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感情を味わおうよ

この1年(締めくくるにはちょっと早いけど)、何に使う時間がいちばん増えたんだろう。時間占有率として。ZoomやGoogle Meetなんかのオンライン会議ツールじゃないのかな。

禍がオンラインやリモートを加速させて日常を覆った。

物理的な世界がすっかり遠くなった分、オンラインでリモートですぐに繋がれる世界はすごく近くなった。もうこれ、どこでもドアって呼んでいいんじゃないか。

みんなの夢だった世界が仮想的だけど手に入ったのだ。

素晴らしい日々――なんだろうか。よくわからない。

スケジュールはすぐに詰められるし、物理の時空関係なくいつでも相手と繋がれるし、画面越しにみんなで顔を合わせながら話せる。

いいことしかないはずなのに、同時に何か足りない、零れてく気がしてるのは自分だけなんだろうか。

何が足りてないんだろう。余白だ。

人と会うために、人と何か話すためにわざわざ移動して街を歩いて、途中で猫が空を見上げてるのをなんだろうって一緒に見上げて。

その瞬間、空を横切った名前も知らない雲のかたちが何かを伝えてるようで。そんな時間がオンラインとリモートで溶けて消えてる。

余白がなくなると、感情がどんどんフラットになっていく。

オンラインツールの予約時間単位で自分が何かをひたすら効率よくこなしてると、自分は処理能力の一部になっていく気がする。

生きてる余白は感情を豊かにする。何とも繋がってない、つながらない時間に感情という樽が熟成される。

オンラインにもリモートにも、もちろん感情はある。そのはずなのに、なぜかちゃんと感じて味わう余白が足りない。その煮詰まりが空気になって2020年の秋から冬へと向かう空に流れ出している。

もう一度、いまだからちゃんと感情を味わえるといいな。そんな想いも『東京嫌い』には込められているという話。

まだ味わってない人は各作品ラインナップだけでもぜひ。