魚の皮が好きと言えない
なかなか話題には出ない人の嗜好みたいなものがある。わざわざ言うほどでもないけど、自分ではひっそり好きというやつ。
魚の皮とかもそうだ。魚の皮好きなんだよね、なんて会話ってすることがほぼない。あるのかな。わからないけど。
たとえば「切り身」の魚で、鮭とかブリとかイサキとか何でもいいのだけど、僕はスーパーなんかで並んでると「皮」を見てしまう。
まあ、全体的に魚の目利きなんかではないから、なんとなく身が締まってるとか脂が乗ってるぐらいの見分け方しかできないのだけど、それでも切り身の魚にちゃんと皮がついてるのは外せない。
皮を外した切り身だと、なんかちょっと食指が動かない。自分でもなぜだかよくわからないのだけど。
で、まあ塩焼きにしたり蒸し焼きにしたり、バターソテーにしたりというベーシックな食べ方をしても、メインディッシュは「皮」なのだ。
ここは、たぶんなかなかわかってもらえないのはわかってる。皮がメインって何? って自分でも思わないでもない。もちろん、身の部分も美味しくいただくのだけど皮の美味しさは別格なのだ。
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あと、案外、魚の皮は苦手という人もいる。魚そのものは食べるし好きだけど皮はなんかちょっとみたいな。
その気持ちもわかる。だいたい、どの魚も身に比べて皮の食感が違いすぎる。
僕だってどうしても苦手な食材(柿とか枇杷とか)はあるから、そこはどれだけ「おいしいから騙されたと思って」って言われても丁重に遠慮する。
そういう意味では「魚の皮」をことさらに「好き」と愛を叫ぶのは、たぶん少数派なんだろうね。
で、しかもなかなかその愛を語る機会もない。なんとなく憚られるイメージ。
これが「柑橘類の皮」、メイヤーレモンとかだったら、その愛を大っぴらに語っても何もおかしくないし、インスタとかにも上げられる。柑橘類の皮を語る「Spaces」だって人が集まりそうだ。
だけど「魚の皮」をインスタに上げても、よほどの料理研究家とかならいいけど、なかなか難しい。
そう。魚の皮は共有されない。そこがまあ、らしくもあるのだけど。