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新シーズンの開幕に寄せて。

Jリーグが開幕した、1993年のこと。

当時のメディアでは盛んに「野球か、サッカーか」の議論が語られていた。そして若者たちへの理解が深いと自認するメディア関係者ほど、「これからはサッカーの時代だ」と断言していた。動きの少ない野球に比べてサッカーの試合はスピーディーでおもしろいとか、世界的にはマイナースポーツに過ぎない野球に比べてサッカーは全世界的メジャースポーツだとか、中年体型の選手も多い野球に比べてサッカー選手はおしゃれでカッコイイとか、まあみんなテキトーなことばかり言っていた。

サッカー経験者として、日本でサッカー人気が高まることは嬉しかったものの、そのあまりにピント外れな議論については辟易していたし、「この盛り上がりも一過性のブームで終わっちゃうんだろうなあ」とやや醒めた目で眺めていた。

しかし、実際に開幕したJリーグのテレビ中継を観ながら、「あっ。これはいけるぞ」と思わされた。

解説者である。

業界の先輩であり、年長でもある解説者が、試合中の選手たちを呼び捨てにせず、ちゃんと「○○選手」と呼んでいるのだ。「三浦選手、チャンスですよ!」とか「ラモス選手、すばらしいパスです」とか。

呼び捨てや「くん付け」が一般的な野球解説者の横柄さに比べ、これはとても気持ちのいいマナーに感じられた。たとえば現在、「居酒屋解説」として有名な松木安太郎さん(Jリーグ開幕時はヴェルディの監督だった人)は、その飲み屋のおじさんめいた解説とは裏腹に、それぞれの選手をちゃんと「○○選手」と呼んでいる。もちろん選手を呼び捨てにする解説者も一部いるものの、基本的にサッカー中継では(発話速度の問われる)アナウンサーは呼び捨て、解説者は「○○選手」、の原則が浸透している。


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きょう、メジャーリーグが開幕した。

ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手は、開幕投手で1番指名打者。朝の仕事を少しお休みして、第二打席までを見守ってから出社した。

彼の名前について、「大谷選手」と発話したり書いたりするのは、少しだけ違和感がある。語感の問題だろうけど、できればフルネームの「大谷翔平」に「選手」の二文字を加えたくなる名前だ。

しかし彼の場合はこの一年で、「オオタニサン」の名前がいちばんしっくりくるようになった。野茂英雄さんはアルファベットの「NOMO」が似合っていたし、イチローさんは「イチロー」のままだった。でも、大谷翔平選手は「オオタニサン」が似合う。日本人からしてみれば、海の向こうに渡ったことを感じさせる表記だし、向こうの人たちからすれば日本からやってきたことを表す「サン」付けだろう。そしてなにより、彼に付けられる「サン」には、日米両国民からの自然な敬愛が込められているように思うのだ。

オオタニサンと過ごす新シーズン。これから毎日たのしみだな。