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笑う鳥の生活(再放送)

教えられた喫茶店に着くと、なんだか様子が変なことに気づくだろう。

今にも蝶番から外れそうな木のドアを恐る恐る開けて中に入ると、コートを着たままの客たちが目に入る。

ほとんどコーヒーも口につけずテーブルに向かってぶつぶつ呟きながら、小さな紙に向かってなにかを書いたり消したりしている。


あなたが入り口に突っ立っていると、一番近くの客が「星空の精製」と書かれた紙を無言であなたに向かって突き出す。

あなたは仕方なく、その紙を手に店内をひとしきり見渡してから、空いているテーブルに座る。


星空を精製したら、なにができるのだろうか。きっと、せつなくて甘いさらさらしたなにかだろう。

そんなことを考えていると、頼みもしないのにコーヒーと小さな紙が運ばれてくる。

あなたは、コーヒーを啜りながら考えるはめになる。

星空を採掘するには、とても長いスコップが必要だ。

長いスコップはどこにも売っていないから少女は短いスコップを握り締めて泣くだろう。

店を出る時、「星空の精製」と書かれた紙を店の主人に渡す。


主人はなにやら思案したのち、極度な近眼らしいメガネ越しに、じろりとあなたの顔を見上げて言う。

「……500円だね」


それが、あなたの、コーヒーの値段。

あなたは、少し驚く。たしか、外の看板にはコーヒー350円。

混乱するあなたに主人は、もう一枚、紙を渡す。そこには、本の名前がいくつか書いてある。

「其の中から一冊、選びなさい」


主人は言う。よくわからないまま、あなたは『笑う鳥の生活』と書かれた本を選んで店を出る。なんだか得したような損したような不思議な気分だ。

パラパラとページをめくりながら歩く。


本の内容は……1ミリも面白くなかった。