あの人の言葉がほしい
リアルでモノが売れないらしい。デイリーなものは売れるけど、そうじゃないものたちはなかなかお店で足を止めてもらいにくくなってる。
まあ、個人的には元からあまりものを買わない(本とか農工器具を除けば)種族なので、とくに禍以前も以降も変化ないのだけど、ものを売る(買ってもらう)を生業にしてる人にとってははなかなかシリアスな話。
知り合いの木工作家も例年、秋のこの時期は各地でクラフトフェアなんかがあって出店するのだけど、今年は厳しいみたいだ。
そもそも開催自体も減ってるし、縮小して開催されてもお客さんの数も以前のようには戻ってない。来場しても財布のひもは固い。
なんとなく買わない気分。そういう場所に足を運んでるのだから、まったく興味がなくなったわけではないけど、でもなんか以前のようにはならない。まだぼんやりとした先の見えなさがそうさせてるのだろうか。
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前提が違うので参考程度にしかならないけど、百貨店売上高のデータを見ててもリアルでモノが売れないのが表れてる。
2020年9月の全国百貨店売上高は対前年でマイナス33.6%。もちろん前年はまだインバウンド需要があったから、そこも考えるとまあそうだろうなだけど、インバウンドほぼ関係ない地域でも落ち込みは同じ。
とくに雑貨カテゴリの落ち込みはマイナス45.7%でいちばん大きい。化粧品単体でもマイナス51.2%。まあ、そういうことなんだろうな。影響がまだ少ないのはデパ地下の生鮮食品カテゴリがマイナス7.7%。(データはすべて日本百貨店協会)
いや、百貨店ってそもそもみんなが行きたい空間じゃないじゃんというのはあるけど、そこじゃなくて。
なんだろう。個人と個人の関係性がほぼない消費(老舗百貨店の外商とか、中に入ってるテナントの凄腕の販売員さんとか別にすれば)が大きなパイになってた時代の終焉を象徴してる気がする。
もちろん、その中でもなんとかしようとしてる百貨店の人もいるし、そこのプロの人たち(いろいろ取材でお世話になったこともある)を揶揄するつもりはまったくない。
けど、ユーザーから見ればどんどん関係性が見えない場所から足が遠ざかってるのは本当で、こういう世の中になってそれはさらに。
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これ、文章も同じじゃないか。こんなことになってもならなくても、生きるための文章を読みたい。
その文章は、やっぱり誰が書いてるのかわからないのではなく、同じ顔をしたラベルで包装されたのでもなく「あの人」が書いたものが読みたい。誰が書いてもいいものは欲しくない。
情報の百貨店みたいなものも、それはそれで存在価値はあるけど、そういうのはそれこそもうネットで流れてくればいい。
やっぱり、生きていくための言葉、文章は「あの人」の、っていう関係性があるところで摂取したいんだ。
同じ言葉でも「あの人」から言ってもらうと自分の何かになるように。
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林伸次(BAR BOSSA)
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