目付きが悪くてGoogle検索されてしまう女の子の話
今年の桜はどこに行ったんだろうか。
いや、信州ではこれから桜の季節なのだけど心情的には「どこに行ったんだろう」の気分。
だからって、何がなんでもすごくお花見名所に行きたい人でもなく、偶然通りかかった知らない街ですれ違った桜を一瞬愛でるだけでも、結構満たされたりする。
でも、今年はそれすら何かが違う。
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取材に向かう電車の窓から、流れ去る桜の散り際をぼんやり見てると、僕の横に立っているどこかの大学生っぽい女の子たちの会話が聞こえてきた。
「あの子ほんとヤバいよ、すごいの。まつ毛で人殺せそうなぐらい、目悪いの」
「それ、目付きが悪いんじゃなくて?」
「目付きっていうか、目悪いんだよ。んー。なんかねGoogle検索して教えたいぐらいほんと悪い」
そのあと、なぜか彼女たちの話は鮭の切り身キャラクターKIRIMIちゃんの名前が思い出せなくて「なんだっけ、シャケ身?」「シャケ身てw」みたいな流れになってたんだけど、僕の中ではもう「Google検索されるぐらい目付きが悪い女の子」の話題で持ちきりだった。
たぶんそれ言った子の中では「目付きが悪い」ではなんか違くて「目が悪い」しか言えなかったんだろう。
そういうことってある。正確に言えばそうなんだけど、それでは自分がしっくりこない。だからちょっと時空のねじ曲がった表現になってしまうようなことが。
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電車の彼女たちは、そこまで考えてないと思う。
「目付きが悪い→目が悪い」になり「Google検索して教えたいぐらいほんと悪い」という謎の喩えも、ナチュラルな流れの中で出てきただけだ。
けど、僕はそこに引っ掛かりを感じてしまった。なぜだろう。
きっと、あれだ。三次元でのリアルな相手との「会話」なのに、「自分の感覚」を投げて「相手がそこに突っ込む」というLINEみたいなラリーになってるところが気になったのだ。
生身の会話なのに相手との間に、何か別の反応装置がある感じ。いや、それが何だって話なんだけどね。
それに本来、他人がどんな会話しようが関係ないしスルーすべきことなのだけど、目の前で三次元のLINEが展開されたことで、僕の空間が変容してしまったのだろう。どこにいればいいんだ? というなんか落ち着かない感じに。
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まあ、こんなのは些末な話で、いまこの瞬間も日本中どこでも起きている事象なんだろう。
今年の桜が行方不明だからなのか、流れ去る桜の残像と一緒にどこにも辿り着かなかった言葉たちのことを思ったりする。
話題の「振り」にされて、会話の中で成就できないままだった「目付きが悪くてGoogle検索されてしまう女の子」の街にも桜は咲いてるのだろうか。人知れず、ちゃんと咲いてたらいいな。
※昔のnoteのリライト再放送です