある並びをみると、「何か規則があるのでは」と探してしまう。

この「何かある」という感覚は、占いの起源にも通じるのではないだろうか。
古代の人々は、形が毎日変わる月や、少しずつ位置が動く星を見て「何か意味があるのでは」と思い、その意味を考えただろう。月に関する神話や言い伝えは、各国に存在する。

「今日の占い」の記事は、たいていの人が自分の星座の内容だけを読み、そしてすぐに忘れてしまう。
しかしその小さな断片を集めて並べたら、「これは何かあるな」という、占いの根源に立ち返るような感覚を味わうものになった。

わからないことは、わからない

たくさんのサイトからデータを集めて、多数決的に「正しいラッキーカラー」を導くプログラムも作ることもできるかもしれない。

しかし、星占いに「正解」は無い。正解はわからないのだ。正解がわからないから、ヒントが欲しくて人は占いをするのだと思う。

私の今日の運勢が、遠く離れた天体の運行に影響を受けるはずがない。
でも、私を取り巻く全ての事柄は、他の事柄と複雑に絡まりながらつながっている。
そう考えると、星が動けば明日の私の出来事は変わるのかもしれない。

しかし、それは誰にもわからない。


※本稿は令和3年度 武蔵野美術大学通信教育課程デザイン情報学科デザインシステムコースの卒業制作を解説した記事です


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