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生きることは「ひょんなこと」かもしれない
生きていると「ひょんなこと」がたまにある。
予期しない、得体のしれない、道理では考えられない。こう書くと、すごく重々しいけれど、なんていうか「そう来るか」みたいな感じだ。
偶然というのとも少し違う。べつにネガティブな要素はなく、だけど、どこかで運命的なものも漂わせながら自分の前に現れるもの。
まあ、そういうのがあるから人生はおもしろい。諸先輩方からすれば何を悟ったこと言ってんだと思われるかもしれないけど。
画家、杉本健吉さんとの邂逅(もちろんご本人に直接お会いしたわけではない)も、ひょんなことだった。
たしかに、この春は仕事で名古屋に赴くことが結構ある。そんなことも関係してるのかもしれない。
いつかはいろんな意味でちゃんと向き合いたいと頭の片隅で思念していた画家の一人。それがまったく思わぬところから繋がり、僕の前に一冊の本と一緒に現れたのだ。
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岸田劉生、梅原龍三郎に師事し、グラフィックデザイナー(当時は図案家)としても優れた仕事をされてきた杉本健吉。画業も生涯究め続けながら「作品を売らない画家」として有名でもあった。
それはまさに「生きることは描くこと」であり、その両者の間に薄紙一枚も挟まない。生きることは絵を売ることでもなく、生きることが仕事になる。
及ぶはずもないのだけど、僕も究極的には「生きることが仕事になればいい」と思っている一人なので、その高みが仰げただけでも嬉しいのだ。