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冬の花火

誰もいない 名前もない路地のむこうに
冬の花火が上がる

屋根と屋根が重なり合う ほんのわずかの隙間
取り込み忘れた洗濯物を揺らしながら
音もなく静かに上がる花火を 僕は見ている

同時に 誰にも気づかれることなく
ひっそりと あり続けるものたちのことを想う

上がっては消えてゆく花火の時間に
スライドのように 映し出されるものたちのことを
ずっと覚えていたい

自分が死ぬときには 思い出してみたいと思う

なぜなら それは誰か大勢のための花火ではなく
自分だけの花火なのだ