【LuckyFes②-2】LuckyFesはどんな音楽フェスだったのか?【協賛企業研究編】
今回は、7/23(土)・7/24(日)に茨城県ひたちなか市の国営ひたち海浜公園にて開催された「LuckyFM Green Festival(通称:LuckyFes(ラッキーフェス)」の協賛企業や関連企業を紹介します。
LuckyFes開催概要より
LuckyFes公式ウェブサイトの開催概要を見た時に、まず感じたのが協賛企業の多さだった。
音楽雑誌を発行する会社(ロッキング・オン・グループ、株式会社FACTなど)が主催するフェスは、フェスの開催が企業としての一大事業であることからか、協賛企業はそこまで多くない。大体は協賛に飲料系の企業やコンビニ等の名前が並び、後援には自治体、協力に開催自治体のJリーグサッカーチームや鉄道会社、チケット販売会社などの名前が挙がるといった印象がある。
地元ラジオ局がフェスを主催し、協賛に地元の企業や飲食店等の名前がたくさん並ぶ…という意味では、栃木県真岡市の井頭公園運動広場で実施されているRADIO BERRY(FM栃木)のベリテンライブと似た印象がある。ベリテンライブは栃木の音楽好きはもちろん、県外の音楽好きにも好評な伝統のある野外音楽フェスである。ベリテンライブのアーティストブッキング力は、規模は異なるもののROCK IN JAPAN FESTIVAL(以下「ロッキン」) に近いものがある。
LuckyFesの協賛企業にはある特徴がある。まず、フェスの立ち上げ発表2週間で50名を超える賛同者が集まったこと、そしてこの賛同者達と賛同者の運営する企業がフェスの運営の土台になっていることである。
その賛同者達のメンツの「強さ」に関しては、LuckyFes総合プロデューサー堀義人氏の財界人としての強さが表れていると言っても過言ではない。流石は日本版ダボス会議「G1サミット」を立ち上げた人物である。
次に、提供の程度に応じて協賛企業にランクがあること、そしていくつかのステージやプログラムに「○○(※企業名) presents」という冠がついているという特徴がある。
この特徴はフェスというよりもむしろオリンピックやJリーグなど、スポーツにおけるスポンサーシップ戦略を活用していることの表れなのではないだろうか。堀氏自体がBリーグバスケチーム茨城ロボッツのオーナーであること、そして特別協力に茨城県が誇るサッカーチームである鹿島アントラーズと水戸ホーリーホックの名前があるだけはある。音楽フェスにスポーツの概念を取り入れたのだ。
ここで、abemaTVとグロービス以外の企業を紹介したい。
①レバレジーズ
IT・医療分野における人材・転職事業などを行う2005年創業のベンチャー企業である。「看護のお仕事」「ナースときどき女子」「レバテック」「きらケア」「ハタラクティブ」などを運営する。
「Great Place to Work®」という、世界約60カ国で『働きがい』に関する調査・分析を行う活動を実施している専門機関における「働きがいのある会社」ランキングにおいて、2022年版日本における「働きがいのある会社」ランキングベスト100大規模部門(1000人以上)において第3位、「働きがいのある会社」女性ランキング及び若手ランキングベスト100大規模部門(1000人以上)においては第1位を獲得している。
「レバレジーズ」と言えば、なんと言ってもLuckyFMの看板人気番組、オズワルドがパーソナリティを務める「レバレジーズ presents MUSIC COUNTDOWN 10&10」のスポンサー。
LuckyFesで一番大きなステージ、オズワルドとLuckyFMアナウンサー大島千穂氏・菊地真衣氏が総合司会を務めたWATER STAGEにレバレジーズの名前を冠していたのは「MUSIC COUNTDOWN 10&10」のスポンサーだからであろう。
②アダストリア
アダストリアは「niko and…」や「studio CLIP」などのファッションブランドを運営する企業である。数あるブランドの中でも「niko and…」は特に有名で、街中でそのロゴの入ったファッショングッズを身に着けた人々を見たことがある方はたくさんいるはずだ。
その歴史は、1953年、茨城県水戸市にて「株式会社福田屋洋服店」を設立、紳士服小売業を開始したことから始まる。
アダストリアは2016年より茨城ロボッツとスポンサー契約を結び、2017年からはメインスポンサーを務めている。また、2019年より水戸ホーリーホックのオフィシャルパートナーを務めている。
なお、アダストリアは2019年にオープンした水戸市の東町運動公園体育館のネーミングライツ権を2029年3月末までの10年間に渡り取得。体育館の愛称は「アダストリアみとアリーナ」となった。茨城ロボッツのホームアリーナとしても活用されている。
