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山崎まさよしと彷徨う街

歌詞に出てくる地名が好きだ。それも、あまり出て来なさそうな地名だと胸にくる。

そんな、エモい歌詞でもなくてただの地名だよ? そう思われるかもしれない。それに、地名が出てくる歌なんて珍しくないし(演歌って地名多いよね)、どこに好きポイントがあるんだろう。自分でもよくわからない。

たぶん、地名のスケールが大きすぎないほうがいい。「東京23区」や「首都圏」とか大きな地名を歌詞で言われてもそんなに響かない。「首都圏~」なんて歌詞が入った曲あるんだろうか。あるんだろうな。

いやべつに、もっと大きなスケールで地名が歌われていてもいいんだけど、それは完全に個人の好み。あ、「東京」が曲のタイトルになってるのはまた別で。

あと、いかにも歌詞になりそうな地名もそんなに。すごくたとえばだけど「渋谷」とか「歌舞伎町」って、もうなんか既に地名が出てきただけで何かありそうじゃないですか。

そういうのじゃなくて、その地名が歌詞に出てきても、ふつうだったら「特に何もない」感じの地名がいい。

だからって、ほんとに地元の人以外ほぼ誰も知らなそうな極所的すぎるのも歌詞で何か感じるのは難しくて、そう考えると意外にありそうでないのかもしれない。

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横浜の「桜木町」なんかは、その辺が絶妙な感じがする。スケールとして大きすぎないし、いかにも歌詞になりそうでもない。そこがいい。

隣に「みなとみらい」という陽の当たるエリアがあって、反対側には野毛のディープエリアがあり、桜木町はそのどちらの位相にも属さない。いい意味で浮いたままの街。

そんな桜木町を先日通りがかったときのことだ。

みなとみらいから桜木町の駅に続く道を歩いてると、ひょっこり山崎まさよしが現れたのだ。リアルに。

離れたところにいるスタッフの感じからすると何かの映像撮影だったんだろう。いわゆるロケ感は薄くて、できるだけ自然な感じを狙ってるんだろうなという気がした。わからないけど。

こんなところで出会うはずもないのに。ほんとそうだ。自分でも笑えた。

いつでも捜しているよ どっかに君の姿を
明け方の街 桜木町で
こんなとこに来るはずもないのに
山崎まさよし / One more time,One more chance


名曲『One more time,One more chance』の中でも、桜木町は彷徨うように歌詞に出てくる。その地名の存在の仕方が、自分がどうしようもなく佇んでいるどこでもない場所の空気をはらんでいて好きだ。桜木町だなと思う。

これが隣の伊勢佐木町だとかになると、全然違ってしまう。この「掬っても何もない感じ」は桜木町でなければ駄目なんだ。

喪失。空虚。爆音。道に落ちたM・A・Cのリップ。気怠く昇る太陽。

はじめてこの曲で桜木町に出会ってから、もうずいぶん経つ。その頃からずっと何かを捜してしまう街。捜しているのが何なのかもわからずに。

そんな地名が僕の中にはいつもいくつかある。