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教員研修会「総合型選抜対策の経験をシェアしましょうの会」in かえつ有明中高

先日、かえつ有明中学校・高等学校の青木先生にお呼ばれし、教員研修会を担当させていただきました。

青木先生とは長いお付き合いで、年末年始の私主催のセミナーにお越しいただきました。
その内容をかえつ有明中高の先生方にもシェアして、生徒との向き合い方を考える機会にしたいということで、私としては今年初の教員研修会実施と相成りました。

タイトルは「総合型選抜対策の経験をシェアしましょうの会」。
私、教員研修会という名前が苦手なもので…

以前、熊本大学の鈴木克明教授の記事を読んだことがあり、影響を受けています。

まず前提としてお伝えしたいのは、企業にとって、研修は目的達成の「最終手段」だということです。なぜかといえば、研修は最もコストがかかる上に、従業員の業務時間を奪うからです。さらに、受講者の受け身体質を助長しかねません。

もし、従業員の皆さんが日常業務でチャレンジングな課題に取り組むことによって、知識やスキルを身につけられる環境があるのなら、研修は特に必要ないでしょう。そうした場の方が、研修よりもずっと優れた成長のチャンスです。研修は、そうした状況が整っていないときに行うものです。

どうしても研修を行うなら、講師が講義形式で教える従来型の研修ではなく、具体的な事例を使ったロールプレイングやディスカッションをとおして、受講者が主体的に学ぶ「教えない研修」を設計することをお勧めします。

ならば、総合型選抜の伴走経験がある先生の知恵を共有・蓄積できるようにすれば、かえつ有明の財産になるのではないかと仮説を立て、メニューを組み立てました。
先生方には「好きに使って、壊して、つくってください!」と明言してきました。

まずは、後半戦のワークのために「メガネ」を手渡すことにしました。
お馴染みの思考コードをもとに、大学の存在意義からアドミッションを考えるところから始めました。

神﨑史彦『プレゼンテーション・グループディスカッションのルールブック』(KADOKAWA)より引用

その後、青木先生とミーティングした時、多分指標は学力の三要素だけではなさそうだよね、というところから、仮説として+3つの指標をつくってみたものを共有しました。
そして、その背景にある理論を示しました。
システム思考が中心です。

そして、そのあとワークをしてみました。
総合型選抜の指導経験のある先生が各グループ一人はいるようにグループをつくりました。

私のオーダーは以下の通り。

指導経験のある先生方から、その生徒の指導当初の状況から合格に至るまでの様子を語ってもらいます。
その内容をもとに、先程の指標をつかって、どういう働きかけや思考・情動・行動が生じたのかを分析してもらいました。
各チーム緩やかに、時に他のチームの様子を伺いながら、「このとき『自分は空っぽだ』と悩んでたよね」「こういう課外活動でこう話していたな」「僕は門は常に開けていて、生徒は勝手に考えてきていた」など状況を話しながら、その声かけや働きかけにはこういう意味があったのだろうね、などと対話(dialogue)を重ねていました。

その後、各チームの分析をシェアしました。

発表を受けて、私からも意味を付与してみました。

同じ大学でも求めているレベル感は異なりそうですね
「自分とは何者か」を問い続ける対話を数ヶ月重ねたことはとても重大な意味を持っていたようですね
この研究はさまざまな課外活動から暗黙知を得た末に生まれたものなのですね
学力の三要素は往復するものですよね
自分はここで本気でやろうという思いを育むことがとても大事ですね
学内でさまざまな経験が生まれていることがよくわかります
間口を常に広げ、生徒さんの可能性を信じるということがとても大事だと気付きました
大学のミッションを理解し、自己のあり方を結びつけるように気づいてもらうことは大事ですよね

こんな話をしてきました。
その上で、最後に私からこんな話をしてみました。
正直内容は即興で忘れているので、脚色しながら記してみます。

私はルーブリックの問題を「インテリジェンスは枠の外にある」とよく表現します。
ルーブリックの中にある基準に沿って成長した生徒は素晴らしい、そうでない生徒はダメ、という話は妙です。
生徒のインテリジェンスはさまざまです。

ハワード・ガードナーのMI理論(思想に近いと思います)でも指摘するように、誰にでも才能はあるし、それをどう伸ばし、well-beingに資すのかを考えたいです。

しかもその才能は実は暗黙知、見えない世界に隠れているかもしれません。
それを一緒に探っていけるといいですね。

ですから、この指標に「合わせにいく」「当てはめる」というのは私の本意ではありません。
要は「この指標の上位の条件を満たせば受かる」みたいな使い方はやめてほしいということです。

そう、そういう使い方のルーブリックは嫌いなんです。

そうではなく、経験豊かな高校生たちを看取るための「メガネ」としてお使いください。

かえつ有明の教育活動は豊かだと感じます。
知識だけでなく、経験の場も数多くあります。
そうした先生方のご活躍、そして生徒さんの経験を、ぜひメガネで看取り、意味あるものとして世界に位置付けて差し上げてください。

こうして2時間の研修会を終えました。
その後も先生方は会場でずっと熱量をもって話し続けていらっしゃいました。
誰も席を立たないで話し込んでいる様子で、驚きました…

その後、先生方から色々なメッセージをお寄せいただきました。
以下抜粋です。
かえつ有明中高の先生方に、厚く感謝申し上げます。

・「知識」「活動実績」等に重点を置いた指導というのはいわゆる対症療法にあたるもので、「自己の意味をどう見出すのか」という観点で生徒に向かい、とことん対話をしていく中で、見出すことの支援をすることが本質的な指導ですね。

・「主語をあなたと私で同じくする」「中高生と関わることを通して自分の未来をつくる」素敵なフレーズで、理想的なあり方ですね。どこまで実現できるか不安はありますが、ここを目指していきたいです。

・「インテリジェンスは枠の外に在る」という言葉の深みを昨日からずっと味わい続けております。所々で本質に触れる視点が提供され、たくさんの気づきをいただくことができました。

・神崎先生が最後におっしゃっていたルーブリックにあてはめるのではなく、これを使って振り返っていくということにすごく納得感を覚えました。また、総合型入試について色々な先生方とお話する貴重な機会にもなりました。ありがとうございました。

・あんなにキッチリルーブリックをつくりこんでるのに「ルーブリック嫌い」って正直びっくりしました。

今後もかえつ有明中高の先生方の応援をしてまいります。
どうぞよろしくお願い申し上げます!

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