ネットの店とリアルな「市」が残る時代
地元のイベントでスタッフというかお手伝いをした。
パーリ―みたいな人の集まりは苦手だけど、緩い感じのイベントで適当に自分の役割があって、適当に来てくれた人としゃべって、サポートしてというのは嫌いじゃない。
人生のベテランの域に達した女性手しごと作家さんたちの、作品展示販売をする“手しごと市”のイベント。その中ではまあまあ若手の力仕事も含めていろいろ動ける人間がいると力になれることもあるので。
役割としては集客とか、取材のアテンドとか、会場準備、イベントの仕込み全般と当日の作家さんやお客さんのフォロー。あとなぜかカフェスタッフっぽい空気を醸し出してるらしいのでコーヒーでのおもてなし係。
まあ、ふだん無に近い感じで画面と向き合って原稿を書いてるので、リアルにいろんな人とバーバル、ノンバーバル入り混じったコミュニケーションをするのが単純に楽しいというのもあるのですが。
べつに僕は作品を出品してるわけでもないし、直接お客さんとやりとりをする必要性もないのだけれど、それでもいろんなところから来ていただいたお客さんに会場のこと(出展作家さんの一人の工房兼自宅)や地元のことをたずねられて、お話しさせてもらったりするのもイベントの「空気」の一部をつくってるわけなのでそれなりに大切なのだ。
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決して立地のいい場所でやるわけでもなく(なにしろ直接の交通機関もない村の集落だ)、SNS映えするようなイベントでもないけれど2日間で延べ300人ほどのお客さんに来てもらえたので成功といっていいんじゃないのかな。
もちろん、いろんな反省点はあるんだけれど、それ以上にこういう手づくりのイベントで大事なのは来てもらったお客さんもやってる側も「楽しめた」こと。カッチリしたイベントだと運営側が楽しむなんて「ないよ」「何言ってんの」という世界だけど、そういうのじゃないから。
中でも最初から最後までいちばん楽しそうだったのが、出展作家さんで最年長85歳のハルコさん。ずっと手しごとをされてきた方だけど、こういうイベントに出展して展示販売するのは人生で初めて。
なんだろう、「つくるのも楽しいし手に取ってもらって話しかけられるのも楽しいし、それを自分のものにしたいって買ってもらえるのも楽しい。ぜんぶ楽しい」という空気がハルコさんの全身から溢れ出てるのがわかるのだ。ほんと、見ててこっちまで楽しいし癒される。
ああ、これが本来の「人に買ってもらう」「人がつくったものを買う」っていう行為なんだろうなぁ。ハルコさんの笑顔を見ながら、すごく思いました。
やっぱり何かものを買うのって、ただ単に「もの」の受け渡しだけじゃなくてエネルギーみたいなものも一緒にもらってる気がするんですよ。「この人にこれ使ってもらえたらいいなあ」「こんなに愛があふれてるのを自分も持ちたい」みたいな。
ネットでものを買うのがデフォルトになりつつあって、たまに店にも行くけどそこでも人を介してるだけで、べつにコミュニケーションも何ない自動購入で、ましてその売り場にいる人はつくり手でもなく、その商品になんらかの愛があるわけでもない。
そういう時代なんだけど、つくり手と買い手が顔をつきあわせて、いろいろやりとりしながらものを買う、原始的っちゃ原始的な「市」は、やっぱり楽しい。
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きっと、これからもこういう「市」のスタイルはなくならないし、もしかしたらものが売れない時代に、人を集めて売り買いが増えていくのはネットでの販売と、昔ながらのONE ON ONEな「市」なのかも。
と書いていて、「市」のスタッフをさせてもらったおかげでべつに僕はコミュニケーションが嫌いなわけでもなく(したくないときもあるけど)、不自然なコミュニケーションが苦手(お互い特につながりたいわけでもない人とその状況を過ごすためだけの会話とか)がしたくないんだなということにあらためて気づきました。
世の中の買い物(日用品以外)のせめて10分の1でも、こういう「市」で買うのが当たり前だったら、少しはコミュ障的なものをめぐる状況も変わるのか、変わらないのか。どうなんだろう。