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『さみしい夜のページをめくれ』刊行のおしらせ。

とってもうれしい新刊のおしらせです。

タイトルは『さみしい夜のページをめくれ』。店頭に並びはじめるのは3月19日(水)くらいからでしょうか。地域によって異なるものの、その週のうちには全国の書店さんに行き渡るのではないかと思います。タイトルや装幀からもわかるように、『さみしい夜にはペンを持て』の続編です。

『さみしい夜のページをめくれ』古賀史健作/ならの絵

■ どんな本なのか


前作は「書くこと」をテーマにした本でした。なかでも「日記を書くこと」をおすすめするお話でした。ならば、というわけではないものの、本作は「読むこと」を、そして「本を読むこと」をテーマにつくっています。前作と同様、小中学生の読者に向けて、うみのなか中学校に通うタコジローを主人公として。

ここで「なーんだ」と、がっかりした方もいるかもしれません。

だって、中学生に向けて「本を読むこと」をおすすめする本なんていうと、いかにもつまらないお説教を想像しません? ぼくはします。大学のえらい先生とか、蔵書数万冊を誇りにする知の巨人とか、あるいは和服姿の文豪さんとかが「きみたち、もっと本を読みたまえ!」とぷんぷん怒ってる姿というか。あるいは逆に、なのかな。最近のビジネスシーンでは「本ほどコスパのよい情報源はない」みたいな話もときどき目にします。

ぼく個人としては、本がそこまでコスパに優れたなにかだとは思わないし、そもそも仕事に役立てようと手を伸ばしたこともありません。また、たいした読書家というわけではなく、学生時代からため込んでいた本の半分以上も十年ほど前の引越を機にごっそり処分しました。その意味で言うと、愛書家でもないのでしょう。

もちろん、本は好きです。大好きです。「あの本に救われた」みたいな経験も、それなりに持っています。そもそも本が好きじゃなかったら、いまの仕事に就いていないでしょう。こんなに長く、続けていないでしょう。

でも、それだからといって、人に「読め!」とは言いたくないんですよね。だれにも押しつけたくないんです、読書はとくに。


■ なぜ「本を読むこと」を書いたのか


じゃあ、どうして「本を読むこと」の本をつくったのか。

嘘偽りのないただの事実としてぼく、どんなテーマパークやレジャー施設に行くよりも、書店に行ったときのほうがワクワクするんですよ。お店に足を踏み入れた瞬間、いまだに「わぁーっ!」って声が漏れるし、目がきらきらになるんですよ。

あの「わぁーっ!」の正体は、なんなのか。

その問いを自分なりに掘り下げていったのが、今回の『さみしい夜のページをめくれ』なのかもしれません。

ですのでこの本には、「本を読むとこんなにいいことがあるよ」とか「こんなに得をするよ」といった話はいっさい出てきません。「本を読まないのはよくないことだよ」とか「本を読まないと人生損するよ」みたいに脅かす話も当然なし。

ぼくたちはなぜ、本を読むのか。

その本はなぜ、書き残されたのか。

つまり、本とはなんなのか。

そして書店での「わぁーっ!」は、どうして起こるのか。

「わぁーっ!」の先にいったい、なにが待っているのか。



そんな本をとりまく疑問の海を、タコジローと一緒に潜っていく冒険物語です。

ぼく自身、本の虫なんかじゃないし、本の虫になる必要もない。ただ、本のおもしろさを、書店に足を踏み入れたときの「わぁーっ!」を、一緒に体験したい。そんな思いでつくった本です。

■ ものがたりについて


さて、さきほど「冒険物語」ということばを使いました。今作には(こうした単行本としてはめずらしく)裏表紙に、本のあらすじというか、紹介文が掲載されています。いったいどんな物語なのか、その紹介文を引用しておきますので、ご参考になれば幸いです。

ぼくだってぼくを選びなおすことは、できるはずだ——。
うみのなか中学校3年生のタコジローは、進路に悩んでいたある日、ヒトデの占い師に呼び止められる。本棚から泳いでくる本。まぶしく光ることば。仲間たちとの出会い。そして人生の転換点となる、とある場所に連れて行かれた彼らは——。
真夜中の心に光が差し込む、読書潜水物語。

『さみしい夜のページをめくれ』紹介文

前作『さみしい夜にはペンを持て』ではひとりぼっちでいることの多かったタコジローに今回、愛すべき仲間たちができます。その仲間たちとの冒険をぜひ、おたのしみください。

■ チームメンバーの紹介と御礼


続いて、チームメンバーの紹介をさせてください。この本を「書いた」のはぼくですが、この本を「つくった」のは、チームメンバー全員の力です。

まず、前作に引き続いて、海のなかのめくるめく世界を見事に描き上げてくださったのは、イラストレーターのならのさん。前作のときもそうでしたが、今作でもたくさんのアイデアを出してくださって、ならのさんのイラストに触発されて書きなおした箇所もたくさんありました。まさにコラボレーションの日々でしたよね?

さらに、目にもまぶしいブックデザインは、こちらも前作と同じく佐藤亜沙美さん。ギリギリのギリまで微調整を惜しまず、この本をよりキュートなものに仕上げてくださりました(とくに見返しのかわいさ!)。たくさんのあそびが仕掛けられた本なので、ぜひ紙の本で手に取ってほしいと思っています。

で、そんなぼくらを指揮してくださったのは、編集の谷綾子さん。谷さんの誠実、あかるさ、情熱、おもしろ、気遣い、無茶振り、アイデア、さらに粘りがなければ、到底この本はできあがっていません。谷さんがガンガンに、隙あらばもう一段、とハードルを上げ続けてくださったからこそ、ここまでたどり着くことができました。

それから編集作業の最終盤では、ポプラ社のアルバイト・吉野真悟さんによる獅子奮迅のサポートもありました。みなさん、どうもありがとうございます。

そしてなにより。

この本ではたくさんの作家さんや出版関係者のみなさまから多大なご協力をいただきました。「あとがき」のない本のため、本のなかでお伝えすることはできませんでしたが、この場を借りてあらためて御礼申し上げます。

ほんとうに、ほんとうに、ありがとうございました。


■ 最後に


ああ、短くまとめるつもりだったのに長くなりましたね。

それでも最後に、これだけは紹介させてください。刊行にあたって糸井重里さんから、こんなにすてきな推薦文を頂戴しています。


こんな本があったらよかったのに。

こんな大人に会いたかったのに。

それをまず作者たちは思ったわけだ。

そして、ほんとうに書いて作った。



すべてのこどもと、すべてのおとな。

すべての読者と、すべての作者。

すべての遊びと、すべての学び。

ぜんぶを満足させる

テーマパークのような本が、ここにあるよ。


これ以上のことばが必要ないくらい、こんなに長ったらしいお知らせを書く必要なかったくらい、この本のすべてを言い当ててくださった推薦文です。うれしさのあまり、現在ぼくはこのことばをスマホの壁紙にしています。

糸井さん、あらためてどうもありがとうございます。



ぼくたち全員が、胸を張ってお届けする大好きな本です。

本を選ぶことは、あしたの自分を選ぶこと。

3月19日、ぜひ手に取ってみてください。

こんな本をつくることは、二度とできない。真剣にそう思っています。