鯖パスタの自由
食べものの話でもしようか。特に学びはない。たまに無性に食べたくなるものってあると思う。
SNSに流れて来たとか何かきっかけでというのでもなくて、ほんとに突然、前触れもなく食べたい気持ちが湧いてくるもの。
あの感覚がずっと不思議で、どういうスイッチが入るのかわからないけど「あ、あれ食べたい」って一度なってしまうと、もうその食べものの口になってしまう。
で、そういう食べものって、すごく凝ったものでもなく、だからって定番的なものでもない。たとえば「鯖パスタ」とか。
鯖とパスタって、べつに組み合わせ的には特別なマリアージュというほどでもないのだけど、僕が食べたくなる「鯖パスタ」はどうやらあまり世の中にはないものらしい。
「Ca va? 缶」なんかを使ったおしゃれなパスタってわけでもなく、三枚におろした焼き鯖をそのままパスタにドーンしたもの。パスタそのものの味付けにはオリーブオイルと「梅」とか「鮭」なんかのお茶漬けの素を使う。
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どちらかというと、どこかのお店の「賄い飯」に近いかもしれない。わりと手間が掛からずに、でも独自の料理で満たされるもの。
もちろん、他にも好きな食べものはいろいろあるのだけど、ほんとにこの「鯖パスタ」が無性に食べたくなることがあって。
ポルトガルのどこかの港町にある開放的な食堂で、無造作なぐらいの盛り付けで出てきそうな感じもする(行ったことないけど行ってみたい)。潮風を受けながらのヴィーニョ・ヴェルデとかも合いそう。
そんなことを妄想しながら仕事の合間に食べるのだけど、たぶん、鯖パスタには「自由」があるんだと思う。
すごく凝ったメニューだと、どこでどう食べるとか、いろいろ考えてしまう。料理自体も完成されてるので、そこにアレンジを加える余地もあまりない。
その点、僕の好きな鯖パスタは、そのときの気分で柑橘系の風味にしてもいいし、照り焼きっぽい味にしてもいい。もちろんシンプルに塩だけでも。あ、柚子胡椒付けるのも好き。
完成されてないし完成することもない自由。旅してる感じで食べる自由。
いつか本当にポルトガルで鯖パスタを探す時間が来ればいいなと思いながら食べてる。