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パクチーと転校生の哀しみを踊れ

なかなか人には言えない哀しみというのがある。

たとえば、パクチーがわからないこと。いや、わかりますよ。ハーブ系の野菜ですよね。草鍋とか生春巻きに入ってるあれでしょ。

それはわかるんだけど、なぜ人はあんなにパクチーで盛り上がれるのかがわからないのだ。ちょっと前からパクチー人気と言われても、どうもピンとこないし。

何人かで持ち寄り料理の集まり的なことをしたときも、誰かがパクチー料理(?)を一品忍ばせてきたりすると、必ずワーキャーが起こる。

「うわパクチー無理無理!」「えっ、パクチーあんの? うれしいんだけど」みたいな感じで盛り上がってる。その仲間に僕はどうしても入れないのだ。

なぜなら、パクチーが自分の中で「うまい」「まずい」「好き」「嫌い」のどこにもカテゴライズされてないからだ。

そもそも、パクチーが料理に何か使われてたとしても気付かないことすらある。たぶん、というか絶対使われてることが確実なフォーとか食べても(フォーそのものはわりと好き)よくわからない。

「入ってたじゃん」と言われて「え?」ってなったこともある。僕の中ではパクチーは「無」の心境だ。

みんながパクチーで盛り上がってる中で、僕はポツンと置いて行かれる。

なんだかパクチーは転校生みたいだなと思う。とりあえず、教室に入って来ただけで騒がれるのがパクチー。

だいたい他の野菜とかハーブでこんなに「パクチー入れるな!」「パクチーもっと食べたい!」と騒がれるのってある? 思い浮かばない。

唐揚げにレモン絞るな酢豚にパイナップル入れるなどころの騒ぎではない。

日本ではパクチー専門店とかパクチー食べ放題とかよくわからないことになってるらしいけど、そんなに「おいしい」あるいは「すごいクセになる味」なんだろうか。

よく「カメムシの味でしょ」というのも聞くけど、だいたいカメムシをみんなそんなに食べたことあるのか。

ちなみに海外では昆虫食のひとつとしてカメムシも普通に食べられるとか。畑をやってると、どうしても「カメムシ=できれば来ないで」になるから、あまり食べる気持ちにもならない。

カメムシも食べないとすると、このままずっと僕はパクチーの味がわからない人生だ。

とりあえずパクチーを見分けたい。そして、一度くらいパクチーで盛り上がってみたい。まあでも、僕がパクチーがわかるようになったころにはもうブームは過ぎ去ってるんだろうけど。


※昔のnoteのリライト再放送です