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プレゼントをスマートにもらえるのも才能だと思う

つくづく思う。自分には何かものを他人からもらう才能がないなと。くれくれ族的な話とか、人に自分のプレゼントで喜んでもらう話ではなくて。

隙あらば誰かの何かを奪い取ってやろうと待ち構えていて、さり気なくもらう方向にもっていける人とかはべつに羨ましくはない。まあ、そういう人もいる。

そうではなくて、普通にサプライズ的にとか、そこまで劇的じゃなくても他人が何かをくれるってなったときに、なんだかスマートにもらえないのだ。心がギクシャクしてしまう。

なんでだろう。たぶん僕の場合は自分で選んだとか意識を向けた以外のものが「あなたのものになりますよ」となったときにどうしていいかわからないのだと思う。

闖入者と言うと違和感ある人もいるかもしれないけど、そんな感じ。戸惑う。まるで今日からこの人があなたの家族ですよと言われてるみたいに。
ものをもらうくらいで何言ってんの? 大丈夫? と思われるかもしれないけど。

もちろん何かをくれる人、プレゼントしてくれる人に何の罪もない。僕がおかしいのだ。

だから「わー」とナチュラルに笑顔オーラを放って誰かからのものをもらえる人はすごいなと思う。そういう才能がちゃんとあるのだ。

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昔、ダウンタウンの松本さんが何かの番組で、自分の誕生日にゲストからひたすら誕生日プレゼントを受け取らされるというシーンがあった

ある歌手は「自分の趣味で選んだ」高級ブランドTシャツを自慢げに手渡す。松本さんは「でも、僕、こんなんもらっても着ないですよ」と言う。

また別のバンドのメンバーは唐傘を差し出す。松本さんは、傘を広げて見せたあと「でも、僕の人生でこの傘がもう一度開けられることは二度とないですけどね」と崩れ笑いしながら言う。

そこまではまだよかった。

あるアイドルグループの女の子が、自分が飼っていたという瓶入りのミドリガメを満面の笑みで松本さんに差し出したのだ。

「それ、自分飼ってたやつちゃうん?」と、解せない松本さんに突っ込まれると「わたし、いらないし、いい機会だからあげます」とニコニコして言う。

「いや、俺もそんなんいらんわ」と松本さんが答えると「そんなこと言わないで、せっかくだからもらってください」と不思議そうな顔で言う。

「いらんもんもらってもなあ」と困惑する松本さんに、女の子は「せっかく持ってきたのに……」と納得しない顔をする。

番組的には、この噛み合わない状況がいい画になっていたかもしれないけど、僕自身はまるで自分がミドリガメをもらうような気分になった。

もちろん、ディレクターから「わざと松本さんが困るものを贈るように」という指示が出ていたのかもしれない。あるいは、台本どおりにディレクターがADに調達させてアイドルの子に渡してもらったのかもしれない。そこはどうでもいい。

そうであったとしても、そこに「人からプレゼントされるものは、すべからく喜びオーラを放たないと」という見えない約束があることに困惑するのだ。それが善意のプレゼントであればあるほど。

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ある朝、部屋のドアを誰かがノックする。

なんだろうと思って出てみると、一人の見知らぬ女の人がコンビ二のレジ袋を手に笑顔で突っ立っている。

「え、なに?」と訊ねると、彼女はレジ袋を差し出す。中を見ると、BLTサンド、うるおいスキンケアクリームの試供品、毛抜き。組み合わせがよくわからない。

唖然とする僕に女の人は言う。

「これ、あげます」

断ることも受け取ることもできないままの僕に、女の人はレジ袋を押し付けるように渡して去っていく。

こんなとき、人からものをもらう才能があればいいのだけれど、僕にはやっぱりないのだ。