趣味と呼べるほどの趣味を持たないわたしの趣味。
これまでの人生で、何枚の履歴書を書いてきたのだろう。
おそらく履歴書を提出したであろう、と思われるアルバイト先が3件。就職活動のなかでもたくさんの履歴書を書いてきたはずだけれど、じつはあまり熱心に就職活動をしたおぼえがなく、どんなに多く見積もっても5〜6社ほどしか履歴書を提出していない。そして転職にあたって書いたのが1枚。なるほどぼくは、10枚程度の履歴書しか書いたことがないらしい。
それというのも、自分の趣味について考えたからである。そして考えていくうちに「履歴書の『趣味・特技』欄にはどんなことを書いてたんだっけなあ」と思ったからである。
正直な話ぼくは、趣味と呼べるほどの趣味を持ち合わせていない。
習慣的にスポーツをやっているわけでもないし、そもそも休日はあまり外出しない。かといって朝から晩まで読書、音楽鑑賞、映画鑑賞などにふけっているわけでもなく、いずれも人並みにたのしむ程度だ。なにかの人形を収集するとか、スニーカーを大量にコレクションしてるとか、そういう「変」なところもまったくない。わが家はきわめて常識的なモノだけでつくられた、常識的な家である。
——ここで出てくるのが履歴書の「趣味・特技」で、要するにあれは「好きなもの」を書かされているのではなく、「わたしが他の人と違うところ」や「わたしの自慢できるところ」を書かされているのだと思う。また、そのかぎりにおいてあの欄を「読書」や「映画鑑賞」なんて月並みな単語で埋めてはいけない。もっと、あなただけのなにか、を求人側は知りたいのだ。
まあ、若い時分には自分のことを変わり者だと思いたいものだし、実際に思っていたりもするので、堂々となにか書いていたんだろうなあ。当時の自分がどんな履歴書を書いていたのか、とても興味がある。
で、趣味と呼べるほどの趣味を持たないってのはぼくだけではなく、むしろ社会のマジョリティであるはずで、じゃあそういう人びとがプライベートをどう過ごしているかというと、いちばんはこれなのだろう。
すなわち、「趣味:スマホ」である。
つくづく世のなかを変えた発明品だなあ、と思います。