LuckyFesでは、アダストリアがオフィシャルグッズを担当。「niko and…」全面プロデュースによるオシャレなデザインのオフィシャルグッズは大変人気があったようで、売り切れる商品も多数出たほどだ。
なお、オフィシャルグッズに関しては、アダストリア協力のもと後日再販が決定した。現地で欲しかったグッズが手に入らなかった参加者には朗報だっただろう。
③ケーズデンキ
「新製品が安い♪」でおなじみのケーズデンキの創業の地も水戸市である。1947年に創業者加藤馨が、水戸市元台町に加藤電機商会を設立したことがケーズデンキの始まりである。そして、水戸ホーリーホックのトップパートナー企業であり、水戸ホーリーホックのホームスタジアムである水戸市立競技場の愛称は「ケーズデンキスタジアム水戸」である。ネーミングライツ権は2025年3月31日まで取得している。
LUCKY DININGに出店していた「ペルー料理わんかよ」はケーズデンキスタジアム水戸の最寄り駅、JR常磐線「赤塚駅」より徒歩5分の歴史ある名店である。「わんかよ」のペルー料理は水戸ホーリーホックの試合の時にケーズデンキスタジアムで味わうことができる。
ケーズデンキの名前が冠されたGREEN STAGEには7/23(土)にゴールデンボンバーが登場。樽美酒研二がウー〇ーイーツ配達員のコスプレでステージを盛り上げた。なお、LuckyFes公式のゴールデンボンバーのクイックレポートの1枚目の写真のパフォーマンスの際、「ケー〇デンキ」と発言、「怒られないかな?」と多少心配していた。そんなところも含めて実にゴールデンボンバーらしいパフォーマンスだった。
そして、水戸ホーリーホックとの関係性の面でも重要な企業が、次に紹介する「JX金属」である。
④JX金属
JX金属は1905年に久原房之助が日立の地に鉱山を開業したことをグループの創業と位置付けている。1912年に久原鉱業を設立。なお、久原鉱業所日立鉱山付属の修理工場として発足し、のちに独立する会社があの「日立製作所」である。
久原鉱業第2代社長である鮎川義介は久原鉱業を日本産業に改称。そして、日立製作所、日産自動車など名だたる企業を擁する「日産コンツェルン」を築き上げた人物として高校日本史の教科書(山川出版社)にも記載のある人物である。
現在のJX金属はENEOSホールディングス株式会社の金属事業を担う会社であり、非鉄金属大手として知られている。特に銅の存在感の大きさは非鉄金属企業の中でも無視できないレベルとのことである。
そんなJX金属は現在、水戸ホーリーホックのプラチナパートナーである。
JX金属が茨城県の県央・県北地域に進出するのには、純粋に創業の地への貢献の思いがある。しかし、企業としての狙いはそれだけではない。
この記事が出た頃、水戸ホーリーホックは県北6市町へのホームタウンの拡大を目指していた(※現在は無事Jリーグからの承認が下り、県北6市町は正式に水戸ホーリーホックのホームタウンとなった)。従来の県央地域に加え県北地域をホームタウンに加えると、ホームタウン人口は100万人になる。チームの永続とJ1への昇格を目指す水戸ホーリーホックとしては県央・県北地域に進出するJX金属の力は是非とも借りたいところであっただろう。
ではJX金属側の狙いは何か、日立市とひたちなか市への工場の新設が決まっている中での企業の知名度の向上である。
茨城県は大井川知事による県政のもと、「教育改革」と「企業誘致」に力を入れている。その「企業誘致」が功を奏し、ひたちなか市への新工場設立を呼び込んだとも言える。
企業としての知名度の向上が狙いであるため、水戸をはじめとして、県央・県北の各地域はJX金属のPR大使である「カッパーくん(※銅の妖精、モチーフは銅+カッパ)」祭り状態である。特に一時期の水戸駅は「カッパーくん」による広告ジャックとも言えるほど、駅構内や改札の外はたくさんの「カッパーくん」の広告で染まっていた。
カッパーくんは水戸ホーリーホックのマスコットキャラクター「ホーリーくん」と大の仲良しであり、試合の日のケーズデンキスタジアムの外では「ホーリーくん×カッパーくん フォトセッションイベント」がたまに開催される。カッパーくんはホーリーホックサポーターに大人気であり、今やJX金属はホーリーホックには欠かせない企業としてファンに認知されている。
県央・県北地域への知名度向上、優秀な人材の確保のため特に若者世代に向けて知名度を向上させたいJX金属は県央・県北地域でのフェスやイベントに積極的に協賛している。LuckyFesもその一つと言えるが、規模に関係なくたくさんのイベントを協賛という形で応援するJX金属の姿勢は素晴らしいと個人的には感じている。カッパーくんはとにかく可愛いし面白い。カッパーくんを見るととても癒される。
JX金属がLuckyFesで協賛したのは、各日程最後のプログラムである豪華花火「JX金属 presents "Lucky Music Star Light Show"」である。どのくらい豪華なのかというと、茨城でも有名な花火大会である「土浦全国花火競技大会」が150分間で20000発、LuckyFesの花火が10分間で1000発なので短時間に打ち上げられる花火としては相当豪華と言える。クラシック音楽をベースにアレンジされたトラックに、さらにヴァイオリンの生演奏が加わった音楽をBGMに打ち上げられる花火は鳥肌ものであった。
なお、花火師は創業明治8年、内閣総理大臣賞など数々の大きな賞を受賞している水戸市の野村花火工業株式会社の野村陽⼀氏を起用。野村氏による花火の美しさは茨城県ではかなり有名で、この最後の10分間の花火を見るためだけにLuckyFesに参加した方もいるらしいという噂が出るほどだ。
金属の炎色反応を利用する花火に対し、金属の企業であるJX金属が協賛しているというのは何とも粋である。
LuckyFesにはJX金属の協賛ブースがあり、そこにはもちろんカッパーくんもいた。協賛ブースでは冷感タオルなどのノベルティグッズを無料で配布していた。
ここまでのまとめ:「LuckyFesはどんな音楽フェスだったのか?」
【LuckyFes②-1】【LuckyFes②-2】の記事でおそらく理解していただけるだろうこと…それは「LuckyFesは茨城財界やスポーツ界、特に水戸や県北地域ゆかりの企業の力を結集した総力戦型音楽フェス」だということである。
協賛企業同士が繋がり連携し、大きな「祭り」を作り上げる。それは、Jリーグなどでしばしば話題になる「パートナーシップ」の考え方そのものではないだろうか。
https://www.jleague.jp/img/aboutj/document/jnews-plus/011/vol011.pdf
添付した資料では大宮アルディージャの例が紹介されている。協賛企業同士を結び付ける組織を形成、「地域貢献」「社会貢献」などの活動をチームと協賛企業が協力して行うことで、チーム-協賛企業-地域でWIN-WIN-WINの関係を目指し、共に発展を遂げていこうという考え方、それが「パートナーシップ」である。チーム-協賛企業-地域の関係をLuckyFesに置き換えると、LuckyFes・LuckyFM-協賛企業-茨城県・開催地・フェス参加者、と言ったところか。
音楽フェス開催のノウハウが一切ない中で、堀氏の財界人としてのパワーをフルで発揮し開催したフェスなのだから、ロッキン等のような音楽関係者ががっつり主催するフェスと全く性質が異なるのは当然のことである。従来のロッキンを愛する方々にはLuckyFesは少々物足りなかった部分もあっただろうし、ロッキンとのやり方の違いに不満を感じた方もいるだろう。しかし、堀氏は久しぶりに訪れた水戸の衰退した街並みを見て「水戸ど真ん中再生プロジェクト」を立ち上げ自ら座長を務めるほど水戸市や茨城県を愛し、そのポテンシャルを信じて活動している人物だ。茨城企業の力を結集し、その底力を見せた、そして従来の音楽フェスにはなかった新しい価値観をもたらしたフェスと言えるのではないだろうか。LuckyFesの今後のさらなる発展に大いに期待したい。
いかがでしたでしょうか?正直、最後のまとめを書くだけなら、数行で要約可能です。これだけの文字数を割く必要はないかもしれない、何と言ってもここまで読んでいただいた方を疲れさせてしまったかもしれない、その点は申し訳なく思っています。
しかしながら文字数を割いたのは、自身のこのメディアが地方創生をひとつのテーマに掲げているからです。とことん調べ、自分自身で歩き回って取材することにより、今後人口減少していく日本の地方創生のあり方を考察したい意図があり、各企業に関しても筆者なりのリスペクトを込めて紹介致しました。ここまでお読みいただきありがとうございました!
次回【LuckyFes②-3】は【音楽フェスとしてのLuckyFes・当日運営編】となります。
<LuckyFesを追ったマガジンの発行を目指しています!>
7/23(土)・7/24(日)に茨城県ひたちなか市の国営ひたち海浜公園にて開催された「LuckyFM Green Festival(通称:LuckyFes(ラッキーフェス)」。
2022年冬を目標に、LuckyFesや周辺地域の地方創生などの内容にも踏み込んだマガジンを発行予定です。発行日などは決まり次第、noteにて告知いたします